ACE | ナノ

▽ 5



「***ちゃん!良かったら今晩これ食べて!」
「うわ!おばちゃんのシチュー好物なの!ありがとう!」


私の言葉に嬉しそうに笑い自分の家へと戻るおばちゃん。
私も貰ったばかりのシチューを早速温めようかな、と小さなキッチンへと向かう。


鍋に火をかけながら、ふと「皆元気にしてるかな」なんて考える。自分からこの生活を選んだのに寂しがるなっての……


そう私は今、ある小さな島で暮らしている。
傘下の海賊団から「ある島で海賊団が白ひげの首を狙っている」という情報を貰い1人任務で調べている。


海賊って事を隠して住み始めて約二か月、今の所海賊団らしき人物達は見かけず、いい人ばかりのこの島で暮らしている。
エースとあんな感じで別れた手前、モビーに連絡が入れずらくて電伝虫もクローゼットにしまったままだ。


………やっぱり寝よ。
コンロの火を止めベットへダイブする。
目を閉じると最後に見たエースの怒った顔ばかり思い出すのを、なんとか振り払い眠りにつく事にした。


自分から逃げておいて未練タラタラじゃんか…




ドンドンドンッ!


ドアを叩く音で目が覚める。
目をゴシゴシと擦りながら「はーい…」とドアを開けると仲良くしてくれてるおばちゃんが血相を変えていた


「***ちゃん!急いで逃げな!!海岸の方から海賊が来るよ!!」
「海賊!?どんなのか分かる!?海賊旗とか!」
「そんなの見てる余裕なんてないよ!とりあえず逃げっ…ちょっと何処行くんだい!」
「ごめん!おばちゃん!!先に逃げてて!」


おばちゃんの止める声が聞こえるが海岸へ走る。
この海賊が情報で出てきた奴等ならモビーに連絡いれるべきか……?
けどもしエースが電伝虫に出たら普通に話せるの?


普通に出来る自信がない。



こんな時にでもエースの事を考えるとか、どんだけ惚れてるのよ…。無我夢中で海岸へ向かうと小さいながらも海賊船を見つけた。


「あれか……」


ゾロゾロと海賊達がこちらに向かってきている。
………まあ、頑張ったらどうにかなりそうな人数だな…
護身用にいつも持っている拳銃と、落ちていた鉄の棒を拾い海賊達の元へ歩き出した。


「白ひげの前にこの島を手始めにおとすぞ!」
「こんな島、準備運動にもならないッスね!船長!」
「白ひげも最強って言われてるけど簡単じゃね?」


なんてケラケラと笑う海賊達の1人の頭に鉄の棒を叩きつけた。いきなりの事に驚いてる海賊達に向かって笑いかけてやる。


「この島の事も白ひげの事も…舐めてんじゃないわよ」
「いきなりなんだこのアマァ!!」
「あまりにも馬鹿な事言うもんだから、びっくりしたわー…」
「……舐めた口たたいてるとイタイ目あうぞ…」
「そのまま返してあげる」


私の言葉に明らかに切れた顔で向かってくる海賊達に力一杯、鉄の棒を振りかざした。


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