忍から報告を受けたアリスは綱手が寝ている建物に来ていた。相も変わらず目を覚まさない綱手の傍には少しやつれた様子のシズネがついている。 「失礼するわよ、シズネ嬢」 「あぁ、アリス様・・・お疲れ様です」 「疲れているのは貴方でしょう。ちゃんと寝ているの?」 眉を下げて問うたアリスに苦笑いを零して返事をぼかすシズネ。それが答えだと察してすぐにでも横になれと言いかけたが、そうしたところで聞くとは思えず一旦口を閉じた。 そして本来の目的の話をするために「そういえば」と話題を転換する。 「雲隠れから使者が来たそうね」 「え、そうなんですか?」 「あら?まだ聞いてなかった?」 首を傾げたシズネは本当に何も知らないようで、自分も詳しいことは知らないが一応知らせておこうと口を開いた。が、部屋にノックの音が響いてそちらを振り返る。 「どうぞ」 「失礼します。 ──サムイと申します。この度は雷影より火影様宛の手紙を預かって参りました」 「綱手様に・・・しかし綱手様は現在昏睡状態にありまして、いつ意識が回復するか分からないのです。なのでその手紙は火影側近である私が預かっておきます」 シズネが浮かない表情でそう告げるがしかし、サムイはいつ目が覚めるか分からないなら火影代理に見てもらいたいと言う。雷影が急いでいるから早く返事が欲しいと。 しかし今の時点で火影代理は決まっておらず側近といえど勝手な決定は出来ないシズネは言葉を濁してアリスに目をやった。 「・・・わたくしが見るわ。構わないかしら」 「金蘭様が・・・?いえ、お願いしま「待て。その手紙はワシが拝見いたそう」」 不意に滑り込んできた低い声。三人が振り返ったそこには“根”を二人連れたダンゾウが立っていた。 「何故貴方が・・・」 「綱手姫はもう火影ではない。ワシが新たな六代目火影となった」 「・・・そう、なの」 目を見張ったアリスが表情を戻して言葉を返す。一方のシズネはダンゾウの火影着任の知らせに信じられないといった顔をしていた。 とはいえ大名に承認されたとあっては仕方がない──雷影からの手紙はダンゾウが読むのが妥当だろう。 ダンゾウに手紙をと、アリスが言った。 「──ふん、サスケか・・・やはりこうなったか」 「で、お答えは」 険しい表情で問うたサムイにダンゾウは十二分に間を置いて口を開く。 サスケの始末を許可する、と。 ──────── 「アリス様・・・」 ダンゾウとサムイが部屋を去ったところでシズネは心配そうにアリスに目をやった。 長い時間一緒にいただけあってさぞ心を痛めているであろうと気を遣うシズネだが、予想に反して穏やかな表情で「なに?」と小首を傾げられる。 「あ、あの「あぁ、ナルトのこと?ダンゾウは人柱力を外に出すのは反対だったものね」え・・・いえ、その」 「大丈夫よ、今のナルトは里からの信頼が厚いから。火影になるとはいえ裏の人間として悪名高いダンゾウではそう簡単に手を出せないはずだわ。陰で工作されても三代目やわたくしの口添えがあればナルトの信頼もあって最悪の事態にはならないはず」 「はぁ・・・」 上手い具合にはぐらかされてそれ以上聞けずに口を噤むシズネ。アリスは小さく肩を竦めると家に戻ると言って部屋を後にした。 ──────── さて、帰ったアリスは事の次第をさっそくイタチと長門に話していた。静まる部屋でアリスと長門の目がイタチに集まる。 「・・・サスケは強くなった」 「えぇ」 「だから大丈夫だ。あいつは死なない」 「いいのか、イタチ」 既にうちは虐殺の真相を聞かされていた長門は眉を顰める。が、イタチは特に心配する様子もなく頷いた。 真正面から実力をぶつけ合ったのだ。間違いない。 「──にしてもこれだけの騒ぎがあってはそろそろ事が大きく動き出すかもしれないわね」 「あぁ。今回の雲隠れからの情報も合わせるともう九体中八体まで狩られているらしいからな」 「五影会談が開かれてもおかしくない」 この上なく面倒なことになりそうだと、三人は揃って溜め息を吐いた。
[ back ] |