ACE | ナノ

▽ 俺だけのモノ


 
誰でもいい。人とは違った愛し方でもいい。
誰かに依存されたかったんだ、私は。

「じゃあ***、出かけてくるから。何か必要なモンがあったら俺かマルコに連絡すれば届けにくるから。」
「……何時に帰ってくるの…」
「大丈夫。***が寂しくなる前に帰って来るから」

自然な笑顔ではない、何か裏のあるような笑顔をしてエースさんは玄関の扉を閉めた。ガチャリとその音が響くと私は鳥籠の中の鳥だ。
リビングに戻りテレビのチャンネルをかえニュースを見る。部屋に日光でもいれようとカーテンを開けると都心が一望出来るいい眺め。だけど私の心は満たされない。

あの日……あの手を取ってから私の自由はなくなるのは分かっていた。自由はなくても、贅沢な暮らし。欲しい物は何でも手に入る。だけど私の心は日に日に自分の心奥底に隠れていく気がする。何故ならエースさんは部屋から一歩も外に出してくれないからだ。

開けたばかりのカーテンを荒々しく閉める。今日も1日、何をしようか考えてるとスマホが震える。画面を見てみるとさっきエースさんが出していた人物の名前が表示されていた。
エースさんの仕事仲間のマルコさんだ。エースさん曰く結構偉い人らしい。あまり詳しく仕事内容を教えてもらえない為、私が知っているマルコさんはそれだけ。後は見かけによらず案外面倒見がいい事ぐらいだ。

「もしもし・・・・・・」
「起きているようだな。おめぇ今日暇か??」
「それ嫌味ですか?私が部屋から出して貰えないって知っている癖に」
「わりぃわりぃ、ちょっとした嫌味だ」
「全然悪いと思ってませんよね?」

笑いを堪えながら私に問うマルコさんに少しイラっとしつつも会話を続けると、マルコさんから嬉しい言葉をかけられた。

「***、今日ちょっと俺の用心に付き合え」

その言葉に驚きどう返事をすべきなのか考えていると、私の返事を聞かずに「後30分くれぇで着くから準備しとけよい」という言葉を残し、電話を切られた。30分なんてすぐじゃんか・・・という気持ちと、家を勝手に出ていいのかという気持ちが交互する。だが久々の外という誘惑に勝てず軽く用意をする。

軽く髪の毛を整えた時、チャイムが鳴る。インターフォンを覗くと気だるそうな表情のマルコさんが見え急いでドアを開ける。
久しぶりの外の空気に景色、思わず当たりをキョロキョロと見渡しているとマルコさんに笑われた。

「キョロキョロしすぎだよい」
「……だってエースさん外に出してくれなくて」
「まあ……あいつは独占欲が強いからな。」

何か隠している様子のマルコさんだったが、それ以上何も聞ける雰囲気ではなく何も言えなかった。それからはマルコさんの運転で仕事の取引先だという所に連れて行かれ、軽くドライブをして家まで送ってもらった。

「今日はいきなり悪かったな」
「いえ、息抜きも出来て良かったです」
「なあ、***、」
「どうしました??」
「………なんでもねぇよい。外は冷えるから早く部屋戻れ」

そう言って車のアクセルを踏み、車を発進させるマルコさんを見送る。車が見えなくなり、部屋に入ろうと振り返るとエースさんの姿があった。感情が全くない表情でこちらを見ていたのに、私と目が合った途端いつもとはまた違う笑顔を向けながら、こちらに駆け寄ってくる。

「何してんだ?外に居ると冷えるし早く部屋に入ろうぜ?」
「あ、うん…」

その普段と同じ態度なのが、なんだか怖い。力強く私の腕を掴むエースさんに抵抗しようと思ったが、抵抗した後の方が怖くて言われるがままエースさんの後を歩く。
会話もなく黙々と歩くエースさんをチラチラと盗み見る。あまり表情が読めずどうするべきか考えていると部屋についたみたいでガチャリと鍵が開く音がしたと思った瞬間、それまで歩幅を合わせてくれていたのに私の歩幅なんて関係なしにエースさんが歩き出した。

