ACE | ナノ

▽ 気持ちを押し殺す



世の中少女漫画みたいに上手くいかないのよ。



「エースくん、お弁当作って来たんだぁ」
「私も作ってきたの!食べて?」
「まじで!?食う食う!」


幼馴染みとケバい女達のやり取りを見ながらケッと言っていると「汚い!!」と誰かに頭を叩かれた。
ま、こんな事をするのは誰かなんてわかってるんだけど。


「ナミ!いったいじゃんか…!!」
「もう少し女って事自覚しなさいよね」
「女?好きな野郎にそう思われなかったら女でもなんでもないのっ!」
「たく、はいはい。朝から酔ってんの?」


呆れ顔のナミを横目にまたエース達を見ていると楽しそうに話している。人の気も知らないで目の前でベタベタしてさ…。


エースと私は幼馴染み。
毎日一緒に居るにつれ、ありきたりだがエースの事が好きになった。いつも側にいれる事が私の自慢だった。エース自身友達思いだが、私には一段と優しくしてくれていた。体調を崩した時も学校を休んでまで看病してくれたり。
もしかしたらエースも私の事が好きなんじゃないか?なんて思った私は中学の卒業式、告白したが見事玉砕。


「***の事は家族同然と思ってるから、そんな風に考えられねぇ」


これがエースの答えだった。
これが少女漫画なら、幼馴染みの関係を壊したくないから敢えて、とかの展開があるがエースの場合はほんとに家族同然と思っているようだった。


だって高校入ってすぐに彼女ができ、それを笑顔で私に報告してきた。一緒の高校を受けてた事に少し後悔しつつ、仮にも告白してきた相手に言うか!?なんて思ったけど変に意識されてないだけマシかなって思った自分の考えの甘さに今、ヘドが出る。


彼女とは別れたものの、次から次へとエースを狙う子達がエースに群がる。その子達にたまに「***はいいよね。幼馴染みだから」なんて言われるけど、私からしたらあんた達のが羨ましいって。だって側にいす過ぎて女と思われてないんだもん。


はあ、とため息をつき次の授業の準備でもしようと机の中を漁っていると背中にドンッと衝撃が。ほのかに甘い匂いがする。この匂いの持ち主を知っている故に背中へ集中がいく。


「***ー、宿題見せてくれよ」
「………たまには自分でしたら?」
「する気にならねぇ!!つーか分からねぇ!」
「じゃあ、たまには他の子にノート見せてもらったら?」
「***のノートが一番きれいで見やすいんだって」


って笑顔で言うエースに今だにときめいてる自分に嫌気がさす。私の想いはエースに届かないのに。
けどエースの笑顔に勝てる訳なく、ノートを渡す。すると嬉しそうな顔をしてノートを写し出すエースを見ながら思った。


エース、あんたが私の事を家族同然と思ってくれてるのは少し嬉しかった。
何度も幼馴染みが出てくる漫画を読んで、何度も「もしかしてこのパターンかな」なんて考えたけど私には全く当てはまらない。なら、あんたの気持ちを壊さないようにこれからも“幼馴染み”をするから。
幼馴染みでもいいから他の子達より少し、特別に想ってよ。







- 気持ちを押し殺す -





ほんとは彼女になりたいよ。
けどエースが望んでいないなら私は気持ちを押し殺すしかないじゃない


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