私がトリップしたい世界と違う!! | ナノ

▽ それぞれの想い


 
いつも騒がしい筈の万事屋から声1つしない。
ポチャンと水道から落ちる水滴の音が変に響く。
この変な空気よりも居心地が悪いのは、何より皆のこの視線だ。

「あのさー……皆してなにその目!!」
「だって信じられると思うか?ワンパークはボンキュボンが基本なのに***みてぇのがワンパークの世界に居れる訳がアベシッ!!」

今殴ったのは銀さんがイヤらしい目で見たからだ。
決して自分の可哀想な体を認めたわけではない。
そう自分に言い聞かせていると、さっきまでふざけていた銀さんが真剣な目になり「で?」と私に問いかける。

「お前は帰りたいのか?ワンパークの世界か、それとも本当の世界か」
「え?」
「そりゃあ本当の世界じゃないですか?」
「たく、これだから新八はいつまでたっても新八アル。ワンパークの世界だとイケメン揃いネ。***みたいな平凡な顔でも、可愛い子産まれてくる可能性あるアル」
「神楽ちゃんのその異様なワンパークの執着心はなに…」

ギャーギャーと賑やかな声を聴きながら、目の前の湯飲みを見つめる。
帰りたい世界ねぇ……




「お前今なんて言った……?」
「サボくんごめん…***ちゃんとはぐれちゃった……」

なかなか集合時間に現れない***とコアラに、何かあったんじゃねぇかと思っていた時に、1人でトボトボと帰ってきたコアラを見て嫌な予感はしたが聞いたらはぐれたと言うコアラ。

ただはぐれたくらいなら、その内ひょっこり帰ってくるかと思っていたが時間がどんだけ経とうが***が帰ってくる気配はない。
最初はコーヒーでも飲んでゆっくりしていたが、時間が経つにつれ余裕が無くなり貧乏揺すりが酷くなってくる。

何とも言えない怒りが体中を駆け巡る。誰も悪くなくない。
分かっているのに苛々が止まらず机に拳を叩きつける。その衝撃で積み重なった書類が崩れていく。

「サボくん……本当ごめんなさい…」
「いや、コアラが悪い訳じゃねぇ。俺こそわりぃ。余裕なくて…」

変な空気が流れ始め、他の奴等もオドオドし始めた頃、男のくせにか細い声で俺を呼ぶ奴が1人目の前にやって来た。

「サボさん実は…」



- それぞれの想い -


サボくん待って!!私も行くっ!!
足いてぇって言ってもほってくからな!!後、ゾイセ!!お前帰ってきたら1週間、俺の代わりに書類まとめろよ!!



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