▽ 嫉妬も一種の愛情です
「おい、マルコと何喋ってたんだよ」
サッチ隊長の特製ケーキを頬張っているとエース隊長が怖い顔で私に話しかけてきた。
「え……対した事じゃないですけど…」
「対した事じゃねぇのに頭撫でられるのか」
エース隊長の言葉にあぁ、と気が付く。
珍しくマルコ隊長に誉められたんだっけ。
あのマルコ隊長に誉められるとか今日はラッキーデーだな、なんて考えているとエース隊長の怒った顔が目に入った。
やば、怒ってる……
「妹の成長でも認めてくれっ………っ、」
何か言わないと、と思って話し出した時、首筋に痛みが走った。
「***、お前は俺のだろ?他の野郎にヘラヘラすんじゃねぇ」
そう言ってナースさん達に呼ばれ、ナースさん達の元へドカドカと歩いていくエース隊長。“俺の”ってただの隊員ってだけじゃないですか。
そう思いつつトイレで首筋を見ると少し赤くなっていた。
俗に言うキスマーク。エース隊長が俺のという証で私によく付ける。その意味はカップルのような甘い意味ではなく、多分自分の玩具が他の人に取られるのが面白くないとかそんな感じだと思う。
「自分はナースさんと仲良くしてくる癖に」
キスマークを見ながらボソリと言うが本音を言うと少し期待している。
“もしかしたら自分はエース隊長にとって特別なのではないか”と。
そうでなきゃこんな事しないよね?……多分
そんな淡い期待を持たながらトイレから出ようとすると、よくエース隊長と一緒に居るナースさん達と鉢合わせになった。
明らかに私を見て嫌そうな顔をするナースさん達に気まずくなり、ナースさん達の横を通り過ぎようとした時わざとらしくナースさん達が話し始めた。
「見てぇ、エース隊長にキスマーク付けて貰ったの」
「えー嘘ー!いいなあ!」
ナースさんの言葉に思わず振り返ると、確かに首元にキスマークが。エース隊長……誰にでも付けるんだ…ショックを受けているとナースさんの少し勝ち誇った顔と目が合い、何だかショックを受けているのを知られて恥ずかしくて、そそくさとトイレから出た。
そっか……そうだよね……エース隊長モテるもん。深い意味なんてキスマークにないよね…
自分でも分かっていた筈なのに少なからず期待していた自分が恥ずかしい…
涙が出そうなのをゴシゴシと拭き自分の部屋にでも戻ろうとした時、後ろから何かに突撃された。
「***ちゃーん!聞きたい事があんだけどーって、どうした?」
「…………サッチ隊長…ギリギリセクハラですよ…」
「まあまあ、これくらい気にしない!気にしない!」
そう言ってギューギューと抱き付いてくるサッチ隊長に少し呆れながらも「聞きたい事ってなんですか?」と聞き返したの同時に私を呼ぶ怒鳴り声が重なった。
「エ、エース隊長…?」
声をする方を見るとそれはもう鬼のような顔をしたエース隊長がこちらに向かって来ていた。
その様子があまりにも怖くて、思わずサッチ隊長にしがみ付くとエース隊長の眉間の皺が更に寄り、凄い早さで私とサッチ隊長の元まで来たエース隊長。
「サッチ……***に何してんだよ」
「は?何もしてねぇって!ね!***ちゃん!」
「は、はいっ!!」
エース隊長の迫力にサッチ隊長とビクビクしながら答えると舌打ちをして私の腕を力強く引っ張っていくエース隊長。
「あのっ…エース隊長…??」
何も言わず歩き続けるエース隊長に恐る恐る声をかけるものの返事が来ない。
お、怒ってる…!絶対怒ってる…!!
冷や汗が止まらなくなって来た時、エース隊長の足も止まった。止まった先はエース隊長の部屋の前で、ドアが開いたかと思うとベットへと放り投げられた。顔からベットへ落ちた為「ぶへ」と可愛いくない声が出たけど、それどころじゃない。
へっ!?なに!!?
