15万打感謝企画 | ナノ
 
蝉の鳴き声をBGMに額を流れる汗を拭う。ボーっと空を見上げると、少し日が落ちてきて夕暮れかかっている。綺麗だなーなんて柄にない事を思っている俺は、精神的に結構きているんだなと実感している。

こんな事を考えてしまう原因は俺の想い人の***のおかげだ。
ある2つの事が気になってしゃーねー。
1つ目は俺の「2人で祭りに行かねぇか?」の言葉に変な間を開けた後の「んーいいよ」という言葉。
2つ目は現在進行で***の姿が現れなねぇ事だ。

マイペースなあいつの事だ、やっぱり気が乗らなくて来ねぇとか!?元々ノリ気じゃなかったし納得もいく。ここにきてドタキャンかよ……。

「………何ため息ついてんの?」
「のへっ!?」

気が抜け、ため息をついた瞬間タイミングが良いのか悪いのか***が後ろに立っていたみてぇで声をかけられビビる俺。***の顔よりも服装に目が行ってしまった俺は漫画の読みすぎだと思う。

………普通こんな時って遅れて来たら浴衣とかじゃねぇの?

私服姿の***に少しガッカリしている俺を不思議そうに見てくる***。まあ、こいつの事だから深くまで考えてはねぇんだろうけどな。来てくれただけで良かったとするしかねぇな。

「いや、なんもねぇよ。行くか?」

久々の祭りにテンションが上がるが、***が居る手前カッコつけたがる俺が居る。
だが、屋台から香るいい匂いに誘惑され我を忘れて食いまくりたい気持ちと戦っていると***が「ねぇ、」と俺の服の裾を引っ張っている。その行動に悶えながらも「どうした?」と聞くと、***がある方向へ指をさす。

そこには人混みの中でも直ぐに分かる髪型で一番会いたくなかった奴等。その1人と目が合い、「エース!!」なんてニヤけながらこっちに向かって来ようとしているサッチ。

「***!わりぃが走んぞ!!」
「はっ!?」

***の手を取り、人混みをかき分けて夢中で走り続けると後ろから***の子細い声の「エースッ…痛い」という言葉で漸く足が止まり、そこで自分が無意識で***の腕を掴んでいた事に気が付き慌てて手を離す。

「あ、その、なんだ。わりぃ。」
「いや大丈夫。」

素っ気なく返される返事に、意識して焦っているのは俺だけなんだと改めて実感する。気持ちの差に悲しくなり***との会話も自然に止まり、お互い無言のまま歩き続けていると屋台の数も減り、人も減っていくどうしたもんかと考えていると***から珍しく声をかけてくれた。

「良かったの?サッチ達と喋らなくて」
「あーいいんだよ。あいつ等に捕まるとなげぇしな。つかメンドクセェ」
「……でもいつも楽しそうに居るじゃん」
「まあ、そりゃあ一緒に居るのは楽しいけど……今日は折角***と居るんだしそっち優先にしてぇじゃん?」

精一杯の勇気。
案の定返事はなく***の引いた表情が目に浮かび、悲しくなり「なんてな!」と誤魔化そうと***の方を見るとびっくりした。
夕日に染まったからでもなく、***自身の頬が赤く染まっている。こんな表情を見るのが***に惚れてから初めて見る為、混乱でさっきとはまた違った沈黙が続く。

「ごめんね、エース。いつも可愛くない態度で」
「は?急にどうした??」
「んー……私こんなんだし折角のお祭りも楽しくないんじゃないかなって思って。」
「んなことねぇよ!!」
「さっきのエースの言葉、凄く嬉しかった」

その言葉に俺の方が嬉しくなって気持ちが高ぶり、"好き"という感情が溢れ出して口走りそうになった時、ドン!ドン!ドンッ!と花火が鳴り出し2人の視線が花火に向けられる。

「綺麗」

そう言って笑う***は花火に彩られて凄く綺麗で、恥ずかしいとかフラれたらどうしようとか考えがどこかに消えていく。

「***、好きだ。すげぇ好きだ。」

さっきまで綺麗だと思った***の表情も、新しく打ち上げられた花火に照らされた***の表情が余りにも可愛くて思わず笑ってしまった。


- ほら、笑って -


ブッ、眉毛八の字に下げて……なんちゅー泣き顔…
だって嬉しかったから。お祭りに誘って貰えただけでも嬉しかったのに
……その割には誘った時、変な間がなかったか??
…………余りの嬉しさに一瞬フリーズしてた
じゃあ、今日遅れてきたのは?
……浴衣にしようか迷ってた…けどいい誕生日になったな…
……………は!?
え?
もっと早く言えよ!!!あーくそ!!!屋台制覇するぞ!!!




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