巡り会いてV | ナノ

【拝啓 アリス
 元気にしているか?修行やら任務やら五代目の仕事の手伝いやらで休みを取ってないなんて事にはなってないだろうな。
 こっちは大蛇丸を倒して仲間集めも順調にいった。ずっと前に大蛇丸のアジトで会った水月と香燐、それから呪印のオリジナルの存在である重吾という男だ。
 あぁそれと、道中暁のデイダラとトビとかいう奴等と交戦した。デイダラは自爆、もう一人も巻き込まれて死んだはずだ。今は近くの宿場町で体を休めている。
 ついでに暁のアジトをいくつか記した地図を入れておくから活用できるならしてくれ。
 俺達はこれから周辺のアジトを手当たり次第に行く予定だ。
 絶対に勝つ。あいつを超えてくるからな。
 じゃ、ちゃんと休み取れよ。
 サスケ】

手元に届いた手紙と地図を手に深く息を吐く。
大蛇丸だけではなくデイダラ(とトビ)まで・・・。
S級犯罪者を立て続けに二人も倒したサスケの成長にアリスは椅子に深く腰掛けて目を閉じた。

元々才能があった上に、更に空いた時間は修行に没頭。それこそ一日の時間割が修行か読書(勉強)か任務で構成されているも同然な自分についてくるくらいの根性を見せていた。
まぁ大蛇丸は弱っていたしデイダラが土の性質変化を使っていたという事もあるだろうが、それでもサスケの実力を証明するには十分だ。

そしてイタチと当たるのも時間の問題らしい。同封されていた地図に描かれたいくつかのアジト──絶対にいるとは限らないが、居なかったら居なかったでまた新しくアジトを記した地図を送ってくれるだろう。

アリスはおもむろに忍具部屋へ行って忍具を確認し始めた。ずらりと並ぶそれ等を順に忍服に収納していく。

「──さて、行きますか」

小さく呟いて部屋を出るとそのまま玄関へ向かった。が、ドアを開けて一歩外へ足を出したところで足に手紙を結わえた鳥が降りてくるのを見て小さく息を吐く。
綱手から緊急の呼び出しだ。

──────────

「どうしたの綱手姫。また緊急?しかも執務室ではなくこんなところに呼び出すなんて」
「来たか・・・悪いな、休暇中に」

人気のない川に架かる橋の上に呼び出されたアリスを、珍しく覇気のない綱手が迎える。
余りにも思い詰めた様子にアリスも深刻な表情になった。

「ナルト達に何かあったの?」
「いや・・・そっちじゃない」
「それなら…、…今他に気になるようなことはあったかしら」
「・・・」
「綱手姫?」
「・・・少し、頼まれ事をしてくれないか」

俯いたまま小さな声で零す綱手。アリスは怪訝そうに首を傾げたが取り敢えず聞くだけ聞いてみようと先を促した。
間を置いた綱手がやはり俯いたまま口を開く。

「自来也が・・・暁のリーダーの居場所を掴んだ」
「あぁ、雨隠れの?」
「っ知っているのか!?」

ここでようやく弾かれるように顔を上げた綱手と目が合ったアリスは「少しだけ」と難航している情報収集に眉を寄せた。
サスケと近くまで行ってみたことはある。が、写輪眼で見てもらったところ気付かれずに潜入するのは不可能らしいのだ。
里全体が──それこそ地上から空まですっぽりと──何者かのチャクラに覆われているとのこと。あれが他里の者を感知するための術であったなら里に踏み込んだ瞬間バレる。

「チャクラが里を覆う・・・?しかも空までだと?聞いたことがない術だな。結界の類か?」
「雨らしいわよ、どうも。降ってくる雨粒の一滴一滴がチャクラを含んでいるから避けるのは無理だわ」

小さく息を吐いて難しい顔になる。やっとペインと小南の居場所を掴んだと思ったらこれだ。討つどころかまずは里に潜入して正確な位置情報を集めなければならなかったのに、これでは探すこともままならない。

「・・・それで、自来也殿が暁のリーダーの居場所を掴んでどうしたと?」
「本当に居るのか確かめてくると言って里を発った・・・」
「、一人で行ったの?」
「あぁ。・・・アリス、あいつを追ってくれないか。どうにも嫌な予感がして・・・本当は私が行きたいんだが火影が里を空けるわけにはいかない。それに敵の情報が少ないなら、万が一を考えて私が行くより相手に合わせて戦闘スタイルを変えられるお前の方が自来也の助けになるだろう。
 私からの、一生の願いだ・・・どうか頼む」

そう言って頭を下げる綱手にアリスは表情を曇らせた。里の長である影に頭を下げさせるなど申し訳がなさすぎる。それに無論自来也も木ノ葉の忍であるため協力を惜しむつもりはない・・・が、実は今から別の大切な用事で里を出るつもりだったのだ。
二つの件を同時進行すること自体は影分身があるから良い。しかし問題は相手が暁ということだ。力を分散して果たして結果が出せるものか。最悪両方駄目になる可能性も否めない。
アリスは眉間に手をやってどうしたものかと思考を巡らせた。
しばらく考えるように俯いて──

「──貸し一つよ、綱手姫」

息を吐いて言った言葉に綱手は心底安心した表情を浮かべた。里長がそんなでどうすると笑って背を向けるアリス。

「さて、そうと決まればすぐにでも里を出なければならないわね」
「本当にすまないな・・・。帰ったら多めに休暇をとってくれ」
「えぇ」

元々出立するところだったアリスは綱手にひらりと手を振ると阿吽の門に向って歩き出した。


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