▽ エースが逆トリップ
目の前には正座をしている半裸の男。
そしてその男の前では腕を組み、仁王立ちをしている私。
「ほんとすいません……」
「あんたのせいでご近所さんに誤解されるでしょ」
私の言葉に小さくなる男もとい、エース。
この男の出会いは突然で不思議なものだった。
いつも通り大学から帰り、ご飯を作っているとお風呂からドンッと大きな音が。鍋のふたとお玉を持って恐る恐る見てみると、半裸の男が浴槽にハマって居た。
ち、痴漢!?
思わず叫ぶ私にビックリした男が私の口を手でふさいできた。襲われる…グッと目を瞑ると手が離れた。
「いきなりで悪ぃんだけど、ここどこだ?」
エースのその言葉に力が抜け「日本ですけど?」と弱々しく答えると「日本?」と首を傾げた。
それからは、ここの説明とエースの世界とやらを教えてもらった。
するといきなり靴を脱ぎ出し、「あ、土足ですいません。当分お世話になります」と改まって挨拶するもんだから「あ、分かりました」とつい答えてしまい始まった、可笑しな同居生活。
そして何故冒頭でエースが正座をして怒られているかと言うと、私がバイトから家に帰ってきてご近所さんと少し話していた時、ガチャリとドアが開いた。
「***!おかえり!今日は遅かったな!」
凄くいい笑顔で言ってくれるエース。
けど、ご近所さんと思わず「え」と声が揃った。
だって上半身裸で平然とこちらに来るエース。ただでさえ、それにビックリしているのに腕や背中には大きな刺青。ご近所さんがそそくさと「そ、それじゃあ…」と逃げるように私の前から姿を消して、この状況となった。
「半裸ってだけで何言われるか分からないんだから!それにその大きな刺青は隠してって言ったじゃん!!」
「す、すいません…けどこの背中の刺青には誇り持ってんだ…!」
少し申し訳なさそうに言うエース。
そんな事は分かっている。エースの世界を教えて貰った時に出てきた“親父”のマークだと。話を聞いただけで、どれほどその人や仲間が好きなのかも。
「けどね、エース……こっちの世界では、下手したら上半身裸は露出狂扱いされて捕まるかも知れないの……」
はあ、と少しため息混じりに言うとエースが「だけどよ、」と話始めた。
「窓から***が帰ってくるのが見えて嬉しくてついよ…」
大型犬がシュンとしている………!!
思わずそう思ってしまうほど可愛らしく落ち込むエースに「今回だけだよ」と言うと、それはもう嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
「ありがとうな!***っ!」
そう言って抱き付いてくるエースの頭を思わず撫でてしまった。
もしエースが逆トリップしたきた場合
→ 可愛くて甘やかしそう
俺、***に拾われて良かったー!(ニカッ)
………それは良かったね(あー、エースの笑顔に弱いわ、私…)
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