▽ ヘタレとかじゃねぇ!
なんだかモビーの中が騒がしい。ホワイトデーだからだ。
顔面チョコレートという斬新なバレンタイン(まあ、後でちゃんとしたのくれたけど)をしてくれた***にクルー皆がお返しをしようと考えていたら、***は返しいらねぇって言いやがった。
「日頃の感謝の気持ちだから」
って言ってたけど可愛い可愛い***からのバレンタインだ。どうしてもお返しがしてぇと聞かねぇ俺等の意見に折れて「じゃあ、隊で1つずつ」と言った。だから隊で色々なお菓子を***に渡した。
…………まあ俺は個人でお返し買ったんだけどな。だってバレンタインのあの一言は期待していいって事だよな!?
そんな事を思って***を探してるとイゾウと話していた。思わず隠れた。いや、俺だけお返しすると何言われるか分からねぇからな。
「わあ、イゾウありがとう!これ珍しいやつじゃん!見つけるの大変だったんじゃない?」
「お前さんの為だからそう思わねぇよ」
そんな会話が聞こえて***の手元を見るとお香みてぇなのを持ってた。
くそっ、イゾウの奴抜け駆けしやがって!!そんな事を思って2人を見ていたら、渡すタイミングを失った。
それから***の後をつけて渡すタイミングを伺って居たら隊長共が次々と***に“お返し”をしてるみてぇだ。
ビスタは紅茶。ハルタは可愛らしいハンカチ。サッチは手作りケーキ。ラクヨウは万年筆。ジョズは花束。なんだよ、ジョズ。花束って気持ち悪ぃ。
なんかどんどんタイミングを失いどうしようかと考えていると***が止まった。今だと思い声をかけようとすると、今度はマルコに先を越された。
「***、これお返しだよい」
「わっマルコもありがとう!てか皆いいのに」
「皆お前が可愛くて仕方がねぇんだよい」
マルコの言葉に嬉しそうに笑う***。………可愛いな。ふと***の手元の物を見る。マッマルコの奴***に髪飾りとか渡してやがる…!流石マルコ。品のある髪飾りだ。
ニコニコ嬉しそうにしてて少し腹が立った。まあ、やきもちってやつだ。好きな女が他の男から物貰ってニコニコしてんだ。いい気はしねぇ。
思わず苛々して手に力が入る。ハッと気付いた時には***に渡すはずの箱を握ってしまっていた。
やっべ。少しへこんじまったか?
箱を見て大丈夫か確認をしていると「エース?」っと***の声。ビックリして振り返ると***が居た。
「なにしてんの?こんな隅っこで」
笑いながら言う***に「あ、え、いやぁ…」と何ともかっこ悪ぃ返ししか出来なかった。マルコが***の後ろでニヤニヤしてるのは見なかった事にする。
「もしかしてエースも、お返し?」
俺が持っている箱に気付いたみてぇでそう言ってくる***に「お、おう」と言って箱を差し出した。
ほんとはもっとサラッとかっこよく渡すつもりだったのに、恥ずかしいのとやきもちで渡せねぇ。自分でも分かる不機嫌な態度に***は気にしてねぇみてぇで「開けていい?」って聞いてきたから頷いた。
「わあ!綺麗なネックレス!」
そう、俺が渡そうとしてたのはネックレス。ありきたりだが、俺がやった物を出来れば毎日身に付けて欲しぃし“俺も***が特別だ”という気持ちを少し込めて。
「さっそくつけていい?」
そう言った***だがなかなか上手い事付けれねぇみてぇで「ちょっとかせ」つってネックレスを奪う。ドキドキしながらも***につけてやると「ありがとう!」って喜んでた。うん、似合うな。流石俺。すると***が不思議そうな顔で見てくる
「…なんだよ」
「エースはホワイトデーとか忘れてると思ってたから、こんな素敵な物を貰えるとはビックリ」
俺だってそれくれぇは知ってるし、好きな女があんな事言ったんだ。………少しはかっこつけて気持ちを言うつもりだった。
まあ、嬉しそうにしてる***を見れて今は十分か。
- ヘタレとかじゃねぇ! -
エースはヘタレだよい。女に物渡すだけなのにあれかよい……
うるせぇ!そんな悲しそうな目で見んなぁぁぁぁ!
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