ACE | ナノ

▽ (2/2)



私も猫みたいになれたらな…
私の手にゴロゴロと喉を鳴らしながら擦り寄ってくる綺麗な毛並みをした猫。頭を撫でようとあいている手を伸ばした時シレっと私の手をすり抜けどこかへ行ってしまった。


自由気まま。あの猫達のように周りの事なんて考えすに自由に…いや、エースとの関係なんて考えずに自分の気持ちに素直になれたら、どんなに楽なんだろう。たった一言。“好き”の一言が言えない。“幼馴染”という関係に縛られている自分に嫌になる。


あ、幼馴染じゃないか。エースにしたら家族同然、嬉しい事じゃないか。特別に思ってくれてるんだ。他の人よりエースにとって特別。誇らしいじゃないか。他の子達も羨ましがっていたじゃない。


“***はいいよね。幼馴染だから”


いいでしょ?エースと小さな頃から一緒に居れて。今みたいに人あたりが良くなる前のエースも知ってるし、小さな頃肝試しをして自分も怖い癖にルフィや私の前では強がっていたり。
色んなエースを私は知っているのに、エースの事をロクに知らない子が私からエースを奪っていく。………奪っていくって元々私の彼氏でもないのに何様だよ。


「おい***!!?」


グルグルと考え事をしていると、いきなりサボに肩を叩かれ我に戻る。
そうだ放課後サボと猫カフェに来ていたんだ。


「たく、そんなにあの猫にフラレたのがショックだったのか?確かにあの猫毛並みいいから触り心地いいもんなあ!」
「…そうそう、懐いてくれたかなあって思ったんだけどね。逃げられちゃった」


名残惜しそうにその猫を見ていたら「元気ねぇのは、ほんとにそれが原因か?」と鋭い眼差しで私を見て言うサボ。その視線が本心を探っているのが分かった。探られたくないから目線を思わず逸らす。


「な…に言ってんのよ。それ以外何があるのよ…」


悟られないように、いつも通り平常心を装うとサボのため息でサボの膝の上で気持ちよさそうに寝ていた猫が逃げていく。


「たく、どいつもこいつも世話のやける…。***、お前もっと自分の気持ちに正直になれよ」
「は……?何言ってんの…」
「それでしらばっくれてるつもりか?いつもエースの後ろ姿を見てる辛気臭い顔見る気にもなれよ。」
「……一回正直になったわよ…。けどフラレた。これ以上幼馴染の関係を壊す訳にはいかない。エースが望んでないから。私はいい幼馴染で居ないといけないの」


自分が思っているより低い声が出てビックリしているとペチンと両頬に軽い痛みが。それまで定まらなかった視線が、正面のサボとしっかり視線が合う。両頬の痛みはサボが私の頬を叩いたから痛かったのか。


「それで自分は苦しくねぇのか?自分の気持ち押し殺して、いつもヘラヘラと上辺の笑顔見せて。だから言ってんだろ?ぶっさいくな顔見てるこっちの気持ちも考えろよ」
「なっ……」


サボがわざとらしいため息をし「ああ、後」と少し後ろを見る。私もサボの視線の後をおう。他のお客さんが居るだけだ。どうしたんだとサボに聞こうとした時、私の口よりサボの口が先に開いた。


「お前もそれでバレてねぇとでも思ってんのか?エース」


サボの言葉に今日一番の間抜けな声で「は!?」と言ってしまったが、それよりも今なんて言った?エースって言わなかった!?もう一度サボの視線の先を見ると、普段全くかけないメガネをかけ、いつもはまとまりのない髪の毛が真っ直ぐ直毛になっていたがソバカスが見え、気まずそうに出てくる人がエースだと分かった。


だって気まずい時、唇を少し尖らせるのが昔からのエースの癖だったから。だてに何年もエースの側に…何年もエースを想っていた訳じゃない。


「い、いつから気付いてたんだよ…」
「最初からだよ。お前尾行ヘタ過ぎ。変装ヘタ過ぎ。直毛キモすぎ」
「おまっ、それは今関係ねぇだろ?」


私の前で、もういつも通りになっているサボとエースだが私は今の状況につていけない。
何でいるの…。ていうか今の話聞かれた?マズイ。関係が崩れる。


「エース、今のは…」


それ以上の言葉が出ない。さっきのサボの言葉が頭をよぎる。
苦しくない訳ないじゃん。私の事を少しでもいいから幼馴染じゃなく、1人の女と見て欲しい。いつも頭の中で思っている癖に関係が壊れるのが怖くて逃げてる。
いつまでも逃げていたら関係が壊れないどころか、進む事も出来ないじゃん。


「エースごめん。やっぱり私、エースの事が好き。幼馴染なんて思ってない。家族同然とも思ってない……。ちゃんと1人の男として好き。」
「…………***……」
「エースが望んでいないのは分かってる。けど好きなの、諦めきれないの。ってこんな事言ってもエースを困らせるだけだよね…ごめん」


言ってしまった。もうこれで幼馴染ではいられない。
何も言わないエースとサボ。その空気に押しつぶされそうになる。足元に寄って来た猫に「ごめんね」と言い鞄を持つ。


「とりあえず…今日は帰るね…」


逃げるように立ち去ろうとした時腕を強い力で引っ張られる。バランスを崩すがしっかり立っていられた。エースに抱きしめられていたから。


「エ、エー…ス?」
「ちょっとこのままでいろ!!」


理解しきれていないの私を強い力で抱きしめるエース。すぅーはぁーと大きく深呼吸するエースにどうしていいか分からないでいると、笑いを堪えているサボと目があった。
笑う暇あるなら助けてよ!!目でそう訴えかけてもワザとらしく目線を逸らすサボ。


「お前は俺の側にいろ」


エースの言葉にピクリと体が動く。それはどういう意味で?また幼馴染として?もう今まで通りに接するなんて出来る自信ない


「それは……どういう意味…?」
「んなもん、そのままの意味だろ…?」
「だからどういう…………」
「俺の彼女になって側に居ろって事だよ!!」


エースの言葉に視界が歪む。
ほんと?いいの…?私エースの幼馴染じゃなくて彼女になっても…
そうエースに聞きたいのに言葉より涙の方が溢れてくる。


「今更って思うかもしんねぇけど、サボが***に触んの気に食わねぇし、可愛いとか言いやがるし。俺のが***のもっと可愛い所もドジな所も全部知ってんのにサボに取られるんじゃねぇって思うと頭に来た。***も***でほんとにサボとどっか行くしよ」
「そ、それも私はエースを誘おうと…」
「分かってる!!分かってるけど腹たったんだよ。けどあの後やっぱおめぇ等の事気になって眼鏡とアイロン借りて変装して付いたきた」


また唇を尖らしながら言うエース。
けどこんなエースの機嫌の直し方も分かってる。抱きしめられている間から腕を伸ばす。背伸びをしてエースの頭に手を伸ばす。


「ごめんね?」


頭を撫でながら言うと「おう」と耳を赤くしているエースに笑ってしまって「笑うんじゃねぇ」と、また拗ねさせてしまったけど。







- もつれやすい恋 -






じゃ、邪魔もんは帰るから会計頼むなあ!
サボ!!…ありがとね…?
おう!気にすんな!!

…………なに名残惜しそうにサボの事見てんだよ。
え?見てない!見てない!!
ふーん。ならいいけど。
(もしかして拗ねてる…?ぷ、可愛いな…なんか……今まで以上に好きになりそう…)
なに笑ってんだよ!!
んーん、何もないよ。エース、好きだよ
…俺だって、す…好きだ


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