巡り会いてV | ナノ

目の前に構える阿吽の大門。
アリス達一行はそれを見てようやく帰ってきたとホッと肩の力を抜いた。しかし事態が事態だ。息を吐くのはあくまでも心の中に留めておく。
先頭に立つアリスは出迎えてくれた忍達に目を寄越した。

「お疲れ様でした」
「お出迎えありがとう。連絡は届いているわね」
「はっ。随分と荒れた会談になったようで・・・御無事で何よりです」

先に報告を受けていた忍達の表情が険しいものになる。木ノ葉の忍であった、サスケが起こした騒動だ。同じ里の忍が仕出かしたとなれば心境は複雑だろう。

「・・・大名からは」
「連合軍の承認を得ました」
「すぐにカカシ先生を大名のもとへ。六代目火影に任命され次第、緊急会議を開くわ。それと・・・ダンゾウの、葬儀の手配もお願い。大きなものでなくていいから」
「はぁ・・・ダンゾウ、様、の葬儀ですか」

訝しげな表情の忍に小さく頷けば「かしこまりました」と気が進まない様子ながら返事が返ってくる。里のために生きてきたダンゾウだが如何せん性格が性格、やり方がやり方だ。色々と仕込まれてきた“根”はまた別の話として、里の殆どの人間からは良い目で見られていない。
しかし、共に里を導いてきた三代目や相談役などはきっとダンゾウの死を悼むだろう。
戦争を控えているため大々的には出来ないが、せめてもの葬儀はきちっとして差し上げたい。

「・・・あぁ、それと香燐・・・カカシ先生が背負っている女性はイビキに引き渡して。聞き出せることがあれば聞き出してほしいけれど、傷を負っているし扱いは丁重に。
 “根”は取り敢えず暗部と同じように火影直轄にして、余裕が出来たら改めて割り振りを考えましょう。わたくしはヒルゼン様の下へ行くから、あとはお願いします」

指示を出すだけ出すとアリスは三代目がいるであろう火影邸へ足を向けた。

──────────

「失礼します、ヒルゼン様」
「帰ったか。ご苦労じゃったな」

アリス達が五影会談で不在にしていた間、火影としての役割を担っていたヒルゼンが書類から顔を上げてアリスを迎える。ダンゾウの訃報があったせいか普段より少し表情の硬い三代目にアリスは眉を顰めるが敢えてそこに触れることなく五影会談でまとまったことを報告した。
そして最後にダンゾウの葬儀の話も少々。

「──分かった。・・・いろいろと大変だったのう」
「えぇまぁ・・・しかし本当に大変なのはこれからですので。それより家の方からは何か連絡はございましたか」

これから戦争だという事を思い浮かべて少しうんざりした表情を浮かべるアリス。数年前に木ノ葉崩しがあって少し前にペイン襲撃があって、それでもって今度は戦争か、と。
しかし不意にイタチ達の事を思い出したのかただ単に話題を変えようと思ったのか、家の様子はどうだったのかと三代目に目を向ける。
あぁそれなら、と言葉を続ける三代目の表情は別段悪くなく、回復に向かっていることがうかがえた。

「影分身の報告を聞いている限り順調そうじゃ。ワシも何度か見に行ったが、最後に会った時はイタチはだいぶ動けるようになっておったし長門の方も足を動かす訓練をしておった。そうじゃ、つい二、三日前にイタチの包帯が取れたと聞いたぞ」
「まぁ、思ったよりも随分早い回復ですのね。流石綱手姫が見ただけあるわ。ではわたくしも会議が始まる前に一旦家に戻らなくては・・・」

その言葉に頷いた三代目にアリスは退室の挨拶を述べて、今度は自分の家へ足を向けた。

──────────

そうか、と。アリスから五影会談の事を聞いたイタチが包帯の取れたばかりの目元を覆ってそう零した。
会談を荒らしダンゾウを殺したサスケと、それを唆したマダラに大きなため息を禁じ得ない。

