ACE | ナノ

▽ 儚い恋でした



男ってのは不器用なんだ。
よく言うだろ?“好きな女ほど苛める”とか。
それも何でもいいから喋りたくて、けど恥ずかしいから照れ隠しで苛めたりするんだよ、男ってのわ。



「ちょ、エース!最低!馬鹿!変態!」
「んだよ!ちょっと弁当のオカズ食っただけじゃねぇか!」
「メインのハンバーグ食べるとか馬鹿なの!?あ、ごめーん。エースは馬鹿だったね!」


***の言葉に仕返しとばかりと、デザートのイチゴも食べてやった。


「……ほんとないわ。」
「へっへー!ザマーミロ」
「…………お前等、高3にもなってまだそんなガキみてぇな事してんだよい…」


そう、俺とマルコと***は幼馴染み。
物心ついた頃から一緒に居て………いつの間にか***に惚れてた。けど“好きだ”と実感すればするほど、どう接していいのか分からず喧嘩腰ばかり。いっつも俺と***の喧嘩をマルコが止めるのが日課なのは内緒だけど。


これでもいいと俺は思っていた。
***も今まで男を作ったりしなかったから、この関係でも満足していた。「まだ大丈夫だ」「この関係を壊したくねぇ」って逃げて気持ちは隠したまま。どんどん綺麗になっていく***を見て心配しつつも、どこか安心していた。


けどそんな安心も無くなる事が起きた。
そう、***に男が出来た。
それは幸せそうに俺達に報告してくる***。
「良かったな」と平然に言うが内心ショックでどうかしてしまいそうだった。この報告をきっかけに俺の苦痛の始まりだった。


男が出来てから一段と綺麗になった***。前は化粧なんて全くしてなかったのに、うっすらではあるが今では化粧をしている。
髪型もストレートばかりだったのを軽く巻いたりして女っぽさが増した。正直言ってすげぇ綺麗だ。けど、***が綺麗になった理由が他の男ってのが気に入らない。


「…………………」
「……………何よ、エース」


チラリと目だけ俺を見てリップクリームを塗っている***。机の上には2つの弁当箱。思わずジィッと見ていると***が急いで、その弁当箱を隠した。


「あげないからね!」
「誰が***の手作り弁当なんて食うかよ」
「へっへーん。彼氏さんが食べてくれまーす!」


ドヤ顔をしながら弁当箱を持ち上げ軽く降り言う***に、少しカチンと来た。
ずっと一緒に居た俺には、1回も手作り料理なんてしてくれなかった癖に付き合ってすぐの男には作んのかよ。


「……なんか…エース怒ってる?」
「…あ?んな事ねぇよ」


やべぇ、顔に出てたか。気を付けねぇといけねぇな、と思っていると***が髪を手でときながら「変な所ない?大丈夫?」って俺に近付きながら聞いてきた。
これから男に弁当を渡しに行くんだな…そう思うと、やっぱり腹が立つ。


「変じゃねぇ変じゃねぇ」
「えー何か適当じゃない?ほんと大丈夫?」
「大丈夫だっつってんだろ!?」


ガチャンッ


苛立って***の手を払いながら答えると弁当が落ちる音がした。まっ逆さまに落ちている弁当箱。


や、やべぇ……


「***……すまねぇ……」
「…………………」


これはまずいと思って謝るが何も言わねぇ***。つい、気まずくていつもみてぇに喧嘩腰で言ってしまった。


「い、いっちょ前に色気なんか出しやがって気持ち悪ぃ。その弁当もほんとに食えんのか?」


しまったと思った時には遅くて逆さになった弁当箱を持って教室を出ていく***。そんな光景を見ていたマルコがため息をついて話してきた。


「何やってんだよい」
「……………うっせ」


そのまま教室に居てもマルコに説教くらうだけだし、俺も教室を出る。何より***が気になる。あいつは絶対俺達の前では泣かねぇ。
いつもこっそり泣いて俺がその場面を見つけて慰めるのが決まりみてぇなもんだった。


キョロキョロと周りを見ながら中庭を見ると***の後ろ姿。後ろ姿でも泣いているのが分かるってのは、流石幼馴染みってとこか。
1人そう考えながら***に謝ろうと声をかけようとした瞬間、***を抱き締めあやす彼氏であろう男。


「どーしよ…頭にきちゃって何も言わず出てきちゃった…エース…怒ってるかな…」
「大丈夫。長い付き合いなんだろ?***が少し怒っただけって分かってるさ」


そう言って***の頭を撫でる男を見て思った。
***を慰める役目も、もう俺じゃねぇって。
それ以上、その光景を見たくなくて教室へ戻る。


昔は俺が***を慰めたいた。
俺が***を笑顔にしていた。けどもう俺じゃねぇ。
俺じゃ***を元気にする事も笑顔にする事も間にならねぇ。


今まで一緒にいたのに安心しきって行動に移さなかった結果、これだ。ハハっと思わず笑いが出た。もうおせぇんだよ。何もしなかった癖に嫉妬して***を傷付けて…
ほんと俺は馬鹿だな。***の言う通り俺は馬鹿だ。


***が予鈴と同時に教室に入ってきた。


「***……さっきは悪かった…」
「いっ、いいよ…別に」
「彼氏、いい奴そうだな。***にしては見る目あるじゃねぇか」
「は?いきなり何!?」
「いーや、何となく。」


不思議がる***に軽く手を降り、自分の席に座る。座ると同時に顔を伏せた。
***に…泣いてる所なんて見られたくなかったから。





- 儚い恋でした -



ちゃんと諦めるからさ。
これからも“幼馴染み”として接するからよ。
今だけは泣かせてくれ。
泣き止んだら今まで通りにするからよ。

ほんとに好きだったんだ。
俺が幸せにしたかったけど、出来ねぇから……
嫌味かってくれぇ幸せになれよ


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