一通りクラスメイトの自己紹介は終わった



「それじゃあ、席替えしようか」



先生の一言で席替えが始まった。
目の悪い人は前に、それ以外の人はくじ引きを引いた。
できれば、周りに女の子がいる場所がいい。そっちのほうが早く友達が出来るかな、とかそういうのだ。



私の引いた席は窓側の一番後ろの席だった。
この時点で関わることが出来る範囲は隣、前、斜めだけになってしまった。少し残念だ。
自分の荷物を手に持ち、新しい席へと座った。
そしてびっくりした。

私が唯一興味を持っていた赤司君が私の席の隣に座ったのだ。


近くで見る赤は先ほどまでのような威圧感もなく太陽に照らされて、光る髪がとても綺麗に見えた。遠くから見ていた赤も綺麗だったが、近くでみる赤はまた違った綺麗さを持っていた。染めたようには見えない綺麗な赤だった。もしかしたら地毛なのかもし


「どうかした?」

「え」


なぜか、赤司君に話しかけられてしまった。
今まで考えていたことが突然途切れた。なんて答えたらいいか分からなかった。どうかした?って私はどうかしたか?



「見ていたから」



ああ、そうか、彼の髪を見ていたからか。そりゃ、そうだ、初対面の人間がずっと髪の毛を見つめ続けていたら気になる。
髪の毛から目を離し、赤司君の顔を見た。赤司君が私の方を向いていたので、目が合うことになった。合った目は髪と同じように赤かった。
どこからどこまでも赤で目を奪われた。赤を綺麗だ、と思ったことはなかったけれど、赤はとても綺麗なのかもしれない。
赤に見とれている場合ではなかった。なかなか返事を返さない私に赤司君は不思議そうに首をかしげた。



「あ、ごめんなさい。えっと、赤いから、見てて」
「珍しいから?」
「最初見たときは、そう思っていたんですけど、今は、えっと、
綺麗だから」



珍しいから?と聞いた彼は、少し嫌そうに見えて、なんて言ったらいいのか分からなくなり、考える間もなくただ思っていたことがどんどんと口から出ていた。



「そうか……こういうときはありがとうと言えばいいのかな?」



笑った。
赤司君は笑った。微笑んだ。顔が緩んだ。
なんて表現したらいいか分からないけど綺麗だと思った。
赤い髪も、赤い目もその表情も綺麗だと思った。
異質な空気を放っている人だと思っていたけどそうではないみたいだ。普通の中学生だった。いや、これだけ綺麗なのだ、普通の中学生というのには当てはまらないのかもしれない。



「あ、えっと、白川葉月って言います、よろしくお願いします。」
「よろしく、赤司征十郎だ」



少し遅れた自己紹介をして、一緒に笑った。

隣にだけ気がいっていたが、私の前は女の子だった。女の子が周りにいてよかった。斜めの人は坊主だから野球部の人だと思う



その後、教材を取りに行ったり、係を決めたりした。
私は、係の名前や委員会の名前を見てもどんなものなのかあまり分からなく、「図書委員」という本を片付けたりする分かりやすい委員会を選択した。
赤司君は生徒会に入っているらしく、係も委員会も入らなくていいらしい。



「それじゃあ、今日することは終わりだ。明日は新入生歓迎会だな。この中には明日出るやつもいるかもしれないな。がんばれよ、授業は明後日からだ。それじゃあ、さようなら」



先生がしゃべり終わると、坊主の人たちは一斉に教室から出て行った。多分、部活がすぐに始まるんだと思う。



私は、早く友達を作るため、前の女の子に話しかけた



「えっと、初めまして、白川葉月って言います」
「あ、編入してきた子だよね?私は、金城弥生、よろしくね」



その子はとてもいい子ですぐに話ができた。彼女は陸上部に入っているらしい。



「葉月ちゃん、部活動まだ悩んでいるんだっけ?」
「あ、うん」
「陸上とか、どう?」
「あんまり運動が得意じゃないから文化部かマネージャーしてみたいなーって思っているんだけど……」
「文化部なら、美術部と合唱部がうちは強いよ、マネージャーは……なるの難しいんだよねー」
「え?」
「うちの学校結構部活強くて、だからマネージャーもやる気ある人じゃないとダメなの。部員の誰かに憧れてーっていう理由だとあまりいれてもらえないかなー。
あと、その部活動をしている誰かからの推薦も必要なの。
強い部活ほど結構かっこいい男子多くてそういうの目当ての女の子とかいるじゃん?そういうのを少しでも防ぐための策なんだってー」
「なるほど。」



じゃあ、マネージャーっていうのはやめて、文化部で考えた方がいいかもしれないな。



「バスケ部のマネージャーなら僕が推薦してあげるよ?」



私達の会話に赤司君が入った



「赤司が誘うなんて珍しいね。」
「そうでもないよ」



二人は去年も同じクラスだったらしく、お互いをよく知っているみたいだった



「バスケ部はうちにある部活じゃ一番強いからねー。あ、こういうこと言うとサッカー部や野球部が怒るんだけどね?一番強いからこそマネージャーにはなりにくいの。部員数は多いのにマネージャーはどんどん辞めさせられて、うちの学年じゃもう三人しか残ってないんじゃないかな?」
「そんなにすごいんだ……」
「白川さん、一応バスケ部のこと考えておいて」



そう言って赤司君は教室を出て行った



「葉月ちゃん、赤司に何かしたの?」
「へ?」
「気に入られているみたいじゃない。赤司が自分から女子に話しかけるなんて相当よ?」
「そうなの……?でも弥生ちゃんはそんなことないよね?」
「あー私は去年いろいろあったからねー。
赤司って結構女子に人気なのよ?」
「あ、うんそれはなんとなく分かる。赤司君の名前を聞いたとき皆ざわついていたから」
「あいつ、一年のとき全教科ずっと一位だったの」
「え?」
「運動神経は抜群。バスケ部って人数多いから入部当初って基本三軍からなの。二軍からっていうのでもすごーーーく珍しいのに、赤司は最初から一軍入り。バスケだけじゃなく、どんなスポーツをさせても強い。」



人間というものは得意不得意というものがある。
できることできないこと、それは人それぞれ。
中には何かに秀でていて他は何も出来ない人
何でも器用にできるが、特別何かが出来るわけではない人
そういうふうに人間は作られていると私は思っている、というか皆思っていると思う。
彼女の話を聞く限り赤司君はなんでも出来るらしい。



「すごいね、赤司君って」
「それであの顔でしょ?本当、羨ましいわよねー。
おっと、話している場合じゃなかった。私も今から部活なの。部活決めるの悩んでいるなら明日の新歓をしっかりみるといいよ葉月ちゃん。あれ、結構面白いから」
「あ、うん、ありがとう、また明日」
「ばいばい、また明日」







帝光中学校一日目。
それなりにいいスタートダッシュができた気がする。
私は荷物をまとめ家に帰った。

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