巡り会いてV | ナノ

「──それで、ペインの秘密は何か分かったのか?」

数多くある薬を確認していたアリスは問うてくるイタチに振り返った。巻いている包帯越しではあるが恐らく目が合って、アリスは小さく首を振る。

「駄目みたい。情報はシカマル──あぁ、シカクの子息ね。彼に任せていて、ペインの死体はシズネが担当、そして雨隠れの忍はいのいちとイビキを筆頭に探っているわ」
「そうか・・・リーダーのことは俺や他の暁メンバーもあまり知らないからな。力に慣れなくて済まない」
「相変わらず里想いね。今の貴方は自分の病と目の事だけ考えていたらいいのよ」

薬の確認を終えてイタチの採血をして薬品と混ぜて、暫く作業していたアリスは不意に何か聞いた気がして手を止めた。イタチも音が鳴った方に顔を向けている。この家がある森ではなく里の方かららしいが、ここまで聞こえてくるとなると余程大きな音だったのだろう。

「ねぇイタチ・・・」
「爆発、か・・・?近くに演習場は」
「ないことはないけれど、でもここまで届くほど大きな音はそうないわよ」

怪訝な表情で音が聞こえてきた方向を見ていた二人だが、やはり気になったのかアリスは器具を片付けて手を洗った。イタチに「少し様子を見てくる」と告げて部屋を出て、そして玄関を開ければモクモクと空に昇る煙が目に入って眉を寄せる。
一瞬焚火か何かと思ったが同じような煙がいくつか上がっているのを見てその仮説はすぐに消した。
となると事故か──敵襲か。

走って森を抜けると丁度里の中心部で鎌首をもたげた巨大なムカデが目視できて背筋がスッと冷えていった。
ペインの口寄せだ。遠目に見るに今のところの被害は里の中心辺り。
考えるより先に足が動いて騒動の中心に駆け出すが、敵を探すよりもまず非戦闘員の非難が先である。こちらを見て恐怖と不安の表情に少しだけ安堵を浮かべた里の人々に向かって息を大きく吸った。

「里の中心は通らないで!遠回りしてでもなるべく外側の崖に沿って避難所まで向かいなさい!」

声を張って誘導するが冷静ではない状態では全員が全員指示通り動いてくれるはずもなく、中々スムーズに進まない。しかし早く戦闘に加わらなくてはそれはそれで被害が増えるのであってアリスはどうしたものかと眉を顰めた。

「アリス様!」
「あら、貴方達は・・・」

不意に呼ばれて振り向けば自分より少し若い忍が三人。見たところ下忍になって一年か二年の、担当上忍付きの新人忍者だ。

「非戦闘員の誘導はオレ達下忍が担当します!アリス様は里の中心部へ行ってください!」
「・・・ありがとう。今のところ外側に被害はないけれど、いつ巻き添えを食うか分からないわ。十分に気を付けて」
「はい!」

元気よく挨拶をした下忍に後を任せて、アリスは中心部へ駆けだした。

──────────

「それで出会ったのが貴方だとはね
 ──小南」

ムカデの被害から里人を守りつつペインを探しているうちに周りに紙が散り始めたことに気が付いた。足を止めたアリスの目の先でそれは間もなく見覚えある形となり、両者が睨み合う形で対峙する。

「やはり生きていたの」
「・・・うずまきナルトは何処にいる」

アリスの問いには答えず無感動に言った小南。
情報収集か。ナルトなら妙木山で修行中だが、この調子だとペインも小南もナルトの居場所が分かるまで里で暴れまわるに違いない。
そしてこの里で確実にナルトの居場所を知っているであろう人物は二人共見当がついているはず。その中には言うまでもなくアリスも入っている。

「(恐らく木ノ葉でペイン達に太刀打ち出来る忍はそういない・・・)」

無駄に死者を出す前に自分に注目を向けさせて、里の忍達には何か策を講じさせなければ。
それには小南だけではなくペインも引き付る必要がある。

「この里は他とは違う・・・力尽くで聞き出そうとしたところで答える者はいないわ」
「手はいくらでもある。九尾は必ず暁が捕らえる。それが世界の為でもあるのだから」

周りで破壊音が響く中アリスと小南が睨み合う。そして数秒後、ばらばらと散らばった紙がアリスに襲い掛かった。術でいなして躱して相殺して、場所を少しずつ移動しながら二人の攻防が続く。
相変わらず攻撃が当たらない小南に切るような溜め息を吐くと降り注ぐ鋭利な紙を地を蹴って避けるアリス。そのまま距離を取るように走り出せば無数の紙が追いかけてくる。

「逃がさない」

その声と共に進行方向に小南が現れて、アリスは印を組んだ。一筋の鎌鼬が小南に向かうが言うまでもなく切ったのは紙の身体で。しかしアリスが狙ったのはその先だった。
遠目に見えるペインの背に飛んでいく鎌鼬。木ノ葉の忍の首を掴んでいた彼は迫ってくるそれに気が付いて忍を放り投げて地を蹴った。

「けほっ、けほっ・・・はっ ──アリス様、」
「落ち着いて息をして。ここはわたくしが引き受けるから、貴方と、それから周りの者も、非戦闘員の逃げ遅れがないか確認に回りなさい」
「申し訳ございません・・・。敵の能力ですが、相手に掴まれたとき奴の背後に化け物が──っ!」

話している途中で紙が降って来るのに気付いたアリスは忍の腕を引いてその場から飛び退く。彼女を先頭に忍達が向き直れば見た先に地獄道と小南が立っていた。
視線を外さないまま後ろの忍達に動くよう指示を出して、散っていく彼等を追おうとする二人を土遁で阻んで注目を戻す。

「悪いけれど、彼等はナルトの居場所は知らないわよ」
「・・・ペイン」
「殺るぞ、小南」

構える相手にアリスもすぐに対応できるよう体勢を整えた。一瞬後にはキンと耳障りな音を立ててペインとアリスがぶつかり合う。そこに小南の紙も混ざって、戦いは激しさを増した。


prev / next

[ back ]
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -