何の変哲もないコンビニで、何をしているの、と呆れを含んだ言葉が通る。声を掛けられた元気印──ナルトは聞き覚えのあるそれに笑顔で振り返った。 「よっ!アリス!珍しいなこんな所にいるなんて」 「通りかかったら貴方が見えたから・・・それで?そのカゴいっぱいのお菓子は何」 疑問文が疑問形になっていない言い方でアリスの目がナルトの持っているカゴに注がれる。 子どもが好みそうな物から大人でも買うような物までこれでもかと放り込まれているそれに、アリスは何をしたいのと聞きたそうに眉を顰めた。 「ほら、オレってばもうすぐ極秘任務で楽園に行くじゃん?そりゃ自然豊かで楽しそうだけどさ、長くなるかもしんねェしやっぱこういうの食べたくなるだろうから買っとかないとな!」 「貴方極秘任務をなんだと思っているの」 いや、実際は任務ではなく八尾と九尾の保護なのだからお菓子を持っていこうが玩具を持っていこうが問題ないのだが。──だがしかし、仮にも極秘任務へ行くという立場でそんなものを持っていくとは何事か。 頬を引き攣らせるアリスの目に映るナルトは大蝦蟇仙人の言うリゾートという言葉が任務より勝っているのだろう。浮かれに浮かれている。 そんな彼にアリスは溜め息を一つ吐くとツィと菓子に向かって指を払った。途端に浮き上がって置いてあった棚に次々と戻っていくそれらに、ナルトが「あああ・・・!」と悲痛な声を上げる。 「何すんだってばよ!?」 「行先がどこであれ任務は任務でしょう。鞄にお菓子を詰める余裕があるなら忍具を詰めなさい、忍具を」 全ての菓子が棚に戻ったところでナルトの腕を引いて外に出るアリス。 ブーブー文句を言うナルトに話を逸らすべく「そういえばタコに会うとのことだけれど」と言えば意外にも思い出したような声を零して隣に並んだ。 「そうそれ!デカじいちゃん仙人がさ、タコが協力してくれるって言ってたけど実際どうなんだってばよ。タコっつったらたこ焼きに入ってたり酢の物に入ってるのしか思い浮かばねェんだけど」 「や、流石にそういうタコではないと思うけれど・・・」 食用のタコの話にアリスが呆れた表情で苦笑いを零す。 首を捻って「タコ、タコ」と頭を悩ませているナルトはしばらくすると面倒くさくなったのか諦めたように溜め息を付いた。 「・・・なぁなぁ、アリスも占いとかできたりすんのか?」 「え?・・・あぁ、えぇ、まぁ」 占い、というと五影会談の帰りに話した一族の能力の事か。 そういえばそんな話もしたなと少し考えたアリスがコクリと頷く。そしてこの先のナルトの言いたいことに予想がついてしまったのだがどうしたら良い。 首を捻る間もなくタコがなんなのか教えてほしいと手を合わせて頼まれて、アリスは渋い顔になった。 別に見られないわけじゃないがそんなことをして良いものだろうか。ナルトが自力で辿り着いてこそでは・・・。 何より自分は先見や結界、回復といった、繊細なコントロールが必要な術や魔法は攻撃と比べると劣る方だ。 「──ということだからそちらを専門にしている方に比べると本当に微々たる所までしか分からないわよ。逆に先入観を持ってしまうかもしれないし、自分で見つけた方が・・・」 「いいからいいから!大丈夫!アリスなら出来るってばよ!」 若干投げやりに推してくるナルトに少し考えるアリスだがここで粘っても不毛なやり取りが続くだけだと思ったのか小さく溜め息を付いて近くのベンチに移動した。 どうやって見てくれるのかとワクワクしているナルトを前にして何気なく腕を振ると一瞬の後に手に納まっていたカードの束。 「えっと・・・タロットカード、ってやつだっけ?それで占うのか」 「そのようなものよ。何度か選んでもらうから、深く考えずにこれだと思ったものを教えてね」 滑らかにカードを切るアリスの表情が落ち着いたものになっていって雰囲気もどこか不思議なものになっていく。 十分に混ざったところで机へ広げるような感覚で宙に扇状に並べると、少し気取った改まった口調でどれか一枚を選ぶよう言った。 それにしたがってナルトが一枚選べばそこから端までのカード数が多い方を拾い上げて、少ない方は纏めて伏せたままナルトの前に出す。 「・・・六枚、選んで」 指示に従って選ばれた六枚をそれぞれ重ならないように並べると残りは隅に寄せられる。 次に拾い上げたカードをナルトに手渡すと先程の六枚の上に好きなように重ねていくよう言った。 「──うーんと、これでいいのか?」 「ありがとう」 礼を言って指をツイと払うように滑らせれば六つの山が表に返ってそれぞれ扇状に広がる。結果が出た分かったナルトが真剣な表情でカードとアリスを見比べていた。 というよりあの程度のカード選択で未来なんて分かるのだろうか。 占いというと・・・あれだ。カードは勿論だがもっと怪しい雰囲気で水晶玉とか変な文字とか質問とかが出てくるのを想像していた。 そういった趣旨を思わず零せばアリスは少しポカンとした顔ナルトを見つめてからクスリと苦笑いを零す。 そして結果の出たカードを眺めながら「そうね」と口を開いた。
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