▽ なあ、お前は幸せだったか?
「おい、マルコ今何て言った?」
俺の言葉に周りが固まる。けどそんな事お構いなしにマルコが冷静に言う。
「もう***は助からねぇよい」
他人事のように言うマルコの胸ぐらを掴む。お前、家族だぞ?何でそんなに冷静なんだよ
「おい!ふざけんな!昨日まで***は元気だったじゃねぇか!!」
そう元気だった。昨日も***とくだれねぇ事話して……将来の事も話した。昨日言ってたじゃねぇか。“私がエースを幸せにしてあげる”って。嘘だったのかよ。
昨日までとは別人のように顔色が違う***を見たら涙が出てきた。泣くな、俺が泣いたら***が助からねぇのを認めた事になる。
「エ、エー…ス」
「!!***!大丈夫か?嘘だよな!?治るよな!!」
「……………ご…めんね…」
ごめんねって何だよ。***、お前も諦めてるのかよ。
「おい!船医!ちゃんと診ろ!もしかしたら、まだ助かるかも「エースっ…」
弱々しくしか喋れなかった***が俺の声を遮った。
「もう……いいの………もう治らないの…ごめんね…」
***の言葉にボロボロと涙が止まらない。何でだよ。何でお前自身が諦めてるんだよ………俺の頬を触る***の腕が細かった。こいつこんなに細かったっけ…?
「エース、笑って……?私…エースの笑顔…好きなの」
「……………***の最期の願いだ…きいてやれよい…」
ボロボロと涙を流しながら笑う俺を見て笑う***。***の手を握ると***が嬉しそうに笑った。俺の好きな笑顔だった。
「私…エースの笑顔を見れて死ねて幸せ…大好きだったよ…エース……」
「過去形かよ…」
俺の言葉に笑う***。なあ、いつもの笑顔じゃねぇか。ほんとに死ぬのか…
「なあ…俺も大好きだ。すげぇ好きだ。」
逝くなよ…小さな声でしか言えねぇ俺を見て***がエースの弱虫って笑った。お前の事になると弱くなるんだよ。俺はお前が居ないとダメなんだよ。どんどん冷たくなっていく***が涙で見えなくなる。昨日の***と話してるのが頭を過った。
“親子ってどんなんだろうな”
“そっか!エース知らないんだったね…大丈夫!私がエースの夢叶えてあげる!!”
“***が?”
“うん!私がエースとけ、結婚してエースとの子供産むの!!私がエースを幸せにしてあげる!!”
“ブッ***が?……まあ、頼んだよ”
幸せにするつっときながら自分が先に逝くのかよ。冷たくなった***を抱き締めながら泣いた。返事が来ないのなんて分かっている。けど何度も***の名前を呼びながら泣く俺に、目の赤いマルコが紙を渡してきた。
「わりぃな、エース……実は俺と親父は知ってたよい…***に口止めされてたんだ。」
「………***ならそうしそうだな…これ何だよ」
「***からの手紙だ」
思わずマルコからその紙を奪い中身を見る。なあ、 ***お前最後まで俺の事想ってくれてたんだな。少しは我が儘言えよ……
冷たくなった***にキスをする。いつもみたいに照れていた***は居なくて、動かない。
- なあ、お前は幸せだったか? -
俺はお前と付き合えて幸せだった。
お前と将来の事を話せて幸せだった。
出来ればお前と叶えたかった。これからもだ。
だから……だからよ…
“私の事は気にしなくていいから、幸せになってね”
なんて書いてんじゃねぇよ。
俺はお前しか考えられねぇんだよ…
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