大切な人を守る為に身体を張ってて戦うのには抵抗はない。怪我だって怖くない。だけどただ1つ、これだけは嫌だった。
「たく、毎度毎度倒れやがって」
「………ごめん」
荒々しく私の枕元に座り込んだエースの表情が、少し怒っているのは直ぐに分かり目元まで毛布を被る。少しばかりの抵抗も彼によって簡単に無駄なモノに変わる。
「額のタオルかえっぞ」
「………はい」
お怒りモードのエースに勝てる訳もなく大人しくエースのされるがままにしていると、微温くなっていたタオルが冷たいものに変わったおかげで心地いい。ふぅと小さく息を吐くとエースと目があった。先程とは違い少し優しい顔に戻っていた。
私の頬を優しく撫でてくれるエース。その手に安心を感じウトウトとし出した時、大きな音と共に船が大きく動いた。その衝撃で思わず起き上がる。
「今の音なに……??」
「あー…敵船が来てんだよ、今。まあ、そんな対した事ねぇみてぇだけど」
「……今日って私達隊、討伐係だったよね!?」
「そうだけどまあ、あいつ等だけでも大丈夫だろ」
「皆戦ってるのに呑気に寝てられないよ!私も直ぐにっ…!」
起き上がった筈の自分の体がまたベットへと逆戻りをしていた。エースのアップにしっかりと固定されてた両手首。さっきまで優しい顔だったエースの表情がまた怖い顔に戻っていた。勿論エースが押さえているとなると、腕を動かしてもピクリともしない。そんな抵抗もエースが怒る原因になったらしく「おめぇ、」と低い声が。
「状況分かって言ってんのか?」
「……エースに腕掴まれてる?」
「ちげーよ。全く分かってねぇうえに疑問形で返すな馬鹿野郎」
エースの暴言に思わずムッとすると目の前で盛大にため息をつかれた。
「お前が戦う度に寝込まれるこっちの身にもなれよ。」
「……体力つけるもん…討伐係サボってるうえに隊長も副隊長も居ないって他のクルー達に示しがつかないもん……」
「お前は自分んとこの隊員達信じれねぇのか。」
「で、でもっ……!!」
なかなか食い下がらない私にイラついたのか、はあーとまた盛大にため息を付き私の体からエースが離れた。そう思ったのも束の間だった。ドンという重い音と共にまたエースのドアップ。先程までと違うのが、エースの表情だ。見下した様な視線。片手で私の両腕を掴んでいるが、先程より遥かに力は強い。
「***、お前体力付けたいんだよな。俺が手伝ってやるよ。」
耳元で言うエース。だがいつもの明るい声ではない。低い…男の人の声。少し怖くなり思わず怯む。それを見張らかってか、エースの大きな手が私の服の中へ入ってくる。
頬にチュッと軽いリップ音と共に、スーっとエースの手がお腹の当たりから上へと上がってくるが私の体に触れるか触れないかの、もどかしい手つきで触ってくる。いっその事思いっきり触ってくれたらいいのに、一向に触ってくれない。
「どうした?顔強ばってんぞ。」
「だって…!ちょっ……ん、」
「体力つけてぇんだろ?運動がてらヤレばいいだろ。」
「なん…で、そういう考えになるっ…のよ!」
エースの手が胸の一番感じる所に触れそうになった時、手が止まった。良かったような、続きを……して欲しかったような複雑な気持ちが出来た。そんな私を見透かしたような目で見てくるエース。先程は気まぐれのようなキスも、確実に私が感じるポイントへと変わってきた。鎖骨、首、耳といやらしい音をたてながら上へと上がってくる。耳を執念にキスをしてきてくる。ダイレクトにリップ音が体とういか脳へ響く。
その間もエースの手の動きは止まらない。手つきとリップ音で頭がクラクラしていると、エースのドアップと共に唇に感触が。このまま最後までするのかな、そう思っていたら満面の笑みが。
「たく、反省したか?」
「………へ?」
「言うこと聞かねぇからお仕置きがてらしたんだけど……なに?期待したか??」
「な、そんな事ないし!!」
ふーんと言ってはいるものの、確実に私の本心を分かってるみたいでニヤニヤしている。どうしたものかと考えていると、エースがおもむろに立ち上がり毛布をかけてくれた。
「ま、大人しく寝てろ。お前今日誕生日だろ?夜には***の誕生日祝う宴するみてぇだからよ。また時間になったら呼びに来るから、大人しくしとけよ」
荒々しく頭を撫で、部屋を出て行ったエース。その姿を見て、ふぅと小さなため息を付き目を閉じる。薄れゆく意識の中で宴をしてくれるって言うなら大人しくしていないと、皆にも悪い。けど体力はつけないとな……。エースの言う通りだ。討伐の度に倒れてたらいい迷惑だと思いつつ眠りについた。
