15万打感謝企画 | ナノ

シトシトと雨の音に、先生が黒板へと書くチョークの音が眠気を誘う。ただでさえお弁当を食べた後で眠たいのに、子守唄かのように音が響く。期末テストも来月にあるから気を抜けない為、眼を覚ますためにもスカッとする目薬をさす。

ふぅ、と小さくため息をつくと何やら小さな物が当たる感覚が。不思議に思い感覚があった所に手をやると小さな消しゴムが。消しゴムを見て余計にため息が出る。その消しゴムを私に投げてきたであろう人物は、私と目が合い気の抜けたような表情。

「なにすんのさ、エース」
「んだよ、泣いてんのかと思って、からかおうと思ったのによー」
「授業ちゃんと聞きなよ。私よりはるかにヤバいんだからさ」
「うっせーよ」

唇を尖らせ、黒板に視線を戻すエースにつられ私も黒板へと視線を戻す。
こんな愛想もない態度をとってはいるが、実は耳が赤かったりする。それをエースにばれまいと、湿気で少しうねっている髪の毛で隠しつつエースを盗み見をする。

…………相変わらずかっこいいな……くそう……。

そう、あんな態度をとっているが実は私はエースに惚れている。
あんなチャラ男最初は苦手だったけど、やっぱりチャラ男だ。女の扱いに慣れていていて、生憎女扱いされなれていない私は簡単に意識をするようになった。
けど、学校で1、2を争うチャラ男だ。そりゃあ、取り巻きも沢山居る訳でさっきのやり取りを見られていたようだ。凄い剣幕でこちらを見てくる。

はいはい、関わってすみませんね。私だってこんなチャラ男好き好んで惚れたんじゃ……って何自分の気になる相手をチャラ男チャラ男って言ってんだか。
心の中でも素直じゃない自分に嫌になる。こんな性格の為、折角エースが話しかけても素っ気ない態度ばかりで仲も深まる事がない。ただ、運良く2回連続席が隣になったくらいで対して話した事はない。

隣の席になって知った事は数学の時間はよく爆睡をし、世界史の時は必ずと言っていい程起きている事くらい。下らない事くらいしか知れていない。
また小さくため息を付くと同じタイミングでチャイムが鳴り授業が終わる。その後のSHRも担任も簡単に伝える事を伝え簡単に終わり、皆それぞれ帰る準備を始める。私もその中の1人で鞄に必要な物をしまっていると、ニヤニヤとしながら友人達がこちらを見ている。

「***ー!誕生日おめでとー!はいこれ!!」
「2人からって事で!可愛らしいの選んどいたから」
「……あー、ありがとう。」

私に駆け寄ってきた友人達から包みを貰う。そう実は今日は私の誕生日だったりする。常に私の誕生日は雨ばかり。まあ、6月なので仕方がないと言えば仕方がないのだが。
友人達に貰った包みを濡れないように鞄にしまいこむ。毎年くれるのは有り難いが、毎年ああ言って変なのを買ってくるのは辞めて頂きたいのが本音だけど。

「今日は予定があるからダメだけど、明日カラオケ行こうねー!」
「私より彼氏優先か、あんた等」
「あはは、ごめんごめん!明日埋め合わせするから!!」

笑顔でそう言う友人達に釣られ笑いながら下駄箱へ向かうと、珍しくさっきまで振っていた雨がやんでいた。下駄箱の中から自分の靴を取り、朝家から持ってきた傘を綺麗にたたみ直し外に出て水たまりを避けながら歩く。水たまりに気を取られ前を見ていなかったせいで、目の前にいきなり出てきた自分より大きな靴にビックリして顔を上げると、そこには不機嫌そうな表情をしたエースが立っていた。

「おい」
「……なに?」
「おめぇ何で言わなかったんだよ」
「は?何を??」

いきなりのエースの言葉に不思議に思っていると、眉間のシワがより深くなる。その表情にまた何を言えばいいか分からず無言でいると、それが余計気に食わなかったようでエースはまだムスっとしている。そんな彼を見ている私は、漫画で例えるとハテナマークを頭の上に出している感じ。だって本当に何に対してか分からないから。
そんな私に気が付いたのか不機嫌なまま「誕生日」と言われ、その時彼が何に対して不機嫌なのか分かった。だが分かったと同時に彼が何故そんなに怒っているかが今度は分からない。

「何で言わねぇんだよ」
「………いや、わざわざ言うのもおかしいでしょ……」
「……そりゃそうだな」

私の言葉に納得したようだが、まだ何か言いたげなエース。訳も分からないからそのまま帰ろうとエースの横を横切ろうとした時、腕を掴まれた。それも結構な力で。勿論そんな事をするのは、ここに居るエースだけだ。いきなりの事にビックリしたが、それ以上に気になる相手に腕を掴まれた事にどうしていいのか分からず心の中でパニックになる。

「てか…腕痛い……」
「わりぃ…。」

自分なりに平常心を見せエースに遠まわしに離すように言うが、小さな声で謝るエースと私の間に少しの沈黙が出来る。だが腕はやっぱり離してくれず困っていると、やっと眉間のシワが取れたエースと目があった。バツの悪そうな顔で「誕生日、」とポツリ言葉をこぼす。さっきからエースは何を言いたいんだろう……。

かたくなに離しそうにない手に視線を向けていると、不意に体がエースの方に引き寄せられる。その時、やっと手を離してくれたが、今度は視界いっぱいにエースの胸元が。

「は!?ちょ、えぇ!!」
「おめぇが事前に教えねぇから何も用意出来なかっただろうが」
「いや、ちょっと!は、はなっ……」
「教えなかったバツだ。離さねぇ。まあ、好きな女の誕生日くれぇ調べとけって話だよなー」

エースのある単語に思わず体が固まる。エースの胸元に居るという事だけでさえドキドキしているのに心臓が煽られる。何とか落ち着かせようとしても止まる気配はなく、焦る私とは違い平然と私を抱きしめたまま喋るエース。

「暴れんなって」
「や、暴れ…てかなんでそんなに普通なの!」
「そりゃあ、***と違って余裕があるからな!なあ、***…好きだぜ?」

耳元でエースの低音ボイスが響く。その瞬間ボボボ、と顔は勿論体まで赤くなっていくのが分かる。そんな私を見てニヤリと嫌な笑みを浮かべたエースの顔が近づいて来る。

「真っ赤にして可愛らしい事で。傘でもさして隠しとけ」

そう言って自分と私を周りから隠すように傘をさしたと思うと、やっと離れたエースと私の距離がまた近づいて来た。その距離がさっきとは違いゼロ距離。そうエースは私をからかった言葉を発したと同時に軽いリップ音が私とエースの間に生まれた。

「今から俺の女な?」

傘はさしたままのエースが今度は私の手を握り歩き出す。鼻歌を歌っているエースとは違い、私は自分の足元以外の場所に視界をうつす事は出来なかった。




- 晴天に相合傘 -



てか案外ウブなんだな、***って
う、うるさい!!てか…今更だけど……好きとか嘘でしょ…。エースが私の事好きとか考えられない
お前なー、好きじゃなかったら席替えでわざわざ変わって貰うようにしねぇよ
!!!……嘘ばっか…
(たく、顔赤くして…)どうしたら信じんだよ。またキスすんぞ










切甘じゃなくてすみません泣

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