ACE | ナノ

▽ 俺の前では無理するな



「小僧!寝てる暇あんなら書類出しなさい!」
「イデッ…んだよ!誰だっ!」
「あたしよ。」


スヤスヤと気持ちよく昼寝をしていると横腹を蹴られた。頭に来て勢いよく起き上がると1番隊副隊長の***の姿。


「いってぇじゃねぇか!」
「書類出してから文句言いなさい!早く!!」
「わぁかったよ!出しゃあいいんだろ!」
「たく、最初から素直に出しなさいよね」


スタスタとマルコの元へ歩く***。
***を知ったのは俺が白ひげに入ってすぐ。マルコに飯を貰っても食べなかった頃、***に「さっさと食え!マルコも忙しいのよ!」って怒鳴られた。


…………一目惚れだった。
初めて見た時、純粋に可愛いなと思った。
小さめの身長にタレ目。少し癖のある髪の毛。どう見ても“守ってやりたい”と思う外見をしていた。


が、実際はあれだ。すげぇ気がつえー。
まあ、マルコの右腕として働いてる***。仕事も出来るし、あの性格だ。まあ、仕事をしっかりしていたら何も言わねぇが、仕事を少しでもサボるとすげぇ怒る。


「マルコの事考えろ」「あんたが仕事しないせいでマルコの負担が大きくなる」とか。マルコマルコマルコって付き合ってんのかって言いたくなるくれぇマルコの事ばっか話す。
マルコに聞いたら「付き合ってねぇよい」って即答だったものの、何か訳ありの雰囲気。


それがすげぇ気に食わねぇから、***の気を引くためにわざと仕事しねぇのは内緒だけど。
今日もマルコと仲良く喋ってる***をジトーっと見る。
マルコの前でしか笑わねぇ***。それがすげぇ気にからねぇ。***を見ていると目があった。目があった瞬間、俺の方へ向かってくる。


「書類出来たの訳?」
「…わかんねぇ所あんだけどよ…教えてくれねぇか?」


俺が聞くと少し考えて嫌々ながら「いいわよ」答える***。俺と居るのがそんなに嫌なのかよ。
そう思いながらも***を部屋に連れてきた。
俺がベットに座り「ここわかんねぇんだけど」と聞くと少ししかめっ面でこっちに近寄ってくる***の腕を引っ張り押し倒した。


「小僧!…どきなさいよ」
「小僧じゃねぇ、いい加減名前で呼べよ」
「………こんな事する奴は小僧で十分よ。」


ガキ扱いしやがって……
少しでも男と意識して欲しくなった。
***の耳や首をあま噛みをして耳元でなるべく低い声で聞く。


「じゃあ、ガキ相手にこんな事されて悔しいだろ」
「っ………いい加減にしなさいよ。殴るわよ!」
「いつも勝手に暴力ふるってんだろ?」


そう言って***の服に手を入れて軽く頬や耳元、首にキスをして胸に手が当たるか当たらないかの時、***が声をあげた。


「や、……はな……して…」
「えれぇ弱々しくなってんじゃ…」


***の声にフと顔を上げると目に涙を溜めて震えながら、少し怯えながら俺を見ていた。
***のそんな表情、初めて見たもんだから思わず「わりぃ」と言って***から離れる。俺が離れる瞬間、走って部屋を出ていく***。


俺の我が儘な気持ちで***を傷付けた。
仲間といえ男にあんな事さらて平気な訳ねぇのに。


「何やってんだよ……」


頭を抱え後悔しているとドアが荒々しく開いた。


「ちょっといいかエース」
「………んだよ」
「***がおめぇの部屋から泣きながら出てきたんだが、何したんだよい」
「…………押し倒して襲おうとした」


俺の言葉に一瞬、目を大きくさせたが軽く頭をかきながら少し考えるマルコ。ため息をつき俺を見て話し出した。


「たく、何してくれてんだよい…。***は昔…男に売られたんだよい…。彼氏と思ってた男の前でまわされそうになった時、たまたま俺が見つけて助けて親父に頼んで船に乗せてんだよい。」
「…………嘘だろ?」
「ほんとだよい。おめぇや、クルー達にキツいのも男が嫌いなんだろい。嫌いつーより怖ぇんろな。また裏切られるのが。」


俺はとんでもねぇ事したんじゃねぇか?マルコの話に思わず言葉を失う。ただでさえ、男が嫌いなのに腐っても仲間の奴からあんな事されて……***は誰を信じたらいいんだ?


「おめぇの事だ、変な勘違いしてたんだろい?***が俺にくっつくのは助けたからだろい。」
「そうなのか……?」
「あれでも***はおめぇの事気に入ってたんだぞ。隊員想いでいい隊長だとよ。」


少し笑いながら教えてくれるマルコ。そんなマルコを部屋に残し走り出す。勿論***の所だ。***の部屋の前につき、深呼吸をしてノックをする。


「***……さっきはわりぃ…」
「……………………」


何も返事がねぇ。……当たり前か…あんな事したんだから。
「わりぃ!」と言って返事を聞く暇なくドアを開けて部屋に入る。すると部屋の隅で泣いている***。


「は?ちょ、何で勝手に入ってきてるのよ!」
「いや、話聞いて欲しくてよ…」
「そうだとしても勝手に女の子の部屋に入るって馬鹿!?」


あれ?いつも通り?
ちょっと気が抜けるが目の周りが真っ赤の***を見てグッと手に力を入れて***の肩を掴む。


「さっきは悪かった………ガキ扱いされて頭に来て……あんな事しちまった。すまねぇ」


そう言って腰を曲げて謝る俺に「…別にいいわよ」とそっけなく答える***。


「……無理しやがって。俺の前でも怖かったら怖ぇって言えよ。……これからはマルコだけじゃなくて俺の事も頼れよ…!」


思わず抱き締めてしまう。しまったと思ったものの、このままの勢いだと思い「好きなんだ」と言って少し抱き締める力を強めた。


「マルコから話は聞いた……俺やここに居る奴等は***を傷付けたりしねぇ。大丈夫だ。……何かあっても俺が守ってやる…だからそんな気ぃはってんな。俺の前だけでも気ぃ抜けよ…」


俺の言葉に何も言わねぇ***。やべぇ…やり過ぎたか?少し焦っていると「エース」と小さな声が俺の胸から聞こえた。


「……エースの気持ちは凄い嬉しい。けどまだ答えれる勇気……でない…ごめん…」
「………構わねぇよ。少しずつでいいから。」


ありがとうね、と小さく言う***が可愛くておでこに思わずキスをして怒られたけど離さなねぇ俺を見て***が笑っていた。





- 俺の前では無理するな -




少しずつでいいから俺に色んな表情を見せてくれ


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