15万打感謝企画 | ナノ
 
ある空き部屋で1人隠れながらひと縫いひと縫い、丁寧に糸を生地に滑らしていく。生地と生地が綺麗に糸で繋がれていくを見て思わず鼻歌が溢れる。そう、ひと縫いづつ縫上げていく度に想いが溢れそうになっていく。

「………何気持ち悪い顔してるのサボくん」
「のお!!いきなり背後に立つんじゃねぇよ!!」
「スルーしたかったけど、サボくんがあまりにもひどい顔でニヤケてたからつい」

一線引いたような表情で俺を見てくるコアラを横目に先程の続きをする。後少しで完成する。俺の想い人に似合いそうな………

「十二単!!!」
「……何で?」

不器用ながらも玉結びをし、めいいっぱい広げると歪ながらも形ににはなっていて安心する。これを***が着たら……ワノ国の女よりも綺麗になってしまうな、おい!!
ふふと笑っていると、冷たい視線を感じ振り返るとまだコアラがいた。先程以上に一線引いている。

「サボくん……色々キャラ崩壊しててヤバイよ…」
「うるせー…今日は***の誕生日がなんだから仕方がないだろ」
「え……サボくんもしかして***ちゃんにそれ着せるつもりなの?今夏島なのに!?」
「夏島なのは想定外だったが、ワノ国では***の誕生日がひな祭りって行事の日らしいからさ!折角だからプレゼントはこの十二単にしてみようかなってさ」
「………それ軽い嫌がらせだよ」
「え、嘘」
「ほんと」

コアラと俺の間に気まずい空気が流れるが作りきった為、出来れば***に着て欲しいしなにより***とセットで俺も「まさかサボくんそれ、***ちゃんと一緒に着るつもりなの!?」……俺の説明より先にコアラが言ったが、実は自分の服もちゃっかり作っていた。ざっと言ってお雛様とお内裏様って姫と王子みてぇなもんだろ?俺と***にぴったりじゃねぇか。だが問題が1つ。

「てかサボくんどうやって***ちゃんにそれ渡すつもり?」
「………確かコアラ…ステーキ好きだったよな」
「後、今日のデザートと明日明後日の分フルーツもね?」
「……今日のプリンは見逃してくれねぇか…?」
「ダーメ。それともなに?サボくんは***ちゃんよりプリンなの?」

そう言われると何も言えねぇし、なによりプリンで***の誕生日が祝えるならなによりだ。何も言わねぇ俺がその案に納得したのを分かったコアラが今度は鼻歌を歌いながら、十二単を抱えながら恐く***が居るであろう甲板へと足を進めていた。最後に目があうと「サボくんはそれ着てスタンバイしてて!また呼ぶから!」と言ってスキップして俺の前から消えていった。

……まあ、コアラは出来る奴だし信じてもいいよな。***とも仲がいいから誕生日自体はコアラも祝いたいだろうしな…。コアラを信じるとするか…。と、とりあえず髪の毛でも整えて準備だけでもしておくか…。

そう考え、重い腰を上げ準備をし終わって約2時間が経とうとしていた。流石に苛々して来て、貧乏ゆすりが激しくなっていく。だがコアラが待っとけと言ったから動く訳にもいかねぇしな…***が絡んでいるから尚更。どうしたものか悩んでいると呑気な声が俺を呼んだ。

「サボくんお待たせ」
「本当にな。で、その……***は……」

可愛げも全くないニヤケた面で俺を手招きするコアラの後に続き歩いていくと、食堂の前でコアラの足が止まりニヤケ面の酷さがました。今度はこっちが一線引いた表情をしていると食堂のドアを勢いよく開いたかと思うとそこにはイワさんからドラゴンさんまで船員皆が集まっていた。その光景に少し困惑していると、ある事に気が付いた。

あんな歪な縫い方で作られた十二単を着て、いつもとはまた違う化粧を施している***が食堂の奥で立っていた。思わず見とれていると***と目が合い、慣れない格好をしているのに駆け寄って来る。いつものように走る事が出来ず、ちょこちょこと走ってくる彼女を見て微笑ましく思っていと、服につまずいた彼女が倒れそうになる。支えようと駆け出すものの俺自身慣れない服を着ている為、***と同じように服につまずいてしまう。

「2人共あぶっ…!」

コアラの声に俺と***の額同士がぶつかる鈍い音と、その場にいた皆の「あーあ」と言う声が綺麗に重なった。***は大丈夫かと心配になり、額の痛みを我慢しながら視線を上げると***も心配そうにこちらを見ていた。
ただでさえ普段から下がり気味の眉がより下がり、焦っているのが直ぐに分かった。焦っている***を見て思わずプ、と声を漏らすと、さっきまで下がっていた眉が上がり口元が少し膨れた。

「なに人の顔見て笑ってるのよ…」

額が赤いままそう呟く彼女が可愛くて、ああ自分のものにしたいな。もっと傍で彼女の表情を見ていたいなと思わず手を伸ばす。

「可愛いな」

俺のいきなりの言葉に、普段なら絶対と言っていい程見られない***の呆気に取られた表情にまたプ、と声を笑ってしまう。さっきとは違い、***の表情は変わらず呆気に取られた表情のままの***の頬に伸ばした手を後頭部へ滑らすとピクッと体を強ばらせた。そんな事お構いなしに***の顔を自分の胸元へ引き寄せる。スッポリと収まる彼女を改めて小さいなと感じる。

「好きだよ***。着てくれてすげぇ嬉しい」
「なっ…」

周りからの煩い冷やかしの中にポツリ、胸元に収まったままの彼女が言葉を零した。冷やかしの声にかき消されるんじゃないというくらい小さな声で。

「私も…好き……」

顔を真っ赤にして言う彼女を他の奴に見せたくなくて少し力を入れ抱きしめ直しと、苦しかったのか俺の背中を叩く***がまた可愛く見えた。


- ベタ惚れなんだ -


はいはい。イチャつくのはその辺にして***ちゃんの誕生日皆で祝うんだから、サボくんどいて!!
ちょ、まだ余韻にひたらせろよっ……!
……ふ、
その馬鹿にしたような顔なんだよ!おい!コアラ!!
***ちゃん、サボくんなんてほっといてこっちこっち!!
あ、こらっ…!


(コアラちゃん、コアラちゃん。)
(どうしたの***ちゃん??)
(ありがとうっ…!)



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