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▽ 君を困らせないから


リクエス:「いつか気付いて」の続編




たった1枚の紙をこんなに憎んだ事をねぇ。
血は繋がってねぇ。たった紙1枚で俺等は家族という関係を築いている。


「ジジィ、話があんだけど。」


家の縁側で茶を飲んでるジジィの横に座りながら、俺も桜を眺める。ジジィは春になると縁側で桜を眺めるのが楽しみだからな。ジジィの居場所なんてすぐに分かった。持参した湯呑みのお茶を飲みジジィの反応を見る。


「なんじゃ。小遣いならやらんぞ」
「んなんじゃねぇよ。……大事な話だ。」


俺のいつもと違う雰囲気に気が付いたのか、茶を一口飲んで改めて「なんじゃ」と聞いてきた。自分から話をフッておいて話すのをためらっているとジジィの鉄拳が俺の頭に直撃した。


「男ならスッと話せ!」
「いっ……んなの分かってっけど、その…あれだ!心の準備が居るんだよ!!!」
「たく、育て方を間違えたわい…」
「………そうかもな…」


俺のその一言にピクリと少し動きが止まったジジィ。そんなちょっとした事でビビってる自分。言え!覚悟決めろよ。
グッと膝の上に置いていた拳の力を強め覚悟を決める。


「俺は…***の事が好きだ。妹とかじゃなく、1人の女として好きだ。……ほんとは気持ちを伝えてぇ。」
「………エース。それは本気か?」
「本気だ。いつも一緒に居た***と、たったの1年間だけでも高校と中学…学年の差で離れただけでも苦しいくれぇ辛かった。けど***が俺と一緒の高校を選んでくれてすげぇ…嬉しかった。嬉しかった反面…気持ちを抑えれる自身がねぇ…。」
「………」
「学校でも俺ん所によく来てくれて…俺をしたってくれて…。けど俺は***の事を妹として見てねぇ…。女として見てる。いい兄貴でいつまでも居れる自身がねぇんだよ…」


俺の言葉に何も言えねぇジジィ。そりゃそうだろうな…。流石のジジィも軽蔑したか…?
けど、ここまで言っちまったら後戻りは出来ねぇ。膝の上で少し震えている拳の力を入れ直し、残っていたお茶を飲み干しジジィの方をもう一度見る。今まで考えていた事を伝えるって決めてただろうが。


「***の為にいい兄貴で居られるよう高校を卒業したら直ぐ家を出ていくつもりだ。一緒に居ると気持ちを言っちまいそうだ…」
「それはエース、お前の勝手じゃが……出ていくなら援助は一切しないぞ?」
「んな事は分かってる。その為にも高校入ってからバイトしてある程度金は貯めた」
「………そうか。ならいい」


何も言わないジジィに少しビビって居ると、ジジィもお茶を飲み干し立ち上がる。ジジィの手が上がるもんだから、思わずビクッとすると頭を乱暴に撫でられた。
い、一応分かってくれたのか…?少なからず理解をしてくれたという事に口角が上がる。


ジジィに気持ちを伝えれたおかげか、心なしか気分が上がる。長かった。***と知り合って数年、自分の中に隠していた気持ちを理解して貰えて。
俺と***を初めて見た時は笑わねぇつまんねぇ奴、そんなありきたりな印象だった。全く笑わんねぇもんだから面白くなくてルフィと***を笑わそうという、ちょっとした遊び感覚で話かけていたが、ほんとに笑わねぇ。面白くねぇ。そう飽きかけた時笑った***を見た時単純な俺は惚れた。


それからは***の笑顔を守る為に強くなりてぇと思ったし、それと同時にガキながらも“***とは兄妹以上にはなれねぇ”と実感した。
それから俺の苦痛が始まった。いつ***が男を連れてくるんじゃねぇかと不安で仕方がなかった。俺のそんな気持ちを他所に***はどんどん綺麗になっていくし、活発になり友達も増えた。兄としては嬉しい。あんなに笑わなかった***が元気になって。だが男としては不安で、いつまでいい兄として居ればいいのか先が見えなかった。


ジジィに言った気持ちは本心だ。
***の前ではいい兄で居たいが、いつ暴走して***に気持ちを伝え困らすかわからねぇ。そう、単なる逃げだ。俺は楽な方へ逃げるだけだ。
後1年耐えれば今よりは、いい兄で居られる。






- 君を困らせないから -





お前の笑顔を守るのが俺の仕事だ。今はお前の近くで守らせてくれ。
お前がいつか……男を連れて来たらちゃんと兄として頑張るからよ



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