ACE | ナノ

▽ 願い事はなんですか?



俺の楽しみのお昼寝時間をバタバタと近付く足音によって妨害される。


「エースー!!七夕しよー!」
「………………七夕?」
「うん!イゾウに教えて貰った!」


俺の横に座り込み、ニコニコしながら俺に紙を差し出す***。聞いてもいねぇのに七夕について話し出した。


「七夕ってのはね、織姫様と彦星様が1年の中で唯一会える日なんだよ!」
「ふーん……1年に1回しか会えねぇってのは困るな。どうやって普段、性欲我慢したんだ」
「エースの馬鹿!」


***にパンっと肩を叩かれる。いや、大事な事だろ。1年に1回じゃあ、溜まりに溜まってハッスルしちまうじゃねぇか。つーか……


「七夕過ぎてね?」


俺の言葉に***の動きが止まる。確か今日は七夕の日じゃなかった。


「だって七夕の日、雨降ってた。」


確かに今日は久々の晴れた日。だけど違う日にするもんなのか?


「だって短冊に願い事書くと叶うって……出来れば晴れの日がいいじゃん。兎に角はい!エースの短冊!」


***に短冊とやらを渡される。それを俺が受け取って納得したのか、横で“願い事”とやらを書いている***。


「エースもちゃんと書いてよ!」
「………へいへい」


俺が書き始めて少しした頃、***の「でーきた」と言う声。


「ふっふー。エースは書けた?」
「おー書いたぞ」
「じゃあ、見せあいっこしよ!」


せーのっという掛け声でお互い短冊の内容を見せる。


“エースのお馬鹿が治りますように”
“***の胸がデカくなるますように”


「ちょっと!むっ、胸の事なんてエースに関係ないでしょ!!」
「お馬鹿ってなんだよ!馬鹿って書かれるより、馬鹿にされてるみてぇだわ!」


ガルルと2人して唸っていると「もういい!」って言って歩き出す***。


「おい!………短冊余ってんぞ!」
「いらないっ!!エースのお馬鹿!!」


最初のようにバタバタと足音をたてて***が食堂の方へ消えていった


「だから“お”を付けんなつーの」


残りの短冊を拾い***の後を追う。拗ねるとめんどくせぇからな***。この前もサッチの手作りデザート横取りした時拗ねて2、3日口きいてくれなかったからな。


歩いていると違和感を感じた。いつの間にか甲板の端に竹が立っていた。


「……竹って勝手に生えるもんか…?」
「そんな訳ねぇだろい、馬鹿野郎。***が七夕するってうるせぇもんだから、ビスタが竹どっからか取ってきたんだよい」


へーと空返事をしながら、もういくつか飾られてある短冊を見る。


“ナース全員が俺のものになりますように”


「………これサッチだろ」


その他にも“禿げませんように”や“中年太りしませんように”やら下らねぇ願いばかり。織姫と彦星怒るんじゃねぇか?そんな事を思って、ある短冊を見た時思わず目を擦った。


“エースが私の気持ちに気付きますように”


それは可愛らしい字で書かれたものだった。
たく、俺はお馬鹿だから期待しちまうじゃねぇか。手に持っていた短冊にペンを走らす。


「…何ニヤけながら書いてんだよい」
「あー?内緒」


思わずヒヒッと笑って、その可愛らしい願い事の書かれている短冊の横に俺の短冊を結びつける。


「織姫様とやらを向かえにいくか」
「とうとう頭イカれたかよい…?」
「うっせ……」


食堂に入ると不機嫌そうにジュースを飲んでいる***がいた。ブクブクと泡を作ってムスッとした顔でも可愛く見えたのは、さっきの短冊のせいだ。





- 願い事はなんですか? -




“エースが私の気持ちに気付きますように”
“***がずっと俺の傍で笑ってくれますように”


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