ACE | ナノ

▽ 5



あの人が運ばれてからは騒ぎはすぐ静かになった。
弟のモンキー・D・ルフィも海軍本部へ向かったみたいだった。


海軍本部の動きはインペルダウンで映像を見ていた。あの人が海賊王の息子だとセンゴクさんが言った時は全員言葉を失った。


だからあの時、ガープさんと難しい話をしてたのか……納得と同時に後悔をした。


そうあの人はあの時、父親を嫌う発言をしていた。
海賊王………海賊なら誰もが憧れる存在だろう。けど一般市民や海軍にとっては最大の恐怖。海賊王である、ゴールド・ロジャーが処刑された後関係者は次々と処刑されていった。


私も幼い頃によく聞いた“ロジャーはクズだ”や“最悪の奴”などの言葉。それはロジャーの関係を持った人が次々と処刑されていくにつれて増えていった。


もしかしたらあの人は悩んでいたのではないかと。自分の父親を悪く言われる悲しみ。けど、その父親のせいで誰からも愛されてなかったとしたら………?それを誰にも言えなかったとしたら……?


“産まれてきた事を反省してれば”


私の言葉はあの人にとって一番傷付く言葉だったのではないかと。それに気が付いた時には泣き崩れてしまった。
あんな酷い事を言った私に、あの人は笑顔で話しかけてくれた。酷い態度を取っても、私が牢獄へ姿を見せるたびに。


最後の最後で兄の敵とは違う気持ちが出来た事に気が付いた。けど、気が付いた時にはあの人は手の届かない場所に行ってしまった。


あの人が倒れていく映像を静かに涙を流して見ていた。
最後は笑って倒れていったあの人。


ねぇ、貴方は最期に少しは私の事を想ってくれた?
そんな今更な我が儘を言ったら貴方は笑うだろか。







白ひげとの戦争も終わり、海軍本部もインペルダウンも復興へと向かっていた。
いつも通りの日常。だが、心がポッカリと穴が開いたような感覚。


けどそんな事を誰かに知られたくないので平然とした様子で仕事をしていた。するとある日、ガープさんに呼ばれた。


「最近頑張っとるようじゃな!」
「……………インペルダウンも大分やられたもので…」
「えらい事をしてくれたもんじゃわ!………全く」


いつも通り豪快に笑うガープさんだが、やはりいつもと少し違う。それもそうか………孫同然に可愛がっていたあの人を失ったのだから。


「***……兄を傷付けたエースを嫌っていたお前さんにこんな事を言うのもあれだが……」
「なんです?」
「あいつは人に愛される事も愛する事も、怖がっていた奴じゃ。……そりゃあ、もうガキの頃は暴れるはで大変なガキじゃったわ!」


そう笑って言うガープさんに少し釣られて笑う。
けどすぐに真面目な顔をしたガープさん


「じゃがな、あいつと牢獄で話した時、最後にこんな事を言ったんじゃ。“初めて愛するってのを分かったんだ”とな」
「……………………………」
「***、お前さんの事じゃよ……その後にお前さんの事ばかり話おったわい」
「……そう…なんですか……」
「ああ…じゃから少しでいい…あいつの事を許してやってくれんか?」
「…………ガープさん、実わ……」




貴方と出会ってこんな悲しい気持ちを知った。
けど貴方に出会って胸が暖かくなる気持ちになれた。
貴方が灯してくれたこの気持ち冷める気配がないの。どうしてくれるの?





- 胸に灯をともす -




ガープさん、実は海兵の私の言葉じゃないですが、あの人に惚れてしまったんです。今、許せないのは、この気持ちの責任を取らずに遠くに行ってしまった事ですよ………

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