巡り会いてV | ナノ

「サスケったら、わたくしの情報を軽々しく流してもらっては困るのだけれどね・・・。
 まぁいいわ。わたくしのチャクラには特に性質がないと言うのは知っている?」
「えっ!そうなの!?だったらどうやって、」
「チャクラを練ってからそれぞれの性質に変換しているの。だからチャクラの“質”を知っているだけでどんな性質でも使えるわ。ついでに言えば二つのチャクラ性質を使う方法より楽なのよね」
「じゃあじゃあ!俺もその方法覚えたらチャクラの性質全部使えんの!?」
「あぁ、それは無理。体質的な問題だから」

きっぱりはっきり笑顔で言い切ったアリスにナルトが項垂れる。それに苦笑いを零したカカシはそろそろ修行の内容に移ろうと言いかけたが、ここでまたしても気になることが出てきたのかナルトが「そういえば」と言葉を遮る。

「シカマルの影真似とかチョウジの倍化の術はどうなんの?それにさ、医療忍術とか幻術はどうなってんの?」
「・・・あのねナルト、チャクラの性質変化には先程説明したものとは別に“陰”と“陽”があってね「アリス、ストップ。サスケが相手じゃないんだから、そんな一度に詰め込んでも混乱するだけでしょ」あ、それもそうね・・・」
「“陰”と“陽”の性質変化についてはまた今度にしたらどうです?」

肩を竦めて言ったヤマトにアリスも少し眉を下げて頷いた。
此処で漸く本題に戻って修行の時間を短縮する方法の説明に入ることになり、カカシはワクワクウキウキなナルト相手に人差し指を立てる。

「──多重影分身だ」
「へ?何が?」
「だから、修業期間を短縮する方法だよ」
「・・・全然わかんないってばよ」

はぁ、と二つの溜め息が重なった。言わずもがな、アリスとカカシである。そして今度は“影分身講座”が始まった。

「──で、この術には術者に及ぼすある特別な効果がある。お前もいつも使ってるから気付いてるとは思うが・・・影分身の分身体が経験したことは術が解けて術者であるオリジナル一人に戻った時、その術者の経験として蓄積される」
「・・・簡単にって言ったじゃん」
「・・・この様子では気付いていない上に説明の理解もしていないわね」

疑問を飛ばしまくるナルトにアリスが呆れたように息を吐く。ならばとカカシはナルトに影分身を一体作り出すよう言って自分も印を組んだ。

「影分身の組は向こうの林の中に隠れる。影分身のナルトはついて来い」

分身体のカカシに連れて行かれたナルトを見送る本体二人とアリス、そして滝の上から降りてきたヤマト。
何が起きるのか首を捻っていたナルトは、暫くして顔を明るくした。

「奴等は何をしていた?」
「へへっ・・・一楽ラーメン、カカシ先生の奢りだってばよ!ジャンケンに勝ったからね!」
「勝手に約束しやがって・・・。これで分かっただろ?」
「今まで何となく影分身してたから全然気が付かなかったってばよ」
「逆にあれだけ沢山使っていてよく気付かなかったと思うわ。本来この術は危険な場所への偵察や敵アジトに潜入して情報収集に使う術でもあるの。ただし写輪眼相手だとオリジナルと分身体を見分けられるから、そこだけ注意ね」
「へぇー・・・じゃあサスケには効かないってわけか。でもそれが分かったからって、修業期間の短縮とどう関係があるんだってばよ」

再び疑問を口にしたナルトをカカシが「これから説明するから」とあしらう。そして喜ぶ姿を尻目に、自来也はよく螺旋丸なんて術を教え込めたものだとアリスとヤマトに小さく零した。

「早く!早く!」
「はいはい。つまり影分身を使って同じ修行を二人で行えば、経験値は単純に二倍ってことになるだろう?」
「うんうん」
「言い換えると二人でやれば一人で修行する時に掛かる時間を半分に短縮できるって事でもある。それが三人なら三分の一、千人なら千分の一だ。
 つまり一人で二日かかる修行は二人なら一日で出来てしまうし、一人で二十年かかる修行でも千人なら約一週間でいい」

至極お手軽な修行方法にナルトが歓声を上げる。一方のカカシは漸く分かってくれたかと胸を撫で下ろした。

「これから習得する性質変化の修業は常に多重影分身を使って行う」
「オッス!
 へへっ、カカシ先生が強い理由分かったってばよ!このやり方でいつも修行してたんだな!」
「いや、俺は一度もこんなやり方で修行したことはない」

思いもよらぬ回答を得て、カカシも影分身は出来るはずなのに何故だとナルトは疑問を口にする。
確かに出来ないことはない。が、カカシはナルト程チャクラを多く持っていないのだ。作り出す分身体の数は勿論の事、持続時間だって短い。
チャクラを均等に分散してしまう術なだけあってチャクラの少ないカカシには不向きな術であるという事だ。

「そうなのか・・・。あ、じゃあアリスはもしかして!」
「うふふ、その通りよ。ナルトに影分身を教わってからは割とこのやり方で修行していたわ」
「あら、アリスに先こされてた?にしては全然筋力の方が成長してない気が・・・あ、ごめん痛い痛い地味に痛い」

笑った顔を崩さぬままカカシの腕をむんずと抓るアリス。余程の事がない限り怒鳴ったり手が上げるということがない所に育ちの良さを感じるが、やはり気にしていることを言われると気分は良くないらしい。

「まぁ兎にも角にもナルトのチャクラ量はカカシ先生の、そうね・・・四倍程はあるかしら。因みに九尾のチャクラを抑えなければ百倍はあるわね」
「だからこれは君やアリス様にしか出来ない修行方法なんだよ。・・・だけど多くのチャクラを必要とするため、九尾のチャクラを呼び起こしてしまう可能性がある。そこで僕が呼ばれたんだ。九尾のチャクラをコントロールするためにね」

前回の任務の時にサクラを傷付けてしまったことを思い出して、ナルトはもうあんな思いはしまいと真剣な表情で頷く。
それを確認したカカシは一枚の木の葉を取り出した。葉を掌に収めてチャクラだけで切る修行だ。
一本の木に茂っている葉の分だけ影分身をしろと言われて驚いたナルトだがすぐにやる気満々の表情になって印を組む。
見渡す限りナルトが広がる演習場にて、過酷な修行が始まった。


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