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▽ 人の話を聞いてくれ



今時の子達ってこうゆうものなの?



「これ誰がしたの?」


普段は煩いくらいなのに珍しく静か。いつもの騒がしい声は聞こえず、そのかわりにカタカタとパソコンを打つ音が響く。普段は全くと言っていい程仕事しない癖に、こんな時は無視を決め込む為かと聞きたい位仕事を熱心にしやがって……
思わず舌打ちをしそうになるが我慢をする。大人だしね?私、うん。


「ちっ…。私ですけど」


………今舌打ちしたこの子!?思わずパチパチと瞬きをしてしまう。そんな私を何だこいつとでも言いたそうな顔をしている目の前の女の表情に我に戻る。


「……あのさ、この書類ミスだらけなんだけど」
「あ、ほんとですか。」


そう素っ気なく返事をし、荒々しく私から書類を受け取る彼女。え、謝りもなし?そう呆気にとられている私を見てクスクスと笑う他の女達。心の中で舌打ちをしながら自分の席に戻り、自分の仕事を進める事にした。


事の発端は、3日程前の事だ。お客様宛の荷物をフと見た時ある事に気が付いた。


「この宛先誰が書いたの?」


その宛先にはギャル文字?崩し文字とも言える文字で書かれた物だった。百歩譲って、自分の会社内でのメモとかで使うのは我慢できる。だが、今回はお客様宛の荷物だ。自分が書いたと名乗り出た子に注意をしたのが事の発端。
それから、その私が注意をした子とその同期達からの態度が豹変した。挨拶しても無視。先程のように言ってもあんなんだ。いい加減、私の苛々も募る。


はあとため息を付くと私のデスクに缶コーヒーがコトンと置かれた。ビックリして缶コーヒーを置いたであろう腕を辿り、目線を上げるとそこには笑顔のポートガスくんの姿。


「顔疲れてますよ***さん」


そう言って自分の頬を指で上げ口元を上げているポートガスくんを見てプと思わず笑ってします。すると「やっと笑った」と嬉しそうに笑う彼。
彼も彼女達と同期。だが彼は態度は変わらずこのように喋りかけてくれる。有難いが人気者のポートガスくんだ。余計彼女達の態度は悪化するのは内緒だ。


「あはは…コーヒーありがとう。早速いただくね?」


缶コーヒーを開け飲みだした私を見て安心したかのように自分の席に戻り仕事をし出す彼を見、私も仕事を進めた。今日は定時で上がれそうだし、後少し頑張ろう。
そう自分に言い聞かせパソコンの画面と睨めっこしていると、ドンッという音と共に置かれた書類。そして少し不機嫌そうな顔をしている彼女……井上さん。そう私が注意をした張本人だ。


「すみませーん。今日用事があるんでこれ頼んでいいです?」
「…………」


ふてぶてしく話す彼女を見てイラっとする。私は知ってるんだからな。そう言って前帰った時、私がクタクタになって帰っている時にお前が男と歩いていた事をな!!


「ちなみに用事って何?」
「……家の用事です」
「ふーん…それ確認してもいい?」
「は?」
「課長ー!!井上さん家の用事が「ちょ、ちょっと!!」……なに?」


ギロリと睨む私に文句言いたげな彼女。その後ろには、いつも彼女と一緒に居る同期の女達。全くいつから居たんだと聞きたくなる。


「それってー疑ってるんですかぁ?」
「***さんひどーい」


ブツブツと文句を言い始める彼女達に私も我慢の限界がくる。
バンっと机を叩き彼女達を睨みつけるが、一瞬怯んだと思ったら直ぐにまたブツブツと文句を言い出す彼女達に「あのさ」と思わず大きな声が出る。


「この前もそう言って代わりにした時さ、帰り見ちゃったんだよね。井上さんが男と歩いてる所。疑うでしょ?」
「で、でも今日はっ…」
「じゃあ確認してもいい?うざいかも知れないけど前回の事があるとどうしても疑うんだよね。てか私じゃなくて、その周りにいる子達に頼めば?いつも仲良く一緒に居るでしょ?」


私の言葉に向こうもイラっとしたようで、いつものキャピキャピしたような声が一変、低い声を出す井上さんに文句を言われるとは思って居なかった。


「あ、もしかして***さん彼氏いないから妬んでるですかあ?」
「はあ?」
「あーだから私達に文句ばっかり言ってくるんですかぁ?」


は?ちょっと待って!?今までの私の言葉はそうなるの?
最近の子達の発想に付いていけない……。本日2度目、呆気に取られているとスルリと私の首元に逞しい腕が巻きついてきた。


「***さんには口止めされてたけど、俺等付き合ってんだ。」


そうシレっと言うポートガスくんに言葉も出ない。
だってロクに関わった覚えもない彼に言われ、どうリアクションを取ればいいのか迷っていると「それと」と躍けてない真剣な声が、彼女達を静かにする。


「注意して貰えるって事は俺等の事を思って言ってくれてるって何で思えねぇんだ。おめぇ等がちゃんと出来てねぇから***さんが言ってくれたんだろうが。社会人になってそんな事も分かんねぇのか。いつまでも学生気分でいるんじゃねぇよ」


ポートガスくんの言葉に言い返せないようで、逃げるかのように何処かへ行ってしまった。その中には少し泣いている子もいるように見えた。
多分ポートガスくんに惚れていた子だと思う。だってポートガスくんが喋りかけてくれた後、鬼の形相で睨んでくる子だったから。
けど、そんなのお構いなしのようでポートガスくんは満足そうな顔をしていた。問題は解決したようだが、もう1つ問題が出来た気がする。


「あの……ポートガスくん。ありがとう。助かったよ」
「それは良かったッスわ!!」


笑顔で言う彼に引き攣りながらも笑顔で返すが、もう1つの問題をどうしようか…。


「ポートガスくん?」
「ん?どうしんスか?」


返事をするだけでなく、わざわざ顔を近づけてくる。ち、近い!


「その…ああ言ってくれて助けてくれたのは有難いんだけど、誤解されたままでいいの?」
「え?あー付き合ってるってやつッスか?」
「そ、そうそう!!!!」


変な汗を流す私に止めをさすような言葉を笑顔で突きつけられた。


「本当にしちゃいましょうよ。実際、俺***さんの事狙ってたし!」
「は?無理だから!!!怖いし!!!(他の子達の視線とか!)」
「優しくしますよ?俺」
「いや、ドヤ顔で言ってるけど、私が思ってる怖いとポートガスくんが思ってる怖いはちょっと違う気がする!!!」


私の言葉なんて全く聞く耳持たない様子の彼は、さっさと自分のデスクにつき仕事を再開させていた。





- 人の話を聞いてくれ -




ちょ、ポートガスくん!?人の話ちゃんと聞いてくれない!?
あ、マルコ!?俺***さんと付き合う事になったんだぜ?
おーそれは良かったな。幸せにしろよい
いや!マルコさん!!違うから!


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