「卒業しちまったなー…」 「ほんとにねぇ…。あっという間に卒業……歳は取りたくないわあ…。」
人気もなくなった教室で、エースと肩を並べながら帰っていく人を眺める。 卒業式も終わりさっさと帰る人、校門の前で話をしている人、卒業式後よくある風景だ。そんな風景を見て、自分も卒業したんだと実感する。
「おかしいなあ。高校入ったら、イケメンの彼氏が出来る予定だったんだけどなあ」 「鏡見てから言えよ。高望みしてっから3年間男居なかったんだろ?」 「何で3年居なかったって知ってんのよ」 「そりゃあお前と馬鹿しかしてなかったからな。俺ならいい歳して海賊ごっことかしてる奴彼女にしたくねぇ」 「な、あんただってノリノリでしてたじゃん!つか何であんたはそれでもモテたのよ!!」 「まあ、お前と違って顔がいいからな」
ドヤ顔で言うエースの足を思いっきり蹴る。どうやらスネに当たったみたいで痛がっている。涙目のエースにザマァミロと言うと鬼の形相で頭を鷲掴みされる。それがまた、強い力でしてくるもんだから私も必死で抵抗する。 こんな事で馬鹿みたいに騒ぐのも今日で最後だと思うと寂しくなる。
「海賊ごっこねぇ。懐かしいね」 「たく、名前が宝奪うとか訳わかんねぇ事言ってスモーカーの弁当盗んだりよぉ」 「なによ、エースだってノリノリでしてたじゃん」 「まぁな!まあ、バレた時は焦ったな!!」
ブッと笑い出すエースに釣られ私も笑い出す。 そんな事もあったな、と1つ思い出すとこの3年間の出来事が続々と思い出してくる。 海賊ごっこの前は忍者ごっこしてたっけ。木に登ってたらたしぎちゃんに怒られたり、エースと一緒に早弁してスザン先生にバレたり、よく屋上でサボったり……。 3年間腐れ縁で一緒のクラスのエースと馬鹿ばっかやって、そりゃあ彼氏も出来ないのも納得だ。
けど、そんな3年間も楽しかったのはエースのおかげでもあるかな。
「ありがとうね、エース」 「………急に改まんなよ、きしょくわりぃ…」 「ひっど。私ぐらいだからね?エースの相手出来きるの」 「いや、俺以外の奴なら名前の相手しきれねぇって」 「いや、それはない」 「アホぬかせ。あるっつーの」
いつものように、お互いを貶し合う。当たり前だった事が今日で最後。 エースと私は卒業後の進路は別だから。馬鹿やって笑いあった日々も最後。そう思うと下らない日々も大切な思い出で、いざ卒業となると寂しいもので…。 卒業ぐらいで泣けるとは思って居なかったのに、寂しいという感情が溢れてき視界が悪くなる。
「何?名前ちゃん泣くのぉ?」 「うっさい!泣いてないし!!てかこっちニヤニヤして見ないでよ!!」
窓枠に肘を置きこちらを見てくるエースに少し夕日が差し込み、顔が夕日で赤くなっている。柄にもなく、そんなエースが格好良く見えたが、絶対に言わない。言うとエースの事だ、調子に乗るに決まっている。 そんな事を考えていると、ある事に気がついた。
「てか、エースも目赤くなってない?まさか、泣きそうなの?」 「んなんじゃねぇし!!ニヤニヤすんな!!」
いつものやり取りをしていると、最後の合図が。いつも聞いていたチャイムが学校全体に響く。楽しかった日々も悲しかった事も全て思い出に変わる。
「………そろそろ帰るか…」 「そうだね…最後まで先生に怒られたくないしね」
そう言いつつもお互いなかなか足が動かない。エースも同じ気持ちなのかな、と考えていると「ん」と無愛想な声と共に差し出される手。勿論持ち主はエースだ
「3年間ありがとな!名前と馬鹿やって楽しかったぜ!卒業してもまた、馬鹿しようぜ?」 「……ちょっとは成長しようとか思いなよね」
お互い笑い合い握手をし、教室を出た。 桜が舞い散っている中歩くのも、なかなかオツなものかなと少し大人になった気分で校門を出てエースと別れた。
- 素敵な日々をありがとう -
いらっしゃいま……エース!? は!?名前?なにしてんだよ …バイト。エースこそどうしたのよ 俺はあれだ。仕事帰りだ… ……なんか…あんだけカッコつけて卒業したのに、こんなに早く再会とか…何か恥ずかしい ……思っても言うなよ…
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