私がトリップしたい世界と違う!! | ナノ

▽ 会いたかった


 
綺麗な町並みに人の良さそうな街の人々。普段嫌な視線を受けている分、街の人に優しく声をかけれられると自分の置かれている状況を忘れてしまう。

「あ、私コアラとはぐれてるんだったわ」

呑気に果物貰って食べてる場合じゃないんだった。おばさんにお礼を言い、街を歩き始める。
朝からコアラと街に繰り出した所まではごく普通だった。だが、そこからコアラのマシンガントークに嫌気がさしてきた所に色んな服屋でのマネキン扱い。これ着てあれ着てと着せられ、サボとまわった方がもしかしたら良かったか?とコアラには悪いが思っていた時、フと見た雑貨屋の小物を見ていたら隣に居た筈のコアラが居なくなっていた。

多分1人で喋っている痛い人状態になっているだろうコアラを探す為、来た道を戻っているつもりが呑気にしてた。街の人と話しかけられて呼ばれるがまま歩いていたら、全く見覚えのない道に来ていた。どうしたものかと考えていると、2人組の男女を見つけた。

カップルかな、仲良く話しているし…周りを見渡しても他に人影もない為、2人に近づく。「あのう…」と声をかけると優しそうな笑みで「どうしました?」と答えてくれて安心して事情を説明すると、笑顔で答えてくれる。
海岸までの道を一緒に行ってくれるみたいで、呑気に話しながら一緒に歩いていく。本当ここの島の人達は優しい人達ばかりだな、と思っているとある事に気が付いた。

「あれ?なんだか街並みが変わった??」

さっきまでの綺麗な街並みとは違い、廃墟のような風景に違和感を感じる。キョロキョロと見渡していると、背後から何かで口を塞がれる。抵抗しようにも敵わず、ジタバタとしているとフと視界の端に見覚えのある姿が。

あの人!!書類ミスとかイチャモンつけてきた!!!
私の視線に気が付いたのか彼と目が合い、手を伸ばし助けを求めるがすぐに逸らされてしまう。しかもそのまま走り去ってしまった。呆然としていると、さっきまでの優しかった2人が荒々しく私の腕を縛ろうとする。

「おい!本当にこいつなんだろうな!!」
「間違いないわ。革命軍のコアラと一緒に行動していた!こいつを囮に…」

その言葉に気が付いた。この人達は私を使って革命軍の皆に何かをするつもりなんだ……。だけど、そんな事どうでも良くなった。だって私なんか捕まえても革命軍にとってどうでもいい事だから。逆に都合が良いくらいだ。だってよく思っていない奴が居なくなるんだから。その証拠にさっきの人もあの有様だ。

そう思うと抵抗するのも馬鹿らしくなり大人しくすると、油断したのか私を背後から押さえていた男の力が弱まる。その隙に男の足を踏み体重を後ろにかける。足を踏まれているせいでバランスが取れず崩れていく。女を押しのけ走りだす。

「ただこんな所で死ぬのはごめんだけどねっ!!!」

革命軍の人達に嫌われているのんて分かっている。けど嫌われている私の傍に居てくれた2人に、迷惑はかけたくない!!
無我夢中で走ったおかげなのか追っても来ず、見渡す限り綺麗な湖。安心して息を整えていると視界が歪む。

ああ、あの時薬を嗅がされたのか……そのうえあんだけ走り回ったら、そりゃあ薬もまわってしまうよね……

ゆっくりと倒れ、遠のく意識の中サボとコアラの顔が浮かぶ。
本当漫画みたいな展開……笑えてきて仕方がない……けど……最後にせめて2人にお礼が言いたかったなあ…

綺麗な湖に自分の身体が沈んでいく。案外私の人生良かったのかも知れない。違う世界とはいえ漫画の世界にトリップ出来たんだから……




- 会いたかった -



おい!ねぇちゃん!何水たまりに顔突っ込んでんだ
んっ……(誰…?今揺すられるとちょっと気持ち悪く……)
いくら金がねぇ俺でも流石にそこまでのガッツは……
(ちょ、揺すらっ……)
おーい、起きろー
あー!!吐く!!そんなに揺すられると吐くから!……え?銀さん??
そうだよー皆の銀さんだよー

はあああああああああ!!?
吐くどころか元気じゃねぇか





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