「綱手様!」 アリス達が戦いに巻き込まれないところまで戻ってきたところへサクラが駆けてきた。もう大丈夫だと、そう言う綱手の体が老化していく。 「サクラは綱手を診ておれ。アリスはカツユを通して怪我人の治療じゃ」 「「はい」」 指示をした三代目に返事をしてアリスは少し離れたところへ移動した。自分の身長の倍ほどもあるカツユが傍に来て描かれた術式の中に入る。 「カツユ、お願いね」 「はい。お任せください」 印を組んで集中すれば綱手の時のようにチャクラが体を包み込んだ。チャクラ量ならば全く問題ないのだが如何せんコントロールに秀でてないのが痛い。今回の里規模の治療にカツユがいるという事はこの上なく助かった。 「──里の様子はどうなっているかしら」 「大丈夫です。重症者もいますが・・・何とかなるかと」 その言葉に頷いたその時、戦場で戦っていた大蝦蟇三匹が吹き飛ばされた。ペイン天道の力が戻ってやられたらしい。 行くべきか行かないべきか。しかし今の自分が行ったところで適切な状況判断が出来るか分からない。それどころかナルトと上手く連携が取れるかすら定かではない。ペイン相手にそれは危険だ。 「でもナルト一人では・・・」 「アリス様、いのいちさん達がペイン本体の居場所に見当がついたようです」 「・・・ペイン本体?」 「木ノ葉にいるペイン達は元々死体で、どこかにいる本体からチャクラ信号を受け取って動いているようです。そしてチャクラ信号を送信するのには高い場所が効率的・・・つまりペインの本体は木ノ葉近くの一番高い場所にいるという事になると」 そう、と呟くように答えたアリス。しばらく考えていると新たにペイン捜索をするとの情報が入ってきて小さく顔を歪める。 再び考え込む表情になると顔を上げて必ずカツユを連れていくこととペインの場所が分かったら自分に伝えるよう伝言を頼んだ。 直後の事、戦場の方から吹き荒れてきた暴風に体が飛びそうになって踏みとどまる。何事かと振り返れば中央に見えた赤黒いチャクラの塊。 九喇嘛か。 感じ覚えのあるチャクラの質に心の中でそう呟いて圧力を感じる空間に眉を顰めた。 「カツユ」 「ヒナタさんがペインにやられて、それでナルト君が・・・」 「ヒナタが!?・・・九尾の尾は何本」 「六本です」 それを聞いたアリスが印を解いて立ち上がる。 六本、となると中々に九尾化が進んだ状態にある。サクラや自来也の話から推測するにかなり危険だ。ナルト自身もその周囲も。 「すぐに止めないと「待つのじゃ」・・・ヒルゼン様、」 「行ってはならん」 「何故です!」 「九尾の件はナルトの課題じゃろう。踏み入り過ぎるのは良くない」 「しかしこのままでは里に被害が・・・それに万が一封印が解けてしまったら・・・」 「被害が出ないよう見張り、どうしてもとなった時はすぐに動けるよう気を張っておくのじゃ。ギリギリまで手を出してはならぬ」 三代目の言葉に難色を示すアリスだが「良いな」と念を押されて渋々肯定の意を示した。吠えるナルトを見て少し考えるとからカツユに目を移す。 「カツユ、分裂してくれないかしら。貴方をあの中心部へ飛ばすわ。ヒナタについて」 「はい」 ズズ、と人一人を呑み込めるくらいに分裂するとアリスがカツユに手を当てて集中する。中心部と言ってもここからでは人の配置が良く見えなくて。大体の見当をつけて飛ばすことは出来るがその後はカツユが動いてヒナタについてもらわなければならない。しかしあまり離れたところに飛ばしてはヒナタに辿り着くまでに戦いに巻き込まれるかペインにやられる可能性がある。 集中して、集中して──フッとカツユがその場から消えた。 「どう?ヒナタの所に辿り着けた?」 「はい、大丈夫です。シマ様とフカサク様にも付きました。ヒナタ様はまだ息があるようです。しかしフカサク様は既に・・・」 「・・・そう」 小さく呟くが感傷に浸っている時間はない。ヒナタが危険だ。再び印を組めばカツユを通して怪我人の治療が再開される。 中心部の戦場に気を配りながらも続けているとそろそろこちらにも被害が及ぶのではと思う頃にナルトとペインが里の外へ移動し始めた。 「今のうちにヒナタ達を」 「はい」 指示から暫く、カツユに包まれてアリスの所まで戻ってきたヒナタ達。容体を聞けば急所は外れていたとのことで命に別状はないらしく安堵したように息を大きく吐いた。 [ back ] |