15万打感謝企画 | ナノ
 
長年の付き合いになれば、それなりに初々しさもなくなるもんだ。
俺がおい、と言えば俺の欲しい物をくれるし、俺が疲れている時は気を使って身の周りの事をしてくれる。それがどんだけありがてぇ事か分かっていねぇんだよ、サッチの野郎は。

「何怖い顔してんのマルコ……」
「あ?そんな顔してねぇよい」
「いや、してたよ。」

***の言葉にいつの間にか眉間にシワが出来ていた事に気が付いた。小さくため息を付き、眉間のシワを伸ばしコーヒーを口に含む。苦味が口に広がり、少し冷静さを取り戻す。
そんな俺を不思議そうに見ていた***も晩飯の続きをとり始めた。そんな***の横で先日サッチに言われた言葉を思い出す。

“お前等ってさ、熟年夫婦みてぇだよな。”

そう言われ否定出来なかった。本当だからだ。一緒に居て気が楽だけではなく、何も言わなくても気持ちが通じているというか…俺がこうしてぇと思うと***が既にしてくれていたりして助けられている。
そんなんだからか、初々しさなんてとっくに無くなりサッチの言う通り熟年夫婦のような感じになっている。

だが俺も***もいい歳だ。そろそろ先の関係に進むのも悪くねぇかなと思っていた。そう本当に夫婦になるのもいいと思っている。俺自身***以外の女と一緒になれる気がしねぇ。そう思っていた時にタイミングよく***の誕生日だ。いい機会だと思い、初々しさを少し思い出す為にもドッキリをしようと考えたまでは良かったのだが、どのタイミングでするべきなのか分からず、もう夜になっちまった。

なんでドッキリをしようとか思いついたのか……自分に少し呆れつつ用意したプレゼントをいつ渡そうか考える。無難に部屋に呼ぶのがいいよな…そう思っていても何故か緊張している俺の横で嬉しそうにデザートを食っている***が少し羨ましく思う。

こっちの気も知らねぇで呑気なこった……。
少し気が緩み残っていた晩飯を平らげ、席をたつ。俺の後を追うように席をたつ***にいつも通りを装いながら「後で俺の部屋に来てくれ」と言い食堂を出た。
いつも通り、変わらないはずなのにソワソワしてしまう。***もすぐ来る時があれば、1時間くらいたってから来る時だってある。
そんな事は分かっているのに、落ち着かない。書類を書き上げようとするが全く進まない。書類は進まねぇは貧乏ゆすりが止まらねぇはで、苛々しているとドアをノックする音が部屋に響いた。

「マルコごめん、お風呂入ってた」
「そーかよい。なかなか来ねぇから寝ちまったかと思ってた所だ」
「ごめん、ごめん!」

よりによって何で今日に限って風呂入ってきてんだ!!
風呂上がりの***なんて今まで何度も見た事があるのに、今日は変に可愛く見えて仕方がねぇ。変な緊張感襲ってくるが、そんな俺の気を知らねぇ***は普通にベットで寝転んでくつろいでいる。

「………」
「?どうしたの、マルコ」
「あ?なんもねぇよい」
「ほんと?てか何かマルコの部屋いい匂いするね」
「あ!?あーアレだ。ちょっとお香変えたからじゃねぇか?」

変に緊張している自分が***を見ているとバカらしくなる。呑気にくつろいでいる***の横に腰を下ろし、事前に用意していたプレゼントをベッドの下になるべく隠れるように置く。***の発言にドキっとしたが、なんとか誤魔化せたみたいで胸を撫で下ろす。

普段通り。くだらねぇ話をしてるみてぇに気軽に「おめでとう」と言えばいいだけだ。
頭の中では分かっているのに、何故か行動に移せねぇ。だが俺もいい歳した男だ。いい加減決めねぇと……。何よりこの気を逃すと、ずっとこの“熟年夫婦”ままの気がして仕方がねぇ。
意を決して目の前まで呑気にくつろいでいる自分の名前を呼ぶ。化粧をとり、少し幼くなった***と目があった。

「……あのよ、」
「何??てかやっぱり今日のマルコ少し変だよ??」
「あのーその……なんだ……とりあえず誕生日おめでとう…」
「とりあえずって何それ!でもありがとう。てっきりマルコ忘れてると思ってた」

嬉しそうに微笑む***を見て少し安心する。とりあえず一歩、事が進んだなとぎこちな笑みを***に向けながら足元の用意したプレゼントに目をやる。

後はこれをプレゼントするだけだ。普段他の野郎の恋次にヘタレやら文句言っている割に自分の時はこうだと奴等に何言われるか分かんねぇ。
グッと手汗で少し湿っている手で足元の花束を手に取り、荒々しく***に差し出す。淡いピンクのスイートピーの花束が***の視界を占領したようで「うわぁ」と声を上げている。

「マルコが花束って少し面白いね?」
「どういう意味だよい……それより花束もっとよく見てみろ」

俺の言葉に不思議そうにしている***だが、言われるままに花束を改めてじぃと見ている。すると俺が何故そう言った理由が分かったのか、俺と花束のある所を交互に見ている。驚いている様子で、よく見ると目に薄らと涙が溜まっている。

「そのーなんだ。……熟年夫婦とか、からかわれているが…本当の夫婦にならねぇか」
「………」

俺の言葉に何も言わず、さっきまで交互に俺と花束を見ていた筈の***が花束だけを見ている。***の視線の先には小さな石がついた指輪。スイートピーの一輪に指輪を通しておいた。

「***……??」
「マルコ……私で本当にいいの??」
「おめぇ以外に俺の女務まる奴いんのかよい」
「………それは確かに私しか居ないかもね?」

フフと笑い涙を拭く***の肩を抱きを自分の方に引き寄せ、指輪を花から取り出しか細い手を取る。左手の薬指、選んだ指輪のサイズがピッタリで良かった。それにも安心したがそれ以上に安心した事があった。

「一目見て***のイメージにピッタリだと思って買ったんだが……似合ってて良かったよい」

俺がそう言うと「ありがとう」と礼を言う***の頬にキスをし、花束を取り上げそのままベットへ押し倒した。




- 本物になろう -



フフ、
?何笑ってんだよい
いや、今日なんかマルコの様子可笑しいなあとは思っていたけど、まさかプロポーズされるとは思っていなかった。マルコ緊張してたんだね?
……そりゃあ緊張もするだろい。わりぃか
私を驚かそうとして緊張していたとか考えると…凄く嬉しい!!
…………
マルコ??
もう1回するぞ。文句言うな、今のは***が悪い。
は?ちょ、え!??



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