状況について行けず、体を起こそうとした時にエース隊長が私を覆い被さっているのに気が付いた。
「他の野郎にヘラヘラすんなつっただろ」
「ヘッヘラヘラしてないですよ…?」
「あ?嘘つけ」
ひぃぃぃ!エース隊長が物凄く怒ってる!
眉間の皺がより一層深くなり何か弁解しないと!と口を開こうとした時、エース隊長のドアップが。
「エ、エース隊長…?あの…近いです…」
「近くねぇよ。んな事より俺の言う事気かねぇ奴にはお仕置きが必要だな」
“お仕置き”と言う言葉に体がビクッと動く。
だって…この前他のクルーがエース隊長のお仕置きを受けた。それは山積みになった書類を1日で終わらせるという地獄のようなお仕置きを。
「そ、それだけは勘弁して下さいっ!私書類整理とか苦手なっ…」
あれ?何で私喋れてないの?
言葉を発しようとしても出来ない理由はすぐに分かった。だってエース隊長にキスされていたから。
「エ、ンッ…エースたいっ…」
「うっせぇ。喋んな」
エース隊長が角度を変える時に、何とか出た言葉もエース隊長の一言で消された。抵抗しようとすればする程エース隊長のキスが激しくなってる気が…
「はあ…はあ…なんっ……何で…こんな事っ」
長かったのか短かったのかなんて分からない。
けどエース隊長が離れた隙に精一杯の力を出しエース隊長を押し退けた。なかなか息が整わない私にエース隊長は平然と「お前ぇが他の野郎にヘラヘラしてっからだろ」と。
「し、してないですよっ」
「してんだろうがっ!マルコや他の野郎と話す時ヘラヘラ笑いやがって…しかもサッチには抱き付かれてやがるし」
「訳もなくムスッとしながら話せないですよっ!」
「うっせぇ!これからはムスッとしながら話せ!」
「その俺様発言なんなんですかっ!?」
「お前ぇは俺のだろっ!」
エース隊長の言葉に思わず動きが止まってしまった。
「俺の?…エース隊長の俺のって何なんですか…?」
「それは……そのまんまの意味だろ」
「分かんないですよ!玩具を取られたくないとかですか?そんなのでキスマーク付けたりするんですか!?」
「んな事ねぇよ!!……***を他の奴に渡したくねぇだけだ」
私を真っ直ぐ見て言うエース隊長。
そんなの信じれませんよ……ナースさんにもしてたじゃないですか……
口をグッと噛みしめるものの涙が溢れてくる。そんな私の涙をエース隊長が優しく拭いてくれた。
「好きなんだよ……***の事が…好き過ぎて独り占めしたくなるんだよ…。」
「う、嘘…」
「嘘じゃねぇよ。気持ち伝える勇気はねぇ、けど***が他の野郎と話してるだけですげぇ腹立つ。だから他の野郎が近付けねぇようにキスマーク付けたりした」
ムスッとしていたエース隊長が申し訳なさそうに言う。
そんなエース隊長を見ているとナースさんの事とかどうでも思えてきて少し遠慮気味にエース隊長に抱き付いた。
「私もエース隊長が好きです…」
聞こえるか聞こえないかの声の大きさだったけど、エース隊長にはバッチリ聞こえてたみたいで、また押し倒されていた。
「嘘でしたとか無しだからな」
私の返事なんか聞かずにエース隊長が、さっきよりも激しいキスをしてきたけど私なりに頑張って答えた。
- 嫉妬も一種の愛情です -
あ、ルルちゃーん!昨日はありがとうねぇ!vV
勝手にキスマーク付けないで下さいよ、サッチ隊長(まあ、少しは役にたったけど。エース隊長全くあの子のせいで振り向いてくれなかったんだもの。少しは嫌がらせさせてよね…)
あの、エース隊長……ナースさんにもキスマーク付けました……?
は?何で***以外の奴に付けなきゃいけねぇんだよ、気持ち悪ぃ。***以外の女に全く魅力とか感じねぇし、***しか可愛いとも思えねぇ
そ、そうですか……(や、やばい…にやける)
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5万打企画の“ヒロイン片思い設定の切甘”のボツ小説でした。
ボツというか途中で挫折したのですが、今回は書き切ろうとした結果長くなってすいません(汗)
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