▽ いつか気付いて
この1年、必死に勉強した。
好きな人と一緒の高校に行きたくて。
それまでの私の人生はその人が側にいつも側に居てくれたから、1年が長くて仕方がなかった。
階段を上り上級生の階へ行き、あの人のクラスへ一目散に走る。周りから「あれ1年だよね?」とか言われてるけど全く気にしない。遠くからでも分かる。長身に癖っ毛。目的の人物に向かって飛び付くように抱き付いた。
「エースっ!!」
「うおっ!***!?」
いきなりの私の抱き付きに少し驚いてるエース。
お構いなしに抱き付いているとエースと話していただろう女の先輩2人に睨まれた。
「エース……誰その子」
「え?ああ、妹の***だよ」
「ふーん、妹ねぇ?」
エースの言葉にあきら様に勝ったという表情で、エースには分からないように私を見て笑う先輩達。別にそんな事くらいで私の心は折れたりしないけど。
そう、私とエースは兄妹だ。
そう言っても親から捨てられた私をガープさんが引き取ってくれて義兄妹ってとこ。エースと弟のルフィが、親に捨てられ笑わなくなり人間不信だった私に優しく接してくれたおかげで、よく笑うようになったらしい。
その時、ルフィのように無邪気に接してくるのではなく相手の事を考えながらさり気無く接してくれるエースにすぐ惚れた。
お兄ちゃんだからダメだとは思ったし、いっその事ほんとに血が繋がってたら諦めついたのかな、なんて悩んだりもした。けど好きという気持ちは無くなる事もなく大きくなるばかり。
兄妹と知って、じゃあ家でも会えるじゃん?って思った人も居ると思う。けどエースは高校生になってからバイトや……こーゆー女の先輩とかとよく遊ぶようになってきた。会うタイミングも減ってきて絶対高校は同じ所に入って、こんな女からエースを遠ざけると決めていた。
「***、予鈴鳴ってるから自分の教室戻れよ?」
「えーじゃあ、今日一緒に帰ろ!?」
「わかったよ。ほれ、戻れ戻れ」
私の頭を撫でながらそう言ってくれるエースに手をブンブンと振りながら教室へ戻る。
ブラコンだって周りから言われても構わない。エースから鬱陶しく思われたとしても私をなるべく見て欲しい。まあ、私の我が儘だけどね。
お昼休みに購買でパンを買おうと向かっているとエースと一緒に居た先輩達とバッタリ会った。
うっわ……最悪。なんて思っていると向こうもそう思ってるのがすぐに分かった。
「あーエースの妹さんだー」
「……どうも」
「お兄ちゃんの事大好きなんだねぇ?」
あきらかに小馬鹿にしたような言い方。慣れてるからいいけど。
「好きですけど?」
「その歳でブラコンとかウケるー」
「ほんとー!兄離れしなよ」
なんて笑って言ってくるもんだから「うっせぇよ」と返すと顔付きがガラリと変わった。
「あ?先輩に対してなにその態度」
「おばさんだから耳も遠いんですかー?うるせぇつったんだよ」
私の言葉に顔を真っ赤にさせて手を振り上げてる先輩の腕が誰かによって止められた。
「何やってんだよ、お前等……」
少し呆れ顔のエースが先輩の腕を掴んでいた。
エースを見た瞬間、先輩達がすぐに半泣きみたいな顔に変わった。
「エースぅ!エースの妹が意地悪してきくるー」
「エースからも何か言ってやってよ!」
「………悪りぃが***は訳もなく誰かにそんな事しねぇんだよ。」
な?***って笑顔で私の頭をポンポンと撫でてくれるエースを見て嬉しくてニヤけるのを我慢する。
「***の好きなプリン購買でラスイチ残ってたから買ってやっといたから食うか?」
「ほんと!!?食べるっ!!」
「じゃぁ、中庭行こうぜ?いい場所あんだよ!まあ、お前等も俺の妹あんま苛めんなよ」
なんて言ってくれてるエースの後ろから顔を出して、あっかんべーってしてるのは秘密だけど。
別に周りからブラコンって言われようが気にしない。
エースが私の事を少しでも意識してくれたらそれでいいの。
- いつか気付いて -
何年かかろうが構わない。
いつか私の気持ちを気付いて。
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