俺の産まれた島では毎日どこかの海賊団がいる事は当たりだった。 島の近くに海軍支部があった為そう馬鹿みたいに暴れる海賊団は少なかった。が、ある日大暴れする海賊団が現れ街は壊滅寸前。
「このままじゃあ、街はなくなる…俺等だけでも戦いに行こう…」 「けど俺等戦った事ねぇじゃねぇか…!!」 「そんな事言ってる場合じゃねぇだろ!?」
そう言っていの一番に海賊団に向かっていく友人に続き俺も向かう。けど今まで呑気に生きて来た俺等が敵うわけでもなく、あっという間にボロボロにされた。
遠のきそうになる意識を何とか保って友人を探すと、海賊がボロボロになった友人に向け剣を振り下ろそうとしていた。
「やめろっ……!!」
最後の力を振り絞って手を伸ばすものの届きそうにない。やめてくれっ……!! 泣きそうになりながら声にもならない叫びを叫んでいると友人の目の前で剣が止まった。
「たく、男がピーピー泣いてんじゃないわよ」
そう言って細い腕で海賊の剣を自分の剣で止めていたのは女だった。
「泣いてる暇あるなら今の内にこいつ持ってきなさい!!私の力だといつまでも持たないわよ!?」 「は、はいっ!!」
思わず女の迫力に言われるまま友人を引っ張る。 引っ張り終わると同時に女が力尽きたのか海賊の剣が地面へと叩きつけられる。
「……なんだお前……」 「カッコつけると、たまたま通りかかった冒険家?」 「舐めてんのか……?」 「んー、若干?」
ニヤリと笑い海賊を小馬鹿にする女に呆気を取られていると海賊が女に向かって剣を振り下ろそうとしていた。
あの人の服の模様どこかで…… 一見チャイナ服のような見掛けのスカートの裾にひっそりとよく見かけるマークが。どこだったか思い出そうとしていると女の人に「さっさと逃げなさい!居られても邪魔!!」と言う言葉にビビり友人を引きづりながらもその場から逃げた。
必死に逃げ暫くすると、さっきまで俺等が居た場所は騒がしかったのに静かになった。 まさか……あの人やられたんじゃ…… 心配になり引き返すと焼き焦げた匂いと血の独特の匂いが混じっていた。辺りを見渡すとさっきの女の人は居なく、海賊達が倒れていた。
これあの人がやったのかな…。 素直にスゲェと感心していると、あのマークが何か思い出した。
「白ひげ海賊団…」
あの海賊団のクルーならこの状態も納得できる。 ボソリと呟く俺に友人は不思議がっていたが、気にせず俺は友人に伝えた。
「俺……海賊になるわ」 「は?何言ってんだよ…?」 「さっきの人みてぇに誰かを守れるくらい強くなりてぇ。それに…あの人には助けてくれた礼も言ってねぇ。ちゃんと会って礼をしたい」
俺の言葉に呆れてか何も言わない友人をよそに、俺は海へ出る決意をした。 勿論、航海術なんて持ってない小舟の俺はすぐに大シケにやられ沈没。そんな時助けてくれたのがブリュー船長だった。白ひげ海賊団の傘下と知った時、ブリュー船長に無理言って白ひげ海賊団へ行かせて貰った。
噂通り怖そうなマルコ隊長にモビーを案内して貰っていると食堂で会いたかった人はサンドイッチを食べていた。マルコ隊長が「***か……紹介がてら挨拶でもするか」と言い俺をあの人の側へ連れて行く。
***さんか…… 名前を知れただけでニヤけている自分に引きつつ***さんに挨拶するも、どうやら俺の事は覚えてないみたいだった。 別にそんな事は覚悟はしていた。けど俺は悲しくはなかった。忘れられてたとしても俺は***さんと関わりが持てただけで凄く嬉しかったから。
「俺、***さんに色々教えて欲しいッス!」
俺の我が儘に最初は嫌々だったし、適当だった***さんも今では俺の事を凄い可愛がってくれる。
「ソラ、サッチがオヤツ食べに来いってさ」 「じゃあ、一緒に行きましょう!」
俺がそう言うと優しく微笑んで隣を歩く***さん。そんな***さんを見て「ありがとうございました」とボソリと言うとキョトンとしていた。
「何か言った?」 「………いや、何も言ってないッスよ。それより早くサッチ隊長のオヤツ食べに行きましょうよっ」
***さんの手を取り走り出す。 後ろで「ちょ、早いっ!」と***さんが言っているけど何も答えず手をギュッと握り走り続けた。
- 必ずいつか言うから -
いつか礼を言うから。 その時は礼とは別の気持ちも伝えると思うから、もう少し勇気が出るまでこのままで居るよ…
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