▽ 痛み
「俺の事もっと欲しくなれよ、***」
そう言ってキスをしている相手はただのクラスメイト。そうただのクラスメイトだった。2ヶ月くれぇ前に教室で寝てた俺を起こしてくれた***。夕焼けに染まる***の髪が、頬が、唇が俺を簡単に欲情させた。
ただのクラスメイトにこんな事するほど、女には困ってなかった。自分で言うのもアレだが、俺はモテる。寄ってくる女に普通にキスもそれ以上の事もしてた。いつものように軽い気持ちで***にキスをした。最初は抵抗していた***。それが俺を余計欲情させた。
普段では考えれねぇくれぇ“女の顔”をした***に、どんどん激しくキスをする。
キスが終わると立てなくなって俺に寄りかかる姿を見て、もっと***が欲しくなった。
それからだ。***とキスをする仲になったのが。他の女とキスをしても欲情しねぇ。最近じゃあ、こんな事するのは***ぐれぇだ。***にあんな事を言っているが、俺が欲しいだけだ。これが恋愛感情なのか、ただの欲求不満なのか分からずマルコに相談する。サッチだと面白がられるのが目に見えてるからな。
「エース、お前………クラスメイトはやめとけよい…しかも、今までみてぇな軽い女でもねぇ***だろ?」
「………」
「俺は今までお前が盛ってても何も言わなかったのは、後腐れなさそうな女達だったからだ。けど***はちげぇだろい。」
めんどくさくなる前に辞めとけとマルコに言われる。マルコの言う通りだ。女は後腐れのない軽い女に限る。……***が拒んでくれると楽なんだけどな。なんて、考えてふと***を見るとダチと話していた。
***は普通に可愛い。変に気取ってもなくよく笑う。クラスではそんなに話した事はねぇけど、悪い噂とかは聞かねぇな。それどころか「可愛い」やら「付き合うなら***みたいな子がいい」ってクラスの男共が言っていた。………すげぇ面白くなかったが。
今も違うクラスの奴が***の事を呼んでいる。………別に気になっている訳じゃねぇし。トイレ行くだけだし。そう自分に言い聞かせ***達の後を追う。人気の少ない廊下で止まったみてぇで近すぎず遠すぎない距離で、話を聞いていると男が告白してるみてぇだ。
「断るって事は好きな奴でもいんの?」
「い…ないよ?」
***の言葉に胸の当たりがチクりと痛む。なんだ?この痛み。チクチクと痛む胸を押さえていると***の嫌がる声が聞こえる。
「やっ辞めてよ…」
「好きな奴居ないんなら、いいじゃん。」
***に無理矢理キスしようとしている男を見て頭に血がのぼる。男に殴りかかろうとした時気が付いた。“俺もそうじゃねぇか”って。俺も最初、無理矢理キスをして今もそうだ。しかも、あの男と違って気持ちを伝えた訳でもねぇ。ただの欲で***にした。
そんな俺が***を助けるなんて都合が良すぎねぇか?
そんなこと考えて助けそこねたが、男が俺に気が付いたみたいで舌打ちをして去っていく。とりあえず***にかけより「大丈夫か?」と肩を触ろうとした時***に手を振り払われた。
「あっ………ごめん………」
俺の顔も見ないでそう言うと逃げるように走っていく***。チクりチクりと胸が痛む。
ハハ…情けねぇな。***に拒絶されて初めて自分の気持ちに気が付いた。
- 痛み -
チクりチクり。
胸が痛む度に***に惚れていたんだと実感する。
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