▽ 麻薬
「んっ…」
誰も居ない教室。外は日が暮れてきて綺麗な夕焼け。聞こえるのは部活をしている人の声。そして私の目の前には色っぽい顔をしてキスをしてくるエース。
私達は付き合っている訳ではない。ただのクラスメイト。凄く仲が良いって訳でもなく、全く喋らない訳でもない。こんな関係になったのは、2ヶ月くらい前からだ。委員会で残っていて帰ろうと鞄を取りに教室に戻ったらエースが寝ていた。
「エース、エース。もう校門閉まるよ?」
少し揺すりながら言うと起きたみたいだ。
「んー***ー?」
「早く起きないと帰れなくなるよ?」
「んー分かったぁ…って、***!?」
「………***さんだけど?さっきから何?」
「あーなんでもねぇ。くそ。マルコとサッチの奴置いていきやがったな」
そう言いながら帰る準備をするエース。まあ、エースは一度寝るとなかなか起きないからなあ……マルコとサッチの置いていきたくなるのも分かる。エースの準備も終わったみたいで教室を出ようとした時、エースに呼ばれた。
振り替えるとそのまま壁に押されて、いきなりキスをされた。抵抗しようとすればするほど、エースに腕を掴まれたり、顎を固定されたりする。抵抗出来ずにされるがままになるにつれ、頭がボーっとしてくる。やっと自分の口で息が出来る頃には自分の足で立っていれなくなってエースにもたれる形で立っていた。
「そんなに気持ち良かった?」
肩で息をしている私を見ながら言うエース。いつものクラスで見せるような無邪気な笑顔じゃなく、色っぽい顔でそう言うエースに何も言い返せなかった。
「また明日な」と笑顔で言って帰って行くエースの後ろ姿を見ていたあの放課後から今のような関係だ。
放課後、私が委員会で残っていた日や誰も居なくなった教室、裏庭。
エースの気紛れでキスをする。ただそれだけ。私も抵抗すればいい。エースと2人にならないようにすればいい話なのに、それが出来ない。
エースのキスは麻薬みたいだ。
たった一度。一度だけされただけなのに、その快感が忘れられない。
そして今日もこの快感に溺れてエースに依存していく
「俺の事もっと欲しくなれよ、***」
そう言ってまたキスをしてくるエースに私はどんどん惚れていく………
- 麻薬 -
貴方の気紛れかも知れない。
そんな事分かっていても私は貴方から離れなくなる
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