ニヤニヤとした視線が感じるものの、気付かないフリをする。そんな事しても無駄だという事は分かっているし、相手が楽しくなるだけなんて分かっている!!
けど!けど!!今日だけは、どうしても負けられないんだって!!
「どうしたんだ***、プレゼント欲しくねぇの?」
「…べっつにー?大体誕生日もただ1つ歳取るだけだしー?」
私の言葉に「そうか」とニヤニヤとしながら手元にあったプレゼントであろう箱を、わざとらしく私の届きそうにない棚の上に置くサボ。その様子を見てあぁ!と心の中で叫ぶ。あくまで心の中で。
事の発端はほんの1時間前、いつものようにサボの部屋で駄弁っていると「そういえば、」とわざとらしく何かを思い出した。そんなサボを見て期待の眼差しをサボに向けた。
実は朝からソワソワして私。何故かと言うと今日は自分の誕生日だからだ。特に今日まで誕生日について何も聞かれなかったが少し期待していた。かと言って意地っ張りな性格がアダとなってサボに自分の誕生日が知られているのか聞けず時まいで当日を向かえていた。
一昨日、情報調達を目的に上陸した島で特に行動もなく、知られていないという事に落ち込んでいた時に当日部屋に呼ばれた。それだけでも少し期待していなのにサボの「そういえば」の言葉で期待が確信に変わった。根拠もなく勝手にだけど。
だが、その言葉の後の言葉に期待の眼差しを向けた私は少しの怒りに変わった。
「イワさんがこの前の調査の書類、誤字脱字が多いって怒ってたぞ」
「…………は?」
「だーかーら、誤字脱字!」
「え?それだけ?」
ポカーンとする私に、嫌な笑みを浮かべたサボが「それだけだけど?」と言葉を返した。平然と、しかも笑いながら言うサボに少しイラっとし「後で直しに行くよ!」と大きめな声を出してしまった。その場の空気が心なしか張り詰めた気がした。
勝手に期待して勝手に怒って……
罪悪感が生まれ、手元のクッションを握るとシワが深く出来てしまった。そんな私を見てか急にサボのが吹き出し、おもむろに立ち上がり棚の中を漁りだした。
「ほんと、***って分かりやすいな。ほら、誕生日プレゼント」
乱暴に投げられた箱。その箱を見て思わず口元が緩む。開けようか迷っていると、意地悪な顔をしたサボの言葉に、意地っ張りな私が反応してしまった。
「ここ数日、落ち着きがなかったのは俺に誕生日祝ってもらえるか不安だったからか?たく、もう少し素直に言えば可愛気あんのにな、」
その言葉に「べ、べつに?」と声が裏返りつつ反応してしまった。そんな私に一段と意地悪な顔をしたサボ。しまった、と思った時には遅く冒頭へ戻る。
サボ相手に言い合いも勝てないのを分かっているが後戻りも出来ず、ニヤニヤとこちらを見ているサボに視線が合わないようにするのが精一杯の状況。
それまで私の正面に居たはずのサボが「***ちゃーん?」と戯けた声を出しながら私の横へ座りこんできた。一瞬ビックリしたが、目線を合わせないように下を向くが逆効果。覗き込むように顔を近づけてくるサボから逃げようとするが、いつの間にか肩をシッカリと掴まれていた。
「今日くらい素直になれよ」
「な、なんの事かなー?」
「………お前なあ……」
サボの呆れた声に逃げ場のない目線が泳ぎだす。
だって…そんな事、普段から出来たら苦労しないし……。何も言わない私の横から立ち上がるサボ。
あ……もしかして怒らせた…?折角プレゼントくれたのにあんな事言ったし……
折角の誕生日、好きな人が祝ってくれたのに私の態度で台無しになってしまった。スタスタと歩いていくサボの後ろ姿に「待って…!」とサボの背中に抱きつく。私の大好きな背中。大きくて頼もしいサボの背中。
「素直じゃなくてごめん……!凄く嬉しいからっ……!」
だからどこにも行かないで…そう強く願いながら、力いっぱいサボに抱きつく。するとサボの手によって簡単にサボから引き離された。サボなりの拒絶。初めての事でショックを隠しきれない。
確実に嫌われた…そう思うと涙が溢れそうになる。どうせなら涙が溢れサボに気付いて貰えた方が、この状況を変えれるかも知れない。けどそれだとサボに甘えているだけだ。少しでも変わらないと…そう考えてもいい事が思いつかず、迷っているとある事に気が付いた。
サボが微かに震えていた。それを見てまさかと嫌な予感がする。
何故こうゆう時の嫌な予感はよく当たるのだろうか。微かに震えながら顔だけをこちらに向けたサボの表情を見て、改めて実感した。
「そうか、そんなに***は俺からのプレゼントが欲しいのか。気分転換にコーヒーでも淹れてこようかと思ってたんだけど、そんなに離れるのが嫌かー」
「な、ちがっ…!」
「たく、仕方がねぇな。そんなにあつーい抱擁をされたら断れねぇしな」
確実にからかっているのが分かる。だが、恥ずかしくて何も言えない私の頭を撫でながら、先程棚に置いた箱をまた取り出し、中身を取り出している。取り出されたのは色違いのマグカップ。
「これ俺と色違いなんだぜ?こうゆうの欲しいって言ってただろ?」
「た、確かに言った気するけど……」
「丁度いいから、これにコーヒー淹れてくるから大人しく待ってろよ?」
「わかったから!!早く行きなよっ!」
笑いながら「へいへい」と楽しそうに笑いながら部屋を出て行ったサボ。
確かにそんな事を前、雑貨屋さんで小声で言った気がする。自分でも何となく言った言葉なのでうろ覚えなので、そんな言葉を覚えていてくれた事が嬉しく思わず笑みが溢れた。
「何ニヤニヤしてんだよ。そんなに嬉しいのか?俺との…」
「ヌアッ!?は、早く淹れに行きなよっ!!」
いきなり背後から声がするので振り返ると、また震えて笑いを堪えているサボが。何とか部屋から追い出し、コーヒーを淹れに行かせた。サボがいなくなったのを確認して漸くホッとする。
結局、今日も勝てなかったなと残念な気持ちと純粋に祝って貰えて事が嬉しくてやっぱり笑みが溢れた。が、今度はいつサボが戻ってくるか分からないのでこっそりと。
- 負け試合も悪くない -
ほれ、コーヒー。実はもう1つプレゼントあんだよ。
え?本当…?
これ。開けてみ?
うわーありが………なにこれ
***に似合いそうな下着。お前ボロいのばっかなんだよ。
な!愛着があるんだからしょうがないでしょ!!
俺はこれとかつけてくれたら嬉しいんだけどな。これ色っぽいし。
………分かったよ。付けるよ!
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