▽ 俺じゃ無理だろうな
今月色々金を使ったせいで生活がやばい。てかバイト代が出るまでのこの1週間ちょいを俺は200円で過ごさなくてはならない。
いや、流石に1週間ちょいでも厳しくね?確か週末サークルの飲み会つってたし……。って事で日雇いのバイトを始める事にした。
「じゃあ、***ちゃん。営業行ってらっしゃい。」
「はーい!あ、エースじゃん!!」
「…………うす」
ねぇちゃんをある場所に運ぶアルバイト。いや、怪しくはねぇよ?けど、なんて言うか言いにくいと言うか………
「じゃ今日は〇〇ってラブホまでお願いねー」
「………了解っす」
そう、風俗嬢を運ぶアルバイトだ。いや、だって1日1万ってでかくね!?ねぇちゃん2人か、3人運んだだけで。簡単だし、楽そうだし、金いいし!って気持ちで電話して雇ってもらったものの………。
露出の高ぇねぇちゃん達が何だか怖ぇんだけどな…。いや、化粧も何か濃いし……けど、今乗せてる***違った。化粧濃くて性格がキツそうにみえるけど笑うと幼い子みたいになるし。つーか***もそうだけど、ねぇちゃん達腰の当たりは細いのに乳はすげぇデケェんだよな。何食ってんだよ。
チラッとバックミラーで***の様子を見ると***と目があった。
「何?エース、私に見とれてるの?」
「なっ、見とれてねぇよ!」
「ムキになるとか怪しー!!」
ケラケラと笑う***。他のねぇちゃん達と違って俺にバンバン話しかけてくる。他のねぇちゃん達も若い運転手が珍しいみたいで「お兄さん若いねぇ」とは言われたが、こんなに話しかけてくる人は居なかった。
変わってんな、って***を見るとニヤァと笑っている。
「ちなみに風俗嬢に手ぇ出したら罰金だからね?だから私の事は諦めて☆」
おどけて言う***に「出さねぇよ」って答えると同時に目的地についた。
「もー少しはノッてよね!じゃ、行ってきまーす」
笑顔で車を降りて歩いて行く***の後ろ姿を眺めながら俺も事務所に戻る事にした。事務所に戻って金を貰い家に帰る。
後2回くれぇしたら十分だな、と考えながら寝る事にした。***と会えるのも後2回か……無意識にそんな事を思ってる自分にビックリした。後2回でも***に指名があるか分かんねぇのに。
他のねぇちゃん達と***のタイプが違ぇから気になってるだけだろ、と自分に言い聞かせて寝た。
「あ、エース!」
「うす…」
「昨日エースじゃなくてオジさんだったからつまらなかったよー!」
今日もケラケラ笑う***。バックミラーで***を見てみると目元が少し赤い。何となくだが、いつもと違い無理しておどけてるように見える。
「ん?何エース?やっぱり見とれてるの?」
「…………違ぇよ。何か***今日無理してね?」
「え…………?」
「何となくだけどよ、違ったらすまねぇ」
そう俺が言うと黙り混む***。やべ、俺の勘違いで機嫌悪くなったか?少し焦っていると***が小せぇ声で話始めた。
「私さ、こう見えて**大学通ってんだよね」
「**大学!?ここら辺で一番名門じゃねぇか」
「そ!見えないでしょー!頭良いんだよ、あたしー」
笑顔で話す***。意外だったな、あそこ偏差値めちゃくちゃ高かったよな………
「でさ、あたしの親は昔から勉強勉強。勉強の事しか考えてなくて全くあたしの事見てくれなくて大学を合格した時も当たり前みたいな事言ってさ。」
「……………………………………」
「もう嫌になってきてさ。そんな時大学で知り合った先輩が凄く優しくてさ!あたしの事を凄い見てくれてっ!それまで勉強しか考えた事なかったけど、初めて好きになった人なの。初めての彼氏なの…」
少し顔を赤くして言う***。なんだよ、そんな顔すんのかよ。少し面白くねぇと思いつつ***の話を聞く。
「んでね……先輩、少し借金があるみたいでさ困ってるみたいなの。」
***の“借金”と言う言葉に嫌な予感がする。
「先輩、バイトしてても生活するだけでギリギリだから返済出来なくてさ……あたし、先輩の事助けたくて。」
「おい!それ騙されてんじゃねぇか!!?」
「………………そんな事ないって。お金渡すと嬉しそうに笑ってくれるもん。あたしあの笑顔が見れたら満足だし」
「だからって…………自分の体を売るような事してんのかよ……」
「うるさいな………あたしには先輩しか居ないんだもん」
「ほんとにその先輩は***の事、考えてんのか?考えてんなら、こんな事させ「分かってる!!」
初めて聞く***の怒った声に言葉を遮られる。
「分かってるわよ。こんな在り来たりな話だもん……先輩があたしの事をただのお金としか見てないとしても、それでもいいの。初めてあたしを見てくれ「俺にしとけよ!!」
今度は俺が***の言葉を遮る。
「俺にしとけよ………俺なら金とか関係なくお前の事、見るから。だからそんな奴と関わんなよ!!」
告白じみた言葉。けど喋ってる時の***は何だか辛そうだった。いつも笑ってる***しか見てねぇから余計。
けど俺の言葉に***はみるみる顔が怒っていく
「エースに何が分かるの!!あの時……あたしは、本当に先輩に助けて貰ったの!」
タイミング悪く目的地につく。振り返り***の方を見ると***は車から降りていた。
「どんな理由であれ、あたしは先輩に必要とされたら幸せなの。だからほっておいて」
今まで見た事のない冷たい表情の***。
俺が***を見たのはこれで最後だった。
あのアルバイトをしてた時から半年近くたった頃、1人でカフェに入った。たまたまだ。めったにそんな所には入らねぇ俺だが、何かコーヒーが無性に飲みたくなって近くにあったカフェに入った。
入った時ビックリした。***が居たからだ。あの時とは違い薄めの化粧だったが、***と分かった。ビックリして動けなくなった俺に***が気付いた。
「エース……」
***も少し気まずそうだったが「良かったら一緒にコーヒー飲まない?」と誘ってくれたので、一緒に飲む事にした。
暫く沈黙が続いた時***の左薬指に指輪があるのを気付いた。
「あ、これ?…………あたし結婚したんだ。先輩と」
「えっ…………そう…か………」
「あの時はごめんね、エース。エースの言葉、当たってたからカッとなって怒鳴ったりして………けどね、先輩がプロポーズしてくれて……」
幸せそうに話す***。あれ、コーヒーってこんな味の無かったもんだっけ。そんな事を考えながら***の話を聞いていた。
「久々に会えて良かったよ、エース。ほんとあの時はごめんね」
「いいって、気にすんな。……幸せになれよ」
俺の言葉に笑顔で頷く***。じゃあな、と別れを告げ歩き出す。次第に視界が悪くなる。気がつけばポタポタと涙が溢れていた。
「幸せそうな顔しやがって………」
人目も気にせず壁際に座り込む。なんだよ、あんな顔俺には見せなかったのに。
- 俺じゃ無理だろうな -
こんな在り来たりな話あるかよ…
けど俺じゃ***に
幸せそうな顔はさせれねぇんだろうな
***、お前が幸せなら俺は満足だ
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意味不明、長くてすいません。
後決して風俗という仕事がダメだと言う意味ではありません。
立派な仕事と思っていますが、
もし気を悪くしてしまったらすいません
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