▽ 5日目の真実
寝息しか聞こえない空間の中、モゾモゾと静かに体を起こし伸びをしつつ冷蔵庫を開ける。
なーんもないなあ……
ボサボサの髪の毛を雑に縛り、慣れない手つきで朝ご飯を作っていく。
実家暮らしのグータラ娘だったおかげで料理なんて出来る訳がない。そんな私が出来るのは簡単な物くらいだ。
新八は朝ご飯食べてくるのかな、なんて考えながら料理をする自分に「夢小説のヒロインみたい」なんて浮かれつつ和室と押入れを開ける。そこにはまだぐっすりと寝ている銀さんと神楽ちゃんの姿。
起こすのが可哀想だが心を鬼にしてお腹に力を入れ、大きく息を吸う。
「ハラに力を入れてぇ……はい、起きろーーっ!!!!」
勿論こんな可愛らしい事で起きる訳なく、景気よく手拍子をしながら起こす。
「お!き!ろ!ほれっ、お!き!ろ!!ほれっ!!!」
それでも起きないので、今度は変な踊りでも踊って起こしてみよう。
そう思い足でダン、ダン、ダンと軽快にリズムを取り、さっきの掛け声を出そうと一言目を発した瞬間に凄まじい勢いで「「うるせぇー!!」」と怒鳴られる。
おお!流石万事屋!感動しているとボリボリと頭を掻きながら気ダルそうに和室から出てくる銀さんと、押入れから出てくる神楽ちゃんと定春。
ああ、定春のエサ用意しないと。定春の姿を見て思い出し急いでキッチンに向かいエサを用意していると、タイミング良く新八の「おはようございます」の挨拶が玄関から聞こえた。
キッチンから顔を出し「ご飯食べて来た?」「食べてきましたよ」なんて会話をし、エサの入ったお皿を持ってくると暗い空気が食卓に流れていた。
「……何、この重い空気!!」
「いや、お前さあ……毎朝毎朝、目玉焼きって…」
「だって簡単じゃん!」
「百歩譲って朝飯だから目玉焼きは許す!だけどなあ、目玉焼きオンリーってどうなんだよ!!」
「本当アル。どうせ同じ卵料理なら、卵かけご飯がいいアル」
「えー?じゃあ明日からは卵焼きかスクランブルエッグにするよ」
「いや、結局卵焼いただけだからね?しかも神楽の意見無視だからね!?」
この独特の万事屋の空気に改めて感動する。
スーハーと深呼吸していると銀さんや神楽ちゃんは勿論、新八にまで引かれた表情で見られていたのでニヤけ面を辞め、顔を引き締める。
だが、生憎私の表情筋は素直らしく直ぐに顔が緩む。
「たくよー、お前くれぇの歳なら普通メシくれぇ作れるのんじゃねぇの?どんな暮らしして来たんだよ」
「えー、銀さんそのセリフお妙さんにも言えるの?」
「今のセリフはなかった事にして下さい」
「銀さん、それ姉上に失礼ですよ…」
「ちなみにどんな暮らしって言われたら実家でグータラ暮らしてました!てへ」
私の一言に微かに銀さんの眉間にシワが寄りため息が零れる。
「お前なあ…実家暮らしならさっさと家帰れ。親心配してんだろ?」
「んー…それがしたくても出来ないんだよなあ……」
「なんだ喧嘩か?親と喧嘩したくれぇで家出なんて、銀さんだったから何も起こらなかったものの、他の男なら一発だぞ」
「いや家出どかでもなく、帰れるならそりゃあ帰りたいけど帰れないってゆーかなんと言うか……」
「そんなモジモジしてないでハッキリ言うヨロシ」
言って信じて貰えるのか不安だったけど、言わないと納得もしそうにないしな……。
覚悟を決め、「信じて貰えるのか分からないけど」と保険をかけ口を開き説明をすると銀さんは勿論、神楽ちゃんや新八も驚き空いた口が塞がらないみたいだ。
- 5日目の真実 -
おま、ワンパークから来たってエリート野郎じゃねぇか!!!
(そうか、銀魂ではワンパークか)まあ、私は銀魂の世界に来れて結果オーライだけどね!!なんてったって銀さんに会えたしぃ?
***は馬鹿アルな。確実にあっちの世界の方が将来安定ヨ。こんな天パよりワンパークの男のが好物件ネ。
いやいや、向こうに居ても付き合えたりするかは分からないでしょう?
ぱっつぁん……夢壊さないでよ…
prev /
next