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▽ 大丈夫だよね?



※ とても長いうえに甘い要素0です。




「どうも、隣に引っ越してきたポートガスです」



そう言って少し胡散臭い笑顔で小さめの箱を渡してくる長身のイケメンさん。「あ、わざわざすいません」と答えつつ箱を受け取る。私が受け取った事に満足したようでイケメンさんもとい、ポートガスさんは部屋に戻って行った。


隣にイケメンとは少し得した気分だな、と思いながら貰った箱を早速開ける。すると有名なお店の詰め合わせだった。しかも可愛いウサギのぬいぐるみも一緒に入っていた。


「へー、あそここんな詰め合わせあるんだ!」


ウサギ好きの私はテレビの横のスペースに早速飾る。そこには既に私が持っていたウサギ達があり、年期の入った物ばかりなので貰ったばかりのウサギは少し目立っていた。


「新入りちゃんは真ん中に飾ってあげよ」


なんて1人で話しながら飾り満足すると、仕事もある為早めに寝る事にした。
次の日少し寝坊した為急いで家を出ると隣のドアも同時に開いた。するとメガネ姿のポートガスさんがゴミ袋を手にしていた。イケメンは何を付けてもカッコいいんだな…。関心していると「おはようございます」と朝から爽やかな笑顔で挨拶をしてくれた。


「あ、おはようございます」
「もしかして***さん寝坊ですか?」
「あ、バレました?」


笑いながら話すものの実際には時間もヤバイので「すいません、行ってきます!」と答えると、また爽やかな笑顔で「行ってらっしゃい」と答えてくれた。駅に着き定期を鞄から出した時にフと思った。
あれ?私、ポートガスさんに名前言ったっけ…?不思議に思ったけど特に気にせず、遅刻しないようにと急いで会社へと向かった。





「良かったらご飯でも食べに行きませんか?」


ポートガスさんが隣に引っ越してきて1ヶ月が経った頃だった。玄関を開けようと鞄から鍵を探してる時、たまたまポートガスさんも帰宅したみたいで鉢合わせして軽く挨拶してからのお誘い。
イケメンさんからの誘いだ、断る訳もなく即答で返事をし2人で向かったのは近所の居酒屋さん。


「すいません。初めてのお食事でこんな所で…」
「いや!大丈夫ですよ!!そのかわり今日は沢山飲むので相手お願いしますよー!」
「………勿論ですよ。思う存分飲んでください」


笑顔で答えてくれるポートガスさんだが、ボソっと「やっぱり…」と言っていたような…
まあ、見た目通り飲みそうって事かな?そう深く考えず定員さんが持ってきてくれたジョッキをポートガスさんのジョッキにゴンっと少し鈍い音をたて、ゴクゴクと飲み始めた。
異性と飲むというのが久々だったせいかテンションも上がりハイペースで飲み過ぎたせいか視界がグルグルと周りだした。そんな私に気がついたのかポートガスさんが「外にでましょうか」と声をかけてくれた。


フラフラな足取りでマンションへと向かう。
ポートガスさんいつの間にお会計済ましてくれたんだろ…。兎に角お礼を言おうとすると「俺が誘ったんで」と。イケメンはここまでイケメンなのか…。感心しながらもお礼を言うと優しく微笑んでくれた。
夜風にも当たり少し酔いがさめてフと違和感に気がつく。何やら視線を感じる。今、この状況で視線の持ち主はポートガスさんしか居ない訳で…


「あのー…そんなに酔ってる顔酷いですか…?」
「え?ああ、すいません。酔ってる顔も可愛いなって思って」


勇気を出して聞くものの、サラリとそう答えるポートガスさん。
思わず照れ隠しでバッチリ合っていた視線をそらす。照れもせず言うポートガスさんにドキドキしながら特に会話もせずマンションに戻ったが、会話のない時間もなんだか心地よかった。
飲みに行ったその日から特に進展もなくポートガスさんとはごく普通のお隣さん。…いや、別に期待とかしてないし?自分にそう言い聞かせ初めていた頃、同僚にそんな事があったと電話で伝えると「なにそれ」と冷たく言われた。


『なんか進展のきっかけ作りなさいよ』
「いや、そんなきっかけバンバン作れたら長い時間フリーじゃないわよ」
『そりゃそうだ。まあ、そんな***に私がチャンスを与えよう!』
「は?なによ」


ふっふとスマフォの向こうで笑っている同僚。どうやら合コンに呼んでくれるみいだ。ドヤ顔をしているんだろうな、と電話越しでも分かる声のトーンで話す同僚につられ話しているうちに少しずつ合コンが楽しみになっていく。


