▽ 4
「騒ぎは大きくなるばかりだ。処刑人を海軍本部へ送る。***、至急準備をしろ」
「はい、分かりました。」
マゼランさんに言われ部下を何人か連れ、奴がいる牢獄へと向かう。いつも通りに喋りかけてくる奴に冷たく言った。
「今からあんたを海軍本部へ送る準備をするわ」
「………………そうか……とうとう***ともお別れか」
もうすぐで処刑だというのに、ほんと呑気な奴だ。
牢獄の鍵を開け、奴の体を固定していた鎖の鍵を開け、足だけは歩きやすいようにした。
「さっさと立って歩きなさい」
奴を縛る鎖を持ち、立つように指示を出す。すると目の前からいきなり奴が消えた。
「***、すまねぇな」
そんな言葉が聞こえたかと思うと私の部下達が次々と倒れていく。そう、奴が手に手錠をかけられたままなのに暴れている。
「待ってろよ……ルフィ……」
小さな声だが奴が言うのが聞こえた。そうか、弟を助けに行こうとしているのか……
弟思い奴のしそうな事だ。けど、このインペルダウンでは“脱獄”なんて許されない。
「ポートガス・D・エース!大人しくしなさい!」
「………出来れば***には怪我をさせたくねぇんだが…」
「……………………何言っているの。私は海軍、あんたは海賊。命をかけてあんたを海軍本部にっ………」
言っている途中で視界がグリンとかわった。
その事に気が付いた時には、奴に倒されていた。目の前には少し悲しげな顔をする奴。
「***……痛かったか?わりぃ……ほんと…もっと違う形でお前とは出会いたかった」
そう言って私の頬に軽くキスをしてきた。
…………海賊の癖に……そんな優しいキスしないで………そんな悲しげな顔をしないで………
「エ、エースっ……!」
思わず奴の名前を呼んでしまった。立場なんて関係ない、奴が海賊なんて関係ない………ただ、ちゃんと奴を見て話したくなった。
けどそんな叫びもマゼランさんの登場で消えてしまった。
「………***、大丈夫か?」
「………………はい…すいません」
「気にするな。こいつを縛り直せ。船へ乗せる」
マゼランさんに捕まり悔しそうな顔をする奴と目があった。するといつもみたいに笑い口をパクパク動かした。
“ 好 き だ ”
言い終わると同時に奴は運ばれていった。
私は何も言い返す事は出来ず、その場に座り込んでしまった。
「***さん!?どうされました!?」
「………なにもないわ」
私も……エースとは違う形で出会いたかったって言うと貴方は何て返事をしてくれた?
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