巡り会いてV | ナノ

それから日は少し経って、ナルトは何も知らないままヤマト達と木ノ葉を発った。
そして今日も今日とて戦争の準備に奔走していたところでシカマルに会ったアリスは顔を明るくさせる。
シカマルの方も珍しいといった表情で軽い挨拶を交わすと自然と隣に並んで歩きだした。

「・・・戦争なんて大変なことになったわね。色々と忙しいでしょう」
「あぁ、怠いだの面倒だの言ってる暇もねぇよ。っつーかお前こそ大丈夫か?どうせ睡眠も食事も御座なりになってんだろ」
「そんなこと──」
「あるだろ。珍しく化粧してると思ったら隈隠しか?」

頬の辺りに軽く指を滑らせて言ったシカマルにアリスが気まずそうに顔を逸らす。
上手く隠したつもりだったがそんなに分かりやすかっただろうか。今後のためにと問うてみれば、分かりやすいわけではないとの答えが返ってきて少し安心する。

「ったく、こんな化粧してまで頑張ってんじゃねェよ。倒れたらどうすんだ」
「そんな迷惑かけるような失敗しないわよ。大事な時期なんだから」
「・・・で、それどこで覚えたんだ。お前化粧なんざ普段しなかっただろ」
「前に紅先生に教えてもらったの」

少し疲れていたのが顔に出ていたらしく、しかしやらなければならない仕事があった。
そんな時に紅に呼ばれて軽い化粧を施してもらったのだ。薄い隈は消えて血色も良く見えるそれに感動したのは良い思い出だ。
で、これは使えると思い頼み込んで教えてもらったという事である。

それを聞いたシカマルは呆れたように肩を竦めて溜め息を吐いた。
しかし何かを言うでもなく次の話に移るようで「そういえば」と話を切り出す。

「お前、後方支援に回って守護結晶の術すんだろ。良い方法思いついたか?」
「それがまだで・・・もしかしてシカマル、良い方法が思いついたの?」
「まぁ親父とも話し合ってだけどな。ちと面倒だが連合軍用の新しい額宛を作ってそれに術を掛ければいい。直接一人一人に掛けるより手間がかからねェしずっと身に着けておくものだから確実だ」

簡単に説明をしたシカマルだがそれはいい考えだとアリスは顔を明るくさせた。確かにそれなら全員に配られるのだから掛け忘れるというリスクは減る。
連合軍の一員という意識を強くさせる効果もあって一石二鳥だ。
すぐに話を通して進めていかなければならない。

「・・・本当に、これからもっと忙しくなる・・・。事情を知らされている忍がピリピリしているし感付き始めている者もいるでしょうね」
「あぁ、チョウジも気付いてた。他の同期の奴等も上忍の親を持つ奴が多いし、里の奴等も薄々分かってきているだろうな。
 ──んでよ、アリス。サスケの事はどうすんだ」

不意に出された話題。久しぶりにその名を聞いたアリスは少し目を細めた。
サスケには今抹殺許可が下りている。ナルトの話によるとアリスはサスケを殺そうとしていたらしいが自分が止めてその場は収まったと。
本当かと聞けばアリスは一つ頷いた。

「ほんっと、ブレねェよな」
「ナルトに凄く怒られたわ。今まで一緒にいたのにそんな簡単に切り捨てるなって」
「そりゃアイツがサスケを見捨てるわけねぇだろ。地獄の底だろうと追いかけてって連れ戻すだろうぜ」

仲間を大切にするやつだからなと何処か遠くを見るシカマル。そして大きなため息を吐くと今一度アリスに目を戻した。
アリスにもそういう気があるのだ。里の人間に限定されるが。きっちりと言っておかなければ本人も気づかないまま疲労が溜まってある日急に倒れかねない。
しかもサスケがいないことでそれを強引にでも止める者が不在なのだ。イズモとコテツもいることにはいるが部下という立場もあってどうしても休みを強制することが出来ない。
普段ならともかく戦争が迫って気を張っているアリスなら尚更だろう。

「お前も、本当に休めよ。口には出さねぇが心配してるやつが沢山いる。・・・分かってんだろ」

呆れたように言うシカマルにアリスは「んー」だか「うん」だか分からない生返事を返す。
全く信用できない返事に溜め息をついた。普段は答えにくい質問なども卒なく流したりするアリスだがこういった事はどうしても躱せないらしい。良い事なのか悪い事なのか。
どちらにしても取り敢えず分かりやすくはある。

「オレに手伝えることがあるなら何でも手伝うしよ。分担すりゃ少しは休む時間がとれるはずだ」
「あら珍しい。シカマルが自ら面倒事を申し出るなんて」
「別に・・・面倒じゃねェよ。お前がここまで頑張ってんのに呑気にしてられるか」

照れ隠しか目を逸らして頭を掻くシカマルにアリスは本当に珍しいと言いたげな表情で彼を見つめて、そして嬉しそうに小さく笑った。
それを見てシカマルも小さく口元を緩める。

「ありがとう、シカマル。何かあったらその時はお願いするわ。
 ──それじゃわたくしはこちらだから・・・あ、良い案ありがとう。話は通しておくわ」
「あぁ、分かった。じゃあな」

軽く手を上げて別れの言葉を交わすと曲がり角のところで別れる二人。
その後アリスはすぐに火影邸へ行って話を通し、他里にも鳥を飛ばした。本格的に話がまとまることを見越してチャクラを溜めておかなければならない。
これは本当にきちんと休息を取らなければ倒れるかもしれないと、アリスは一人肩を竦めたのだった。


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