▽ 負けず嫌い
プルプルプル、プルプルプル、プルプルプル……
何度も鳴らしても電話の相手は出る気配がない。
や、やべぇ……!!ぜってぇ***の野郎怒ってやがる……
事の発端は2日前、会社の付き合い…つってもサッチと後輩の3人で飲みに行った。「いい店見つけた」とサッチが連れてってくれた居酒屋は普通の居酒屋とは少し違った。
そう“ビキニ居酒屋”だった。
接客をしてくれるお姉ちゃん達がビキニ。勿論お触りはなしだが、皆巨乳が多くていつも以上に盛り上がった。
酒も飲んでたってのもあるが、テンション上がって何か無性に***の声が聞きたくなって電話した。そこまでは良かったんだよ。けどいつも以上に盛り上がったおかげで言っちまったんだよ。
「俺今ビキニ居酒屋つー所にサッチ達と飲みに来てるんだけどよぉー!やべぇ!巨乳のお姉ちゃんばっかなんだぜ?」と。
普段の***はサッパリしていてヤキモチ妬いたりするタイプじゃねぇから少し自慢気に話した俺。***の事だ。
「胸ばっかり見てるんでしょ?」と冗談混じりに返してくるかと思ったら「ふーん……切るよ?」と予想外の返事。焦りに焦った俺は「ちょ、え?待っ」と情けない声を出したが途中でブチリと切られた。
それから何度も電話をかけるが一向に出る気配がない。
やべぇ…これぜってぇやらかした……。
長く付き合っているがこんな事は初めてだ。だから余計焦って仕方がねぇ。
今日もサッチに飲みに誘われたが、そんな気分になれる訳でもなく仕事を終わらせさっさと帰った。
はあ、とため息を吐きながら鍵を鞄から探す。
ビキニ居酒屋が原因で別れたりしねぇよな…?
このままだとやべぇんじゃねぇかとマイナスな方へと考えてしまい、はあ、ともう一度ため息を吐きドアを開けた。
「お、お帰りなさいませ!ご主人様っ!」
「……………………」
いや、***が俺の部屋に居るのは不思議な事じゃねぇ。合鍵渡してるし。不思議に…ってか目を疑ったのは***の格好だ。フリルが多めのミニスカートのメイド服に、普段より濃いめの化粧、極め付けは猫耳を付けた***が恥ずかしそうに俺にそう言った。
「ご、ごめん。着替えてくる」
何も言わねぇ俺に気まずくなったのか着替えようと部屋の奥へと行こうとする***の腕を掴む。
「ちょ、え?何して….んだ?」
思わず足の爪先から頭の上までじっくり見ると……***の普段の格好では考えられないくれぇのミニ。しかもフリル。ゴクリと喉を鳴らすと***が「やっぱ無理!キャラじゃないしっ!」と焦りだした。
「い、いいじゃねぇか!もう少しそのままでいろよ!」
「あ、う、そのっ……」
「…….てか、怒ってねぇのか?」
「え?何で?」
「いや、電話出ねぇしよ…….」
「ああ!ビックリさせようと思ったのと勇気を振り絞ろうとしてて電話出れなかった、ごめんね?」
「ならいいけどよ。……何でメイド?」
俺の言葉に***の顔がみるみる赤くなっていく。少し沈黙があった後***が俺を睨むように見てくるが、猫耳効果のおかげで可愛いだけだが。
「エースがビキニのお姉さんにテンション上がってたみたいだから……何か負けたくなくて」
なんて照れながら言う***が可愛いくて思わずスーツのままだとか、焦ってたとか忘れてベットまで連れて行ってしまった。
- 負けず嫌い -
つーかほんと何でメイド?
………サッチにビキニ居酒屋ほんとか聞いた時に「エースはメイドが好きだぜ」って言ってたからサッチの言う通りに揃えた。……もう絶対着ない……(いい歳した奴が猫耳メイド服って痛すぎる…)
ふーん、サッチがね………(たまにはいい事するな、サッチ…)
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