「じゃあ、今週の金曜日勝負かけるわよ!」


同僚と笑いながら電話を切り、次の日の用意を終えベットに入る。合コン楽しみだと思う反面、ポートガスさんの笑顔がチラつく。かと言って自分からご飯に誘う勇気もないし……いや気になってなんかないし!
自分自身に変に言い聞かせてる自分にため息をつきつつ目を閉じ明日に備える事にした。
いつものアラームで目を覚まし、いつものように用意をし会社へ向かおうと玄関を出るとポートガスさんもタイミングよく玄関から現れた。


「おはようございます」と言ってくれたポートガスさんだが、いつもと少し違うような…そんな事を考えつつ挨拶を返す。すると「あの…」とポートガスさんが口を開いた。


「***さんが良かったら今週の金曜日ご飯でも行きませんか…?」
「あ…すいません、その日は予定が……」


折角のポートガスさんの誘いだがここでポートガスさんを優先にすると同僚に何を言われるか分からないしな…。残念な気持ちを押し殺し断ると、ガシっと腕を掴まれた。


「やっぱり合コンに行くんですか?」
「は?え?何で知ってるんですか…」
「当たり前じゃないですか。***さんの行動は完璧に把握してますよ」


そう言うのと同時にここ最近の私の行動を話し出すポートガスさん。それが見事に合っているからポートガスさんが話すにつれどんどん怖くなっていく。一歩、思わず後退りをするとニッコリと笑いこちらに近づいてくる。その笑顔が今までの笑顔と違う。
ただただ怖い。その一言。怖くてその場から離れようにもポートガスさんがしっかりと腕を掴んでいて動けない。


「ずーっと***さんの事見てたんですよ、俺。一目惚れして見てるだけじゃ物足りなくなって***さんの隣に引っ越してきたんですよ。折角これからって時に他の男に取られたら意味ないしな。なんで行かせるつもりねぇから。」


淡々と言うポートガスさんの目はどこか嬉しそうで、けど冷たかった。私が知っているポートガスさんとは全くの別人。冷や汗が止まらない中気になる事が。何故この人は私の行動をこんなにも完璧に分かっているのか…。気になるが怖くて聞けない。


「なんで行動を把握しているのか不思議って顔してんな」


そう言って笑いながら私の頬を撫でてくるポートガスさん。その手が視線のわりに凄く暖かくて驚いていると、いつの間にかポートガスさんの顔が私の耳元まで近づいていた。それに気付いた時「うさぎ」とニヤリと笑いながら言うポートガスさん。それで気が付いた。


“ウサギのぬいぐるみ”


もしかしてと考えるとただでさえ流れていた冷や汗の量が増す。


「あれ実は盗聴、盗撮出来るように機械しこんであるんだけど、全くバレる気配も無いしいい物見れたし良かったぜ?」


そのまま私の耳元で「赤のレースが一番似合ってた」そう言われて思わず胸の前で腕をクロスさせる。盗聴や盗撮が出来ていたという事は、今までの生活も勿論見られていた訳で……
恐ろしくて目に涙が溜まるも「そそられるだけだぜ?」と笑いながら言うポートガスさんが怖くて精一杯の力でポートガスさんの腕を払い走り出す。
ヒールで走りにくいとか周りの目とか関係ない。あの男から一刻も早く逃げないと何をされるか分からない。


けど私の背後から「また会おうぜ?」と笑顔で手を振りながら言うポートガスさんから離れる為全力で走った。はあはあと整わない息も気にしている余裕がない私は、震える指を何とか動かし同僚に電話をかける。電話に出た同僚に今さっきあった事を話すと「直ぐに車で向かうからなるべく人通りの多い所に居て」と言われジッと来るのを待った。
その日はとても仕事が出来る状態でもなく仕事も休み、同僚と不動産へと向かった。
物件なんて選んでいる余裕なんてない直ぐに引っ越せる所を探し2日後、私は引っ越す事にした。引っ越すまでの2日は同僚の部屋に泊めて貰い引越しも同僚と男友達に手伝ってもらった。


ウサギのぬいぐるみは自分が持っていた物も全て捨てた。勿論あの男から貰った物も。怖くてそのぬいぐるみの中身を見る事は出来なかったが、引越しの時にあの男に会わずに引越しが出来た事に満足していた。


また会おうぜ?


この言葉を無理やり忘れ私は逃げるかのように、見慣れた玄関のドアを閉めマンションを出ようとした時管理人さんと会い挨拶だけでもしようと声をかけて後悔した。





- 大丈夫だよね? -




お隣のポートガスくんも昨日引越したのよー。あの子イケメンで目の保養だったんだけど……
え…?それほんとですか……?




(また会おうぜって…大丈夫だよね…)


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