「──あ、イズモ、コテツ」 「アリス様!?」 薄暗い異空間で、アリスに声を掛けられた二人が振り返る。ついでにその向こう側にも誰かがいて体を少し傾けてみればダンゾウの護衛をしていたフーとトルネがいた。 橋で見なかったからどうしたのかと思っていたがまさかここに飛ばされていたとは。 「ともかく四人共無事で良かったわ」 「良かったじゃないですよ!何故アリス様までこんな所に・・・」 「二人を迎えに。ついでにフーとトルネも見つけられて良かった」 にっこり笑って言ったアリスにイズモとコテツが何をやっているんだと頭を抱える。この様子じゃ相手にやられてではなく自分から乗り込んできたに違いない。重要な時期だというのにこんな何処とも分からぬ場所へ安易に乗り込んでくるとは何事か。 軽率な行動にイズモとコテツがお説教を始めようとするが、長い話が始まる前にフーとトルネからストップがかかる。 「まずは脱出が先だろう」 「アリス様、我々は少し早くこちらへ来たので周辺を探索してみたのですが、どうやら出口の類はないようです。いかがなさいますか」 フーの報告にアリスは考え込むようにしばらく俯いた後、辺りを見渡した。そして再び少し考えると案を思いついたらしく「よし」と小さく零す。 この空間を壊すと、説明口調で言う彼女に痛いほどの沈黙が流れた。 「──あ、あの、それ大丈夫なんですか? というか出来るんですか?」 「出来ないことはない、かしら。空間を魔力で満たして圧力を掛けて少しずつ綻ばせていけば何とか・・・」 「しかし出られなければ意味がないのでは」 「恐らく壊れる前にマダラが出してくれるわ。ここが無くなっては術が使えなくなってしまうでしょうし」 あぁ、と納得したような声を零すイズモ達。しかし実行する前にアリスは何かを思い出したらしく顔を曇らせた。フーとトルネに顔を向けて言いにくそうに口を開く。 ダンゾウが亡くなったと、眉を下げて言ったその言葉に二人が顔を見合わせた。 「・・・先程そちらの二人から聞きました。うちはサスケにやられて、最後は“暁”を道連れにしようと封印術で・・・。それに“根”に施される呪印が無くなっていましたから」 感情の読めない声で聞かされたアリスは前髪をクシャリと掴むと目を閉じて大きく息を吐いた。部下である自分達よりダンゾウの死が堪えているらしい彼女にフーとトルネはどうしたものかと眉を下げる。 「わたくしのミスだわ。まさかサスケにやられるとは思わなかった・・・もっと考えて行動していれば」 「我々は忍ですからいつ命を落としてもおかしくありません。ダンゾウ様も最後まで里のために在れたのならば本望でしょう」 「それはそうかもしれないけれど・・・」 「今はここを出る事だけを考えましょう。長居していては何が起こるか分かりません」 二人に説得されて、アリスはもう一度息を吐いて小さく頷く。そして闇のような空間を見上げると集中して力を込めた。 [ back ] |