「しかし忍界大戦か・・・また大きな戦が始まるんだな」
「えぇ、えぇ、貴方を筆頭に“暁”が七尾まで集めてくれたから、マダラが残り二体を集めようと躍起になっているわ」
「・・・すまない」

皮肉るように言うアリスに長門が気まずげに目をそらして謝罪する。妙な空気になったのを察したイタチが気を取り直して「それで」と話を続けた。
アリスが戦争に出ないとはどういうことだと聞けば今度はアリスが困ったような表情を浮かべる。

「その首のチャクラ、マダラのものだな。それの関係か」
「どんな術なんだ」
「わたくしにもよく分からないし、サスケやヒルゼン様、それから封印呪印に詳しい方々にも見てもらったけれど結局分からずじまいなのよ。イタチはどう?何か分かるかしら」

話を振られたイタチが一度目を閉じて、開けて、三つ巴になった瞳でアリスの首を見る。──が、数秒見つめたと思えば眉を顰めて、仕舞いにはゆるりと首を振った。
見たことのない術式だと答えるイタチにアリスが眉を下げて溜め息を一つ零す。
ここまで分からないとなるとオリジナルか秘伝の類だろうか。厄介な。

「兎にも角にも、これのお蔭でわたくしは後方支援決定だわ」
「お前には仲間を守る術とそれを持続するチャクラがある。そう不貞腐れるな」

拗ねた様子のアリスにイタチが小さく苦笑いを浮かべて諭す。それでも、戦争の話が出た時に最前線に立とうと決意していたアリスは出端を挫かれたと落ち込み気味だ。
しかし小さい子を見守るような眼差しを向ける長門に気付いて気を取り直すように咳払いを一つ。

「まぁ、まったく何もできないわけではないのだから、あまり気に病むのはやめるわ。
 それより二人は大丈夫なの?影分身からの情報だと体調は良好のようだけれど・・・」
「目は問題ないが体の方はまだ少し掛かりそうだ。激しい戦闘でなければ動けそうだがな」
「オレもチャクラは戻ったし上半身なら動かせる」

二人共思ったよりも回復が早い。が、戦闘は駄目だろうついこの間まで瀕死だったんだから。
呆れ半分心の中で突っ込んだ。
そこへ長門が思い出したように「そうだ」とアリスに目を向ける。近々一旦雨隠れに戻ろうと思う。その言葉を聞いたアリスの表情はあまり芳しいとは言えなかった。

「貴方ね、その体で戻れると思っているの。これから戦争で忙しくなるし、わたくしは付き添えないわよ」
「問題ない、イタチが来てくれるそうだ」
「イタチも一緒です。重病人が重病人を連れ歩くなんて不安どころじゃないわよ。ただでさえ雨隠れまで一日ちょっと掛かるというのに」

腰に手を当てて眉を吊り上げている彼女に二人が顔を合わせる。
言い分を聞くに、小南が心配だという長門だが流石に一人ではいけないし小南も反対することは目に見えている。アリスも五影会談に呼ばれて忙しくなることは分かっていたから付き添いは難しいと踏んでいた。ということで、ならばと同行を申し出たのがイタチらしい。
体が訛り過ぎる前に動かしておきたいし写輪眼の調子も見ておきたい。雨隠れなら距離も丁度いい。
淡々と述べられて、アリスは頭が痛いというように手で顔を覆ってため息を吐く。

行く、駄目だ、とやり取りが続いてしばらく。
不意にアリスは家の外に誰かが来たことに気付いて顔をそちらに向けた。どうしたと目を向ける二人に来客があったと告げると断りを入れて部屋を出た。
玄関のドアを開ければ立っていた一人の暗部。まさかイタチと長門の事ではと内心冷や汗をかくも面には出さず「どうかした?」とゆるりと首を傾げてみせる。

「綱手様が目を覚まされました」

少し弾んだ声で告げられたそれに、アリスは目を丸くした。


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