巡り会いてV | ナノ

あら、あら、あら──

ようやく見つけた自来也を見て、アリスは目を丸くして開口一番にそう零した。
五人のペインと彼らに囲まれていた自来也が此方を振り向く。

「随分と、派手に戦ったようで」
「アリス・・・無事だったか」
「えぇ。自来也こそ早く水から上がってはいかが?」

足場へ降り立ったアリスが身を潜めるようにして水に浮かぶ自来也に手を伸ばす。差し出された右手を引っ張って陸へ上がるのを手伝い肩に乗っているフカサクに軽く挨拶をして、そしてもう一度自来也に目を戻した時、左腕がないことに気が付いた。

「あら、あら、あら」

再び目を丸くして驚いたアリスが同じ台詞を吐いたことに自来也は苦笑いを零して左腕を押さえる。

「ちったぁ男前になったかのォ」
「えぇ、えぇ、それはもう。貴方達って何故やること為すこと零か一しかないのかしら。師弟揃って馬鹿だわ。加減を覚えなさい」
「これは手厳しい・・・」

至極呆れた様子のアリスに肩を竦める自来也。余裕はなさそうだが今すぐ死んでしまいそうなほど追いつめられているわけでもないらしい。ぎりぎり間に合ったといったところか。
周りにいるペイン達は何も言わず傍観を貫いていた。

「それで、小南はどうした。やったのか」
「どうかしら・・・死体を確認していないから分からないわ。それよりこちらはどうなっているのよ。これだけの輪廻眼、何処から湧いてきたの」
「少し厄介な事になっていてな・・・説明は後だ」

そう言ってペインに向き直る自来也──の前に立つアリス。なんだと問われてアリスは自来也を振り返った。

「わたくしがやるわ」
「お前一人では危険だ」
「綱手姫に任されているのよ。ここで亡くなられては合わせる顔がないの」
「しかしのォ「いいから」」

強く言って自来也を下がらせると目だけでペインを見渡す。
全員輪廻眼とはまた物騒な。とはいえ暁のアジトから帰ってきてから古い書物を読み漁ってみたが出てくる情報は殆どなかった。つまり輪廻眼の特性も能力も全くと言っていいほど分からない。

「さて、どうしたものかしら」

自来也を晶遁で囲いながらアリスが首を捻る。しかしその瞬間小型のミサイルが飛んできてその場から飛び退いた。
次の足場に移るまでに印を組めば津波のような水龍が追撃しようとするペイン達に向かう。

「アリス!忍術を吸収するペインがいる!気を付けろ!」

自来也の助言にペインに目を戻せば餓鬼道が水龍を吸収していた。跡形もなくなった術に目を見張ったところで、今度は後ろにあった建物が音を立ててこちらに崩れ落ちてくる。
今動いていたのはアジトで見た奴かと、地を蹴って避けたところで追撃してくる別のペインの攻撃を避けながら思考を働かせていれば不意に体が何らかの力で引き寄せられた。またさっきのペインだ。
アリスを引き寄せるペイン天道の装束の袖から金属棒が滑り出る。空中で体勢を立て直したアリスも千鳥刀を構えて──

「アリス!後ろだ!」

突き出した剣が天道の持つ金属棒と交わる前に、胸元に衝撃が走った。揺れる瞳でぎこちなく振り返ると凶器を突き立てた人間道がそこに立っている。目を見張ったアリスが喘ぐように口を震わせた。

「う、くっ・・・は、・・・」
「アリス!!」

己を守る水晶に手をついて叫ぶ自来也。震える手から剣が落ちて、アリスの胸元に赤が滲んだ。

はらりはらりと、鮮やかな花びらが零れ落ちる。

「・・・仕損じたか」

目の前から崩れて散ってゆく様子にペインが小さく呟く。そのすぐ後ろに現れて再び剣を振り上げるアリス。
しかしあと少しというところで身体ごと強く弾かれた。

体勢を立て直すのと同時に迫る追撃を躱して印を組んで。自来也との交戦で荒れた水場が更に悲惨な景色へと変わってゆく。

ようやく一段落したところで向かい合うペイン六道とアリスは互いの情報を整理していた。

「おいアリス・・・」
「問題ないわ。大体の特性は把握出来てきた」
「おぉ、流石──じゃなくてだな。このままではチャクラを無駄に消費するだけで決着がつかん。どうするんだ」
「初めからここで勝敗を決めるつもりはないわ。ペインの情報を集めているだけよ。そのために態々戦闘を長引かせているのだから」

こそこそと会話をする二人を見ながら、ペインも今までの戦闘を振り返っていた。
確実にこちらの情報を取られている。それは戦いが始まってすぐに気が付いた。本来アリスは威力が高く範囲も広い術を多用、近年はそれに加えてスピードを生かした剣術を主とする戦い方だったはずだ。
しかし今戦っている彼女はそのどちらもが鳴りを潜めていた。

自来也のみならず、アリスにもペインの仕組みと特性が割れてきている。

そこまで思考を巡らせて軽く目を細めるペイン。このままでは厄介だ。早々に片付けてしまわなければならない。
そんな心の内を読み取ったのか、アリスは自来也を囲っていた水晶を解いた。

「どうした」
「そろそろ引こうかと」
「・・・何?もういいのか」
「ペインもわたくしの意図に気付いて本気で潰しに掛かって来る頃だわ。相打ち覚悟で向かうつもりはないのだし、一旦引いて情報を整理する必要があるでしょう」

ペインを警戒しながら後ろ手に自来也の手を取る。次の瞬間大きなミサイルが飛んできて、爆発と共に散った花びらが空へと舞い上がった。


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