「ちょ、エースさん!待って…!!」

私の言葉に耳も傾けず寝室へと連れて行かれる。クイーンサイズのベッドだけがシンプルに置かれているその部屋に入った途端、それまで痛いくらい掴まれていた腕が離された。だが、離されたと同時にベッドへ押し倒された。両腕を頭の上で掴まれ、抵抗が出来ない。

その荒々しさに痛みよりも驚きの方が大きく、エースさんに視線をやると体が強ばった。冷たい目。怒りが感じるその目の中に、少しだけ寂しさの感じれる。
そんな事を思っていると、先程までエースさんの手で掴まれていた筈の両腕が、手錠に変わっていた。しかもご丁寧にその手錠をまたベッドの柵に固定されていた。驚いていると、お構いなしに私の服を引き千切り上半身は下着が丸見えになった。

「なっ…!!いきなり何するの!!?」

抵抗しようにも手は自由が効かず、バタバタと動かしていた足もエースさんが間に入り動きを止められてしまった。私の気持ちも関係なく、唯一上半身に着いていた下着も剥ぎ取り乱暴に愛撫し始める。力任せに胸を鷲掴みされ、舌をいやらしく滑らせていく。声が溢れそうになるのを必死に我慢していると、エースさんの手がドンドン下へ下がっている。

「やっ……!!」
「嫌じゃねぇだろ?結構身体の方は喜んでいるみてぇだけどな」

エースさんの言葉と指の動きに合わせて響く音に顔が熱くなる。そんな私に、ニヤリと嫌な笑みを浮かべ指の動きを早めていく。いやらしい音が部屋に響き、羞恥心で涙が溜まる。そんな私の事なんて関係ないようでガチャガチャとベルトを緩め自身を取り出し、私に無理矢理入ってくる。準備が整っていないのに無理矢理入れられ、痛みで溜まっていた涙が頬を流れる。

別にエースさんとの行為が初めてではない。だけど、こんなに荒々しく私の感情を無視した行為が初めてだった為、いつの間にか痛みで流れていた筈の涙が悲しさに変わる。

「何勝手に外出てんだよ!!***は俺の事だけ考えてればいいんだ。***の人生を俺にくれって言ったじゃねぇか!俺の手を取って付いて来たって事は俺にくれたんだろ?***は俺の言う事を聞いてろよ!」
「エース…さん……!いたっ…痛い!!やめっ…」

乱暴に腰を私に叩きつけ、私の言葉に耳を傾けてくれない。人が変わったように、ただ欲を吐き出すような行為。
早く終わって…!そう願って目を強く閉じると首元にエースさんの手の温もりを感じた時、酸素を取り込む事が出来なくなった。いきなりの事で閉じた筈の目を開けると、エースさんの手が私の首を絞めていた。ギリギリと絞められていくにつれ意識が遠のきそうになる。

「***……俺がいいモンプレゼントしてやるよ。***にピッタリの首輪だ。俺のっていう目印にもなるし丁度いいな………」

狂ったような笑みで私の首を絞めながら、器用に行為を続けられる。息の出来ない苦しさと乱暴に打ち付けられ、意識が朦朧とし出す。だけどエースさんはブツブツと独り言を言いながら、ただ欲を吐き出す。
フとエースさんと目が合い、それまでの狂ったような笑えはなくいつもの裏のあるような笑みを浮かべ私の耳元へと顔を近付けてきた。エースさんの言葉を聞いたと同時に意識がとんだようで、私の視界は真っ暗になった。



- 俺だけのモノ -


“おいエース…お前あんま***を閉じ込めんなよい……くれぐれも壊すんじゃねぇぞ”
分かってるって。マルコも***の事勝手に連れ回すんじゃねぇよ
“……たまには息抜き必要だろい。まあ、分かっているならいいけどよ”
大丈夫だから心配すんな。じゃあな。

ん、……電話??
ああ、気にすんな(可愛いよ***……。色白の肌に首輪がよく映える。ずっと俺だけのモンだ。俺以外の事は考えなくていい。俺の事だけを考えていればいい……)








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