「……ぃ!」
煩いなあ……もう少し眠らせてくれてもいいじゃんか………
「おい!***!起きろ!!」
「うわっ!!エース!?」
「やっと起きたか。宴の準備できたぜ。早く行こうぜ?」
渋々目を開けるとエースがすでに居て、手を差し伸べられ、その手を取ると荒々しく引っ張られる。一応私に気遣ってくれているのか早歩きだが、エースと私じゃやはり差がある。転けそうになるのを何とか頑張っていると、目的地に着いたのか急に止まるものだからエースの背中に突っ込んでしまった。鼻を擦り、エースの背中の後ろから覗いてみるとパンパンっと大きな音が鳴り響く。
「「「おめでとうー!!!」」」
大きな音の正体がクラッカーと分かった瞬間、クルー達が駆け寄ってくる。それぞれプレゼントらしき物を持ってきてくれる。
「副隊長!おめでとうございます!」
「……ありがとう…ごめんね……頼りない副隊長で…」
「何言ってんスか!副隊長しか隊長を上手く扱えないんですよ!!」
「はは……確かに」
「***、プレゼント」
「うわあ。ありがとうございます。流石イゾウ隊長ですね…女を分かってるプレゼントですね…」
「***ちゃん、ケーキ大きいの作ったからねー!!」
「わあー!私二段ケーキ初めて見ました!!」
次々と寄せられるプレゼントに少し困っていると後ろに体を引っ張られ、後ろへとバランスを崩す。ポスリと軽い音共に何かに体が支えられる。上を見てみると、その何かがエースだと分かった。
「おめぇ等、一応これも体調崩してたんだからあんま***に無理させんな」
「何言ってんだよ、***ちゃんを皆に取られて拗ねてんじゃねぇよ」
「そんなんじゃねぇよっ!!」
エースとサッチ隊長のやり取りを見て、一旦皆が離れてくれた。それぞれが座ったのを見張らかってマルコ隊長の声で「乾杯」と大勢の声がモビーに響いた。
私のちびりちびり飲んでいてもクルー達がプレゼントを渡しに来てくれる。勿論、こんなにプレゼント貰う事なんて初めてだったので嬉しくて少しづつだったお酒のペースも早くなる。もう一杯飲もうと目の前にある酒瓶に手を伸ばそうとした時、エースの手がそれを阻止した。
「おめぇも少しは考えて飲め」
「だって嬉しくて…」
「たく、あんなー……」
エースのため息を零した時、モビーがグラリと大きく揺れた。それと同時に大砲の音が今度は鳴り響いた。カンカンカンと奇襲を知らせる鐘が鳴り宴ムードが一変、皆戦闘モードになっていた。
折角の皆のお祝いムードを壊されただけで少しイラついたのに、エースの「***は隠れてろよ」の一言で完璧に私の何かが切れた。
「私だって副隊長のプライドがあるの!!」
エースの手を振り払い、大砲の音が一番大きい方向へ足を進める。敵船を見つけ大きく両手を上へ広げ、敵船目掛けて両手を振り下げる。私の後方から大きな風が敵船目掛けて吹き、敵船が大きく傾く。それに続き今度はそのまま両手を振り上げる。グラグラと揺れる敵船に「後一発かな、」とまた手を振り上げようとすると見覚えのある炎が敵船目掛けて飛んでいく。
簡単に燃え上がっていく敵船を見て力が抜ける。勿論、いい意味ではなく嫌な意味で。そんな事をお構いなしで「いい感じにキャンプファイヤーみてぇでいいな」とか言うエースに嫌味がちに「そうだねっ!」と言うとまた、乱暴に頭を撫でられる。
「ばーか。病み上がりの彼女に無理はさせたくねぇだろ。しかも毎回悪魔の実の能力使って倒れてんだしよ」
それを言われると何も言えず、黙り込む私を見て笑うエース。敵船の残骸を隊員達に任せ、エースにまた引かれるまま甲板へと向かい、先程座っていた所に座らされた。先程と違うのは、私が座っていた所の横に大きなくまのヌイグルミが置いてあった。
「俺からのプレゼント!***くま好きだろ??」
「いや……好きだけど…いい歳してこれは…」
それ以上は何も言えなかった。エースの完全な好意のうえ、満面の笑み+ドヤ顔。少し顔が引き攣りながらも「あ、ありがとう」と言うと嬉しそうに笑っている彼を見て私も釣られて笑った。
- 何とも言えない -
……エースお前なあ…女に…しかもまあまあ歳いってる女にヌイグルミって…
ちょ、イゾウ隊長!まあまあってなんですか!!
***……気に入らなかったか………??
いや!?そんな事ないよ!!
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