03

「天音ちゃんお疲れさまー」
「お疲れ様です!」
「相変わらずいいステージだったね」
「えへへ、ありがとうございます!」


私がステージの裏に戻るとスタッフ達が快く迎えてくれた。


一番奥でHAYATOも待ち構えていた。


「HAYATOどうだった?私のステージ?」
「……さすがだにゃー」
「ありがとう!次はHAYOTOが盛り上げてね!」


HAYATOは私の言葉を聞いてからスタッフと一緒にステージへ向かった。


「それでは登場していただきましょう!」



キャアアアアアアアア
HAYATOー!!!!!


さすがHAYATO。すごい声援だ。正直嫉妬するレベル……。
一ノ瀬トキヤとしての彼は言ったら悪いけどそれほどでは、ない。
でもHAYATOとしての彼は私も好きだし、久しぶりに生でHAYATOのステージを見ることができてとても嬉しい。



「おーはやっほー!今日は僕のライブにきてくれてありがとうね〜。」


HAYATOがステージに立つと歓声はより大きくなった。
しかし、HAYATOの登場の仕方は足を怪我している人間ができるものではなかった。
あんな着地をして足は大丈夫なのか……。






今歌っているHAYATOが完全なコンディションではなく、足を怪我している……。その結果、演出がこの程度になってしまったのなら、しょうがない。
ただ、私が知っているHAYATOとは掛け離れていて、とてもじゃないが今の彼を同じアイドルと呼ぶことはできない。


HAYATOはマイクを落としてしまった。


しかし、HAYATOがそれを拾おうとするそぶりはなかった。




どうしたの
なに?
HAYATO?
HAYATOー
HAYATOー
がんばってー
HAYATO様ー




観客の心配の声が上がっているときに、突如大きな雷が近くに落ちた。それと同時に雨も降りだし、観客達は次々と会場から出ていこうとした。
その波とは逆に、ステージに進んでくる人物がいた。
それは四ノ宮くんであった。


「え?」


「HAYATOー、なぜ偽りの歌を歌う!」


いつもの四ノ宮くんの雰囲気とは似ても似つかなかった。


「天音ちゃん、裏に行くわよ。」
「すいません、後で行きます。」


私の手を掴んだスタッフを拒み私はここに居続けることにした。


「お前の本心は真っ暗さ。イライラするぜ。俺は自分をごまかさない、四ノ宮那月の影さ。
俺の歌を聞け」


四ノ宮くんの……影。


「お願いします」


四ノ宮くんの言葉を聞きHAYATOは彼の曲を聞くことを選んだ。



伴奏が始まり、四ノ宮くんの歌が響いた。
彼の歌っているところをたまに聞いたことはあるが、それとは違い、深く、胸に刺さる、そんな歌だった。正直、HAYATOなんかよりも心に響いた。




四ノ宮くんが歌っているのに聴きいっているとさらに見覚えのある二人がステージに上がってきた。


春歌ちゃんと翔だ。


春歌ちゃんの手には眼鏡が握られており、そのまま四ノ宮くんに近づいた。
それに気づいたのか四ノ宮くんは春歌ちゃんの手をとった


「楽しいことしようぜ」
「へ?」


そのまま春歌ちゃんの腰に手を回し引き寄せた。
私が行動したのはその動きとほぼ同時だった。


「離しなさい、女の子にそんなに近づいていいわけないでしょ。さっさとステージを下りなさい。ここは貴方のような人間が立つステージではない」
「なんだ?」


私の知っている四ノ宮くんとは違う目をしたまま、私を見た。


「なるほどな。女、お前も面白いな」
「は?なに、」


四ノ宮くんは春歌ちゃんから手を離し、今度は私の手をとった
そして耳元に唇を寄せた


「お前、那月の知り合いの響だろ。偽って那月に近づくな」


何を、言っているんだ、那月は君だ、ろ


「那月てめぇ、離れろ!!」


後ろから翔の声がしたかと思うと、ピヨちゃんの帽子を被せた
すると、先程までの四ノ宮くんとはちがい、よく知る彼の雰囲気になった


「七海さん、翔ちゃん、と天音さん?」


四ノ宮くんはまるでここまで至った経緯を覚えていないという振る舞いをした。


「すいませんでした!行くぞ、二人とも!!」


翔は私に深く頭を下げ、四ノ宮くんの手をとり、ステージから降りて行った。
それを春歌ちゃんが追い掛けたがステージにある配線に彼女は躓いた。
彼女はたまたまHAYATOの目の前に倒れた。


「え、HAYATO様……!!」


HAYATOのファンだと言っていた彼女にとったらとんでもないハプニングであった。頬を染めHAYATOの顔を見れないのか俯いた。すると先程までと反応が一転した。


「え、もしかして一ノ瀬さん?このあ」
「七海、なにやってんだいくぞ?」
「は、はい。」



翔に呼ばれ春歌ちゃんは慌ててステージに降りた。


……完全にHAYATOの正体はばれたかもしれない。




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