1周年感謝企画 | ナノ




ウィィィィィィィン


毎回、このドリル音が聞こえる度に後悔する。
だが毎回、もう後悔しても遅いと実感する。


「じゃあ、痛かったら左手上げてくださいねぇ」


ニッコリと笑う歯科助手さんに冷や汗をかきながらニッコリとぎこちない笑顔を返す。
少しでも心の準備が出来るまでなるべく時間稼ぎをしようとしている私をよそにドリル音が大きくなる。


「オメェがしっかり歯を磨かねぇのがわりぃんだから、無駄な時間稼ぎすんじゃねぇよい」


冷静……と言うより冷たい目でこちらを見てドリルを容赦なく私の歯の痛い原因を削るマルコ先生。
あまりの痛さに手を上げようとすると鬼のような一言が。


「おい。腕押さえとけ」
「!!おごっ!ごごがっ!(鬼っ!悪魔っ!)」
「しっかり歯を磨かねぇからツケが来てんだろぉが」


苦笑いをする歯科助手さんに涙目で「助けて!」と目で訴えようとするとマルコ先生のあの独特の目で遮られる。
このヤロォと意地でその痛みに耐え治療を終えて少し冷たい水で口をゆすぐ。


「とりあえず仮止めしてるが、あんまり使わねぇようにしろよ」
「えー、もう一気に止めてくださいよ」
「馬鹿か、まずこんなデケェ虫歯作らねぇようにしろよい」


そう言いながらカルテに何か書き込んでいるマルコ先生にブーと少しぶりっ子をしながら言うと、また冷たく「キメェよい」と言われる。


こんな冷たいマルコ先生だが、腕は凄いのでこの歯医者は人気なのは確かだ。まあ、私もマルコ先生に治療して貰うとそこがまた痛むとかはないし。


「けど顔が怖すぎて恐怖2割増しなんだよねー」


なんて言うとどうやら声が漏れてたみたいで「お前、次虫歯作ったら抜くぞ」と脅されました。







- 腕は信じてます -



顔がなー……
よし、こいつ押さえてろ。歯ぁ抜いてやる。
ごめんさない!ごめんなさい!!


← / →

×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -