巡り会いてV | ナノ

「なんか、懐かしいってばよココ」

ごちゃごちゃしていても時間の無駄ということで移動をした五人は懐かしげに辺りを見渡す。
三本の丸太が立てられたそこから、嘗ての自分達は始まった。

──チリン

感傷に浸っていたところでフと聞こえた鈴の音。ハッとした子供達の視線の先にはいつかの演習で使われた鈴があった。
「どれだけ成長したのか見てやる」というカカシの言葉にナルト達の表情が引き締まる。

「・・・ナルト、サクラ、勝っていらっしゃい」
「ヘマすんじゃねェぞ」
「分かってる!」
「任せて!」

二人の背を順に叩いたアリスとサスケは演習の邪魔にならないよう森の方へ足を向けた。

「ルールは初めて会った時と同じ、どんな手を使ってもいいから俺から鈴を取ればいい。俺を──」
「殺すつもりで来ないと」
「取れないから、でしょ?」

引き継いで言った二人にカカシは小さく笑う。期限は“明日の日の出”までだ。


カカシが額当てを上げる

ナルトとサクラが構える

風が吹いて鈴を揺らしたところで──


「いくぜっ!」

ス、と放たれた手裏剣をカカシが体を落として避ける。そのまま此方からも手裏剣を放って上へ跳んだところを更に追撃したところで、ナルトが影分身を使ってそれを避けた。

「やるな・・・」
「(上手い!身動きの取れない空中での移動手段に影分身を利用した!)」

更に分身体を大きな手裏剣に変化させて構える──が、

「はい、そこまで」

背後に回ったカカシに手裏剣を持つ手と頭を押さえられて動きを止めた。昔と比べて大きくなったと懐かしむカカシは、自身の背にクナイを突き付けるもう一人のナルトにチラリと目をやる。

「影分身の使い方、タイミング上手くなっちゃって。・・・成長したな、ナルト。だが・・・まっ、せっかちなのは相変わらず変わってないみたいだな」

「まだスタートとは言ってないだろう?」と昔と同じ言葉を紡いだカカシが改めて勝負開始の合図を出すため口を開く。

「用意・・・スタート!」

ボワン!


「あら、開始早々に消えてしまったわね」
「ったく、何逃してんだウスラトンカチは・・・」

姿を眩ませたカカシにアリスは小さく笑いサスケは取り逃したナルトにため息を吐いた。森に入った時に合流した綱手達と共に見守る中、ナルトとサクラは注意深く辺りを見渡す。

「(右・・・上・・・左 ──後ろ)」

サクラが辺りを窺っているのを見てアリスは少し楽しげに口元に手を添えた。

「そろそろアレ、出るんじゃない?」
「カカシのやつ驚くだろうな」

「(どこでもないなら・・・)下ァァァ!!

サクラが拳を振り上げて地に叩きつけた途端、砂埃と破壊音を上げて周辺の地面が砕けていく。

「うわっ!?とっと・・・ へ?
「な、なんつー馬鹿力だ・・・」

ナルトとカカシが酷く驚いているのが見えてアリスは小さく声を上げて笑い、綱手は「よし!」と満足げな表情になる。自来也など最早呆れ顔だ。

「弟子は師に似てくるものだが・・・サクラは似すぎだな」
「ナルトと自来也殿が中間で、わたくし達はある意味似てないわよね」
「ある意味?」
「そうよ。サスケ、貴方戦い方が大蛇丸に似てきちゃって・・・いえ、動きはわたくし譲りなのだけれど・・・どうにも全体像があの男を彷彿させると言うか・・・ねぇ」

ほぅ、とサスケを見てため息を吐くアリス。目が合ったサスケは気まずそうに顔をそらした。
別に大蛇丸に似ようと思っていたわけではないし、むしろ自分ではアリスに似てきていると思っていただけに少々ショックだ。
しかしよくよく考えてみれば確かにあの男の戦い方は学ぶべきことも多いため取り入れたことも少なくないような気がしないでもない。

「まぁ・・・その、なんだ。俺達はツーマンセルを組むことが多いからな。多少戦い方が違っていた方が足りないところを補えるだろう」
「あぁ、それもそうね」

納得した様子のアリスを見てサスケはホッと息を吐く。この二年と半年、必死に縮めてきた距離が会話ひとつで壊されては堪らない。
そんな話をしているうちに三人は森へと移動していた。昔の頃とは違う忍びっぷりにアリスは小さく笑う。

「ナルトったら成長したわよね。昔なんて正々堂々真正面から勝負を挑んでいたというのに・・・」
「いくらウスラトンカチでもあの時のままでは困る」

サスケの言葉に頷いたちょうどその時、動き出したようでクナイがぶつかり合う耳障りな音が響いた。
そこから体術勝負になって影分身のナルトをカカシが次々に消していく。そこにサクラが混ざれば戦いはますます激化していった。

「面白くなってきたのォ」
「やりますね!ナルト君とサクラ」
「まだまだ、これからだよ」

──────────


そして夜になった頃。

未だに攻防は続いていた。カカシの幻術をサクラが解いて、罠にかかったふりをしたナルトがカカシに攻撃を仕掛けて、そしてカカシが変わり身で姿を眩ませて。
そのうち火遁やら土遁やら水遁やらも出てきて見ごたえのある演習となっていた。

「流石カカシ先生。体術幻術忍術と色々出てくるわね」
「だが飛ばし過ぎだ。あれじゃすぐにチャクラ切れを起こすだろうな」
「日の出まではまだ時間はあるが・・・ま、案外あっけなく決着がつくかもしれんぞ?」
「あら、それはどちらが勝って、かしら。綱手姫」
「ふふ・・・さあな」

戦闘が一段落ついた静かな森に綱手の意味ありげな笑い声が吸い込まれていく。
一方のナルトとサクラは顔を突き合わせて作戦を練っていた。

「カカシ先生にだって弱点はあるはずよ、よく考えれば」
「弱点かぁ・・・

 ・・・あ、あった。弱点」

案外あっさりと出てきたナルトの言葉にサクラが驚いた声を上げる。身を乗り出して聞いてくるサクラにナルトはひそひそと何かを話し始めた。



「そういやお前達、いつ里を出るんだ?」

三人の演習を見守る中、不意に綱手が思い出したようにアリスとサスケに問う。一瞬何のことだと首を傾げた二人だが任務のことだと気付いてあぁ、と納得した表情になった。

「行こうと思っていたところでナルト達に会ってね。任務はこの演習が終わってからでもいいかと思って」
「確かに急ぐものではないと言ったが・・・あまりゆっくりしてもらっては困るぞ」
「そんなに心配しなくても大丈夫よ」

呆れたように言う綱手にアリスが肩を竦めて小さく笑う。
ここでシズネからナルト達が動いたようだと言われて彼女達はそちらへ目をやった。

「──今よ!ナルト!」
「行くぞ、カカシ先生!
 イチャイチャタクティクスの最後の落ちは!」

どんな作戦を立てたのかと目を光らせていた観戦組は、サクラの合図で口を開いたナルトの言葉に内心「ん?」と疑問符を浮かべる。
そんな間にも事は進み、そして。

ちりん

涼やかな音を立てる鈴がナルトとサクラの手に渡った。

「ヘヘッ、忍者は裏の裏を読むべし」
「ねっ、先生!」

「あ、取った・・・かしら」
「・・・らしいな」

勝負ありと判断した五人がナルト達に向かって足を踏み出す。実は落ちなんて知らなかったと言うナルトの、それこそネタ晴らしを聞いてアリスは小さく笑った。

「馬鹿だからこそ思いつく作戦だな」
「枠に囚われない柔軟な発想じゃない。ナルトらしいわ」

得意げなナルトとサクラ、そして酷く落ち込んだ様子のカカシ。忍としての実力で勝ったかと問われれば微妙なところだがそれでも勝ちは勝ちだ。

「二人の成長、しかと見せてもらったぞ」

綱手の声に二人が振り返る。堂々たる綱手を筆頭にアリス達が立っていた。

「お疲れ様。中々良いコンビネーションだったわね」
「フン、悪くはなかったな」
「カカシ、何か言うことはあるか?」

その言葉にカカシは観念したように口を開く。

「まぁ、見事に鈴も取られたわけですし・・・」
「ん? 何の話だってばよ」
「今後の貴方達二人の処遇に関することですよ」

そう言ったシズネにナルトは疑問符を浮かべて言葉を繰り返した。綱手が改めてナルトとサクラの名を呼ぶ。

「お前達二人とはたけカカシ・・・この三名により、カカシ班を編成する!」

ドーンと発表された事項に二人がますます意味が分からないといった表情になった。楽しそうなアリスと相変わらずクールなサスケに目を向けても望んだ答えが得られず首を傾げる。

「これからお前達二人はこの俺と一緒に任務をこなしていくチームになる、ということだ」
「えっ、えっ?チーム?なんでっ!?」
「アリスとサスケ君は!?」
「サスケは暗部だしアリスは高ランクの単独任務かサスケとのツーマンセルで定着してきたからな。勿論俺達カカシ班の班員であることには変わらないがイレギュラーになる。それに・・・」

アリスはサスケの見張り役でもあるしな。
チラリとサスケを見たカカシが心の中でそっと呟く。既に同期とは比べものにならないほどの力をつけたサスケはやはり変わらずイタチを追っていて、そんな並ならぬ執着を持つサスケの手綱を握ることが出来るのは彼が惚れているアリスだけだと上層部は考えていた。

「それに?なんだってばよ、カカシ先生」
「いや・・・なんでもない」
「ええー!気になるじゃない!」
「そうだそうだ!そこまで言ったんなら全部言ってくれよ!」
「いやいや別に何も「班のバランスを考えるとツーマンセルとスリーマンセルに分かれる方が効率がいいのよ」アリス・・・」

詰め寄るナルトとサクラの肩を叩いて言うアリスに、カカシは助かったと胸を撫で下ろす。それを見て肩を竦めたアリスは二人に目を移した。

「バランスゥ?」
「そ。ほら、考えてごらんなさいな。ナルトは下忍、サクラは中忍、カカシ先生は上忍、サスケは暗部、で、わたくしは・・・なんだかよく分からない立ち位置になってしまったけれど取り敢えず上忍クラスで「影クラスだ」・・・綱手姫、そこは別にいいじゃない」

話の腰を折られたアリスが拗ねたように訂正を入れた綱手を見る。笑って謝る姿に小さく息を吐くと話が逸れたと言って二人に目を戻した。

「まぁ兎に角五人とも見事にバラバラでしょう」
「でも俺ってばエロ仙人と修行に出てたからで・・・」
「えぇ、きっと貴方の実力は下忍レベルではないわ。でも里の規定で下忍が受けられるのはCランクまで。戦力を考慮しても恐らくBランクがいっぱい。そこに上忍と暗部とわたくしを集中させるわけにはいかないでしょう?」
「むー・・・そりゃそうだけどさー」
「納得したなら結構」

微妙に言いたいことが残っていそうなナルトと満足げなアリス。サクラは十二分に理解したようだ。

「さて、ナルト達の演習も終わったし・・・サスケ、そろそろ出ましょうか」
「あぁ、そうだな」
「今から行くのか?せっかく第七班全員揃ったのに」
「今回は討伐だから時間はそれほどかからないと思うわ。帰ってきたら旅の話を聞かせてね」

「それじゃ、行ってきます」と言って姿を消したアリスに続いてサスケもその場からスッといなくなる。

「うっそ、え、はやっ!」
「流石スピードコンビね」

気付いた時には二人ともいなくなっていたという現状に、ナルトは声を上げて驚きサクラは相変わらずだと感嘆する。
その後カカシ班は綱手達と別れて商店街へ繰り出した。


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