嫌な音を立てて、肉が断たれる。 胸元に広がる赤にアリスは目を見張って光剣の先を見た。 「サス、ケ・・・」 何故とでも問いたげに言葉を零すアリスの目に歪んだ笑みを浮かべるサスケが映る。 アリスが、避けきれなかった。 イズモもコテツも、そしてマダラも、その予想外な展開に息を呑んで状況を把握しようと止まった思考を巡らせる。 光が途絶えてアリスが膝をついたところでようやく二人が弾かれたようにアリスに駆け寄った。 マダラも驚いたようにサスケに目を向ける。当の本人はマダラの視線など気に留めず自分を睨み付けるアリスを見て喉を鳴らしていた。 「どうしたアリス。俺に殺られるとは思わなかったか?」 「まぁ…それだけではないけれど・・・ねぇサスケ、もしかして知ってた?」 「・・・俺がどれだけお前と一緒にいたと思っている」 サスケの答えにアリスは「そっか」と顔を歪めて息を吐く。 その当人達だけしか分からない会話にマダラが眉を顰めてサスケに目をやった。 「どういう事だ」 「何故アイツを手に掛けたか、か? ハッ、復讐の邪魔になるからに決まってるだろ」 歪んだ笑みを見せるサスケに目を見張る。 あれほどアリスを気に掛けていた男が手の平を返したような発言だ。ダンゾウの一件で吹っ切れたか? イズモとコテツに支えられて体を起こすアリスの傷を見たところ急所は外れていた。あれではまだ動ける。しかし避けようと体をずらさなければそれなりのダメージは与えられただろう。 「アリス様・・・」 「いい。これくらいならすぐに塞がるわ」 「何故避けなかったのです。あの程度の攻撃、アリス様なら」 心配する二人を制して立ったアリスが荒い息をそのままに眉を顰めてサスケに目を向ける。 避けなかったのではなく、避けられなかった。 サスケもそれが分かっていて攻撃してきた。 「バレてないと、思っていたのだけれどね・・・」 流石五年近く一緒にいただけある。ダンゾウの保護に魔法なんて使おうとするんじゃなかったかな。 痛む傷に無意識に手をやって、サスケの写輪眼を見て息を吐いた。 一方のサスケもアリスと目が合うと嫌な笑みを深くする。 ずっと一緒に居て、アリスの事を少しでも知ろうと努力して、実際に誰よりも近付いた。だからこそ今回だってチャクラと魔力を扱うアリスの欠点を突くことが出来た。 「(お前は術と魔法を同時には使えない)」 使用できるのは必ずどちらか一方。それに、それだけじゃない。チャクラから魔力に、魔力からチャクラに切り替えるには少し時間がかかる。そしてその間は魔法も術も使えなくなる。だからインターバルはいつも相手の気を引く会話で時間を稼ぐのだ。 「ダンゾウよりも先に俺をどうにかするべきだったな」 「あら、避けようとしなくても急所には当たらなかったと思うけれど?」 「マダラがお前には利用価値があると言った。初めから生け捕りにするつもりだった」 「うちはサスケ! 本気で言ってるのか!? アリス様と一番仲が良かったお前がなんで・・・!」 「言っただろう。復讐の邪魔をするなら例えアリスでも容赦しない」 酷く冷めた目にイズモとコテツが息を呑む。 あの、サスケが。いつもアリスを気にかけて隣を歩いてきたサスケが。まさかあんなことを言うなんて。 呆然とサスケを見る二人。しかし不意にアリスが嘔吐いて血を吐くとハッとしてその背に手をやった。 心臓は外れているとはいえ周辺の臓器を損傷している。悠長にしている暇はない。 険しい表情でどう切り抜けるか思案しているイズモとコテツにマダラは小さく嗤った。 「さ、どうする。中忍二人では俺達には勝てないぞ」 「・・・アリス様、少しだけですが足止めをします。その間にどうか「馬鹿ね、貴方方を置いていけるわけないでしょう」しかし・・・」 荒い呼吸を繰り返すアリスはそれでも緩く首を振る。絶対に四人で帰るのだと。 しかしそれを止めたのは後ろにいるダンゾウだった。「もういい」と低く唸るように言うダンゾウにアリス達が振り返る。 [ back ] |