02



「はあ、はあ……」


う、運動不足。完全に運動不足。
先月のライブ終わってから筋トレをサボったせいかこの少しの距離を走っただけで大分息が上がった。隣にいる女の人も息が上がっているみたいだ。


「お、会場見えてきたな。大丈夫か?」
「は、はい、なんとか……」


うん、見た感じ大丈夫じゃなさそうだな。
時間を確認すると、これまた大丈夫ではなさそうだ。


「時間やばいけど、あと少しだからペース落とすか」


私は走るのをやめ、歩きはじめた


「あ、あの」
「ん?どうした?」
「手、が……その、」


手?
私達は先ほど迷子と別れた場所からここまで手を握って走り、現在も手を握って歩いている。別に女の子同士だし、そんな意識することじゃないだろ、
……そうか私は男か!!




「おー、わりぃー。ちょっと急いでいたから」
「いえ、すいません。」


女の人は頬を染めた。
いや、染めないでください。こっちも照れます。普通にしたことなのに、なんか私が悪いみたいじゃん?


「お、見えてきたぞ?」
「な、なんとかつきましたー……。」







時間を確認すると集合時間よりも5分遅れていた。







□□□






Ms.天音に早乙女学園に通うように告げてから一日たったが、一体何時にくる予定だ。

試験会場にちりばめてあるカメラに天音の姿は見えない。天音なら二時間前にくるとは思ったが。私が天音の男装姿が分からなかったということはないだろう。彼女が試験を受けないという選択肢もない。では、なぜカメラに写らないのか……。





『お願いです!お願いです!どうしても受験したいんです!!』
『だめだ、規定の時間を過ぎての受け付けは一切認めない。』
『お願いします。私どうしても試験を受けたいんです。この早乙女学園で音楽の勉強をしたいんです』
『しつこいぞ、君』
『時間遅れた俺らのが悪いけど女の子を倒していい理由にはならないよね?』


はははー天音さんこんなところにいましたカー






□□□




全く女の子倒すなんてひどいよね。
私は女の子の手をひいた

「諦めて帰りたまえ」
「待って、待ってください!」


尚も女の子は引き下がろうとはしない。
赤髪の男が傘を私達にさした


「大丈夫?風邪ひいちゃ大変だからねー」


あー、雪か。走っていたからあんま気にしなかったけど、確かに風邪ひいたら大変だなー。


「なんだ君は」
「受験生だけど?ねぇ、こんなに頼んでいるんだから、受けさせてあげてよ。遅れたって言っても試験まであと30分あるんだからさ」
「だめだ!遅刻は遅刻。時間を守れない時点で、この早乙女学園の生徒に相応しくない。」


んー、正論かなー。こりゃ試験受ける前に私は資格なしか、


「理由によるんじゃない?」

黒い車からオレンジ髪の男が下りてきた。こちらへと近づいてくる。


「そのレディ達が遅れたのは迷子の子供を助けていたからだ。」

へーあの場所にいたんだ。


「子羊ちゃんが早乙女学園の受験生だと知っていたら、車に乗せてあげたんだけど」

そう言ってオレンジ男は女の人に話かけた。おう、私は無視か。

「あの子、傘を無くしたんだってね。」
「あ」


彼が取り出した傘は先程彼女が迷子にあげたものだった。


「心配しないで。俺が買ってあげた新しい傘を気に入ってくれたみたいだし。
雪の中迷子の子供を捨ておく生徒がいるとしたら、それこそ、この学園に相応しくないんじゃないかな。」
「だよね!受けさせてあげようよ!」


赤髪も賛同した。


「お願いします」
「お願いします」


ま、頭を下げるくらいなら……。


「だめだ、だめだ、」


男性は頑なに通そうとはしてくれない。門番の二人のうちの一人の携帯が鳴った。


「は、はい、はい?あ、はい。分かりました。」


男性は首を傾げながら近づいてきた。


「いいらしい。」
「通っていいぞ、特例として受験を認める。」


おー、まじっすかー


「ありがとうございます。」
「ありがとうございます!」


「やったじゃん!」
「ありがとうございます。ありがとうございます。」


女の子は赤髪とオレンジ男に言った


「ありがとう、助かった。」


私はオレンジ男に感謝の意を述べた……が、無視された。


「いいこと言ったね」


今度は赤髪が話かけたがそれも無視。


「試験がんばれよ。子羊ちゃん、そして4月に会おうな」


……釈に障るなこの男。こいつ絶対にタラシだ、絶対にそうだ。


「お互いがんばろうぜ!」
「はい!」




私は赤髪にも礼を言い試験会場に入った。




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