巡り会いてV | ナノ

洞窟のような薄暗い場所で、“蛇”改め“鷹”となったサスケ達と“暁”のマダラ、鬼鮫が集まっていた。
決戦前よりも殺伐としているサスケが椅子に座り、マダラが机に腰掛ける。

「俺達“鷹”は木ノ葉を潰す」
「と言っても、具体的にどう狙っていく」
「殺るのは上層部だ。それ以外は基本的に対象としない」

サスケらしい提案ではあるが上を倒すには彼等を守ろうとする下の者達との戦闘は免れない。“鷹”だけでは戦力不足だ。
鬼鮫のその見解に話を聞いていた水月が小さく笑った。

「鬼鮫先輩、僕達をあまりナメない方がいい。あの時の遊びの決着はまだつけてないし・・・今度は本気で・・・」
「やめろ水月」

重吾が制止をかけるが構わず背の断刀を構えて机を挟んで向こう側にいる鬼鮫に飛び掛かる。
──が、間に入ったマダラが腕一本でそれを受け止めた。
驚く水月と叱る香燐が軽く言い争いになるのを横目に重吾は冷静にサスケの指示を仰ぐ。「どうせまだ勝てない」との返答に水月は冗談を言いながら元の位置へ戻った。

「“暁”も戦力不足だ・・・今は無駄な小競り合いは避けたい。我々の利害は一致する。これより“鷹”は“暁”と行動を共にしてもらう」
「その話に俺達が乗る見返りは」
「尾獣をやる」
「尾獣?随分と気前が良いな」
「サスケ、知っているのか?」

香燐の問いにチャクラの塊だということを簡単に説明するサスケ。流石アリスと行動していただけの事はあると、マダラが感嘆を零した。
ついでに裏切れば死んでもらうとも忠告しておく。

「今は七匹まで“暁”が集めてますから、あと二匹・・・」
「俺達と“鷹”で残り二匹を手分けして狩る。それが我々の当面の目的だ。
 ・・・だがここで大きな障害がある。これはサスケ、お前の目的にも関わってくることだ──分かるな?」
「アリスか」

肘掛けに肘を立てて大きく息を吐きながら言う。尾獣を狩るにしても木ノ葉を潰すにしても、立ちはだかる一番の壁はあの女だ。頭が回り内外のパイプを持っていて実力もある──つまり物事の先読みとその対処、広い情報網、戦いに勝つ力が揃っているわけだ。仲間の成長を妨げないようにか割と腰は重い方だが、それでもやはり最悪の事態にはならないよう目を光らせている。

「まぁ流石のあいつもお前が相手となれば隙くらい出来るだろう。九尾の捕獲と木ノ葉崩しは同時に行えば「無理だ」・・・お前がアリスに想いを寄せているのは分かっている。が、あいつは“暁”“鷹”双方にとって大きな障害だ。出来れば始末、悪くても力が使えない状態で拘束しなければならない」

否定の意を示したサスケに言い聞かせるように言うマダラ。しかしサスケは難しい表情で「そういう意味じゃない」と呟いた。
師弟関係(といっても半分くらい修行仲間のようなものだが)になって三年程経つがほぼ毎日と言っていいほど頻繁に会っていて任務も一緒になることが殆どで。誰よりも早く上り詰めたアリスの隣に立つために、殺人的な密度を誇る彼女の修行にも喰らいついてきた。
アリスの事なら誰よりもよく知っていると断言できる。

──故に、分かってしまうことがある。


「あいつは里の為なら俺を殺すだろう」


響いた声に周りが静まり返って、香燐辺りの息を呑んだ音が宙に攫われて消える。暫くして深く息を吐いたマダラが再び机に腰掛けてサスケに目を向けた。

「重く考えすぎだ。お前とアリスが互いに最も近く親しい存在であることはお前自身が一番よく分かっているだろう」
「だからこそ、分かる。
 あいつは誰よりも排他的だ。自分の手が届く範囲を確実に守るためにな。抜忍となった俺が木ノ葉を潰そうとしたならあいつは迷わず俺を殺す」

目を閉じてアリスを思い描きながら言ったサスケの言葉にマダラはどうしたものかと思考を巡らせる。里抜けしたとて長らく共にあった存在であればそう簡単に切り捨てることは出来ないだろうと踏んでいた。だがサスケの話を聞く限り情に訴えかける作戦は効果がなさそうだ。

「アリスがお前を殺そうとするなら、お前はアリスをどうする」
「どうもしない。あいつはうちはの事件には関係ないからな」
「だが邪魔だ。知っているだろう、あいつが尾獣に干渉できるのを。利用価値は十二分にあるがその分リスクも高い・・・いわゆる諸刃の剣だ。“暁”にとってあの女ほど厄介なものはない」
「殺すな」
「・・・ナルトは“暁”が狩る。“鷹”は八尾を当たれ」

問いに答えず指示を出すと話は終わりだとばかりに腰を上げて鬼鮫と共に背を向ける。しかし何かを言おうとしたらしいサスケが不自然に息を零したのを聞き留めて足を止めた。

「なんだ」
「いや・・・」
「アリスに関することだな。それも他人に知られていいものではない──が、言えば俺達があいつを生かしておく確率が高くなる・・・違うか」
「・・・ちっ」

そっぽを向いて舌打ちをしたサスケにマダラと鬼鮫が振り向いた。どうやら重要な情報らしいが“暁”の目的に関わってくるなら言ってもらわなければ困る。
睨み合うこと数分、怖い顔で損得の勘定をしていたサスケは歯を食い縛って短く息を吐いた。

「アリスの力──魔法を抑える方法を知っている」
「っ・・・はったりじゃ、ないだろうな」
「確証はないがはったりでもない」
「言え」

低く唸るマダラを睨み付けるサスケは何も言わない。
教えるわけがない。目的のために引っ込んでもらう必要はあるが誰がアリスをあんな危険な男に渡すか。
しばらく待っても口を割らないサスケに、マダラは溜め息を吐くと今度こそその場を後にした。




「ね、ね、サスケ。さっきの話って本当かい?」

マダラ達の気配が完全に消えた頃、少し驚いた表情を浮かべた水月が席を立ったサスケに声を掛ける。足を止めないまま、サスケは息を吐くように「あぁ」と返事を返した。もしかしたらアリスを囲うことになるかもしれない事態に香燐が嫌そうに鼻を鳴らす。

「ほっとけばあいつ等が始末してくれたのに・・・」
「香燐」
「・・・ちっ」
「でもさ、これで前言ってた監禁強姦ルートの疑いが強くなったよね。サスケ、頼むから部屋の防音はしっかりしてくれよ」

さらりと言ってのける水月にサスケが面倒くさそうに息を吐いた。
こいつは俺にどんなイメージを持っているんだ。

「監禁じゃなくて保護だ。それからこの際だから言っておくが強姦なんざ馬鹿な事はしない」
「えぇー、あの時は否定しなかったのに」
「プライドの高いあいつにそんな事してみろ。男としての人生に幕が下りる」

至極真面目なサスケの答えを聞いた水月が目を丸くして冷や汗を流す。
自然と男の象徴を隠すような動きをした彼を横目に、サスケは浮かない表情で八尾がいるという雲隠れに向かった。


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