巡り会いてV | ナノ

「先程も言った通りわたくしは先見には長けていないから・・・“これしかしない”と言うより“これしか出来ない”と言った方が正しいかしら。専門としている方はいくつかの占いを組み合わせて、より正確な未来を見るのだけれどね」

一族の占い師を思い浮かべて肩を竦めるアリス。
それから「さて」と改めてカードに目を戻して結果を告げるため初めの束をナルトの前に翳した。

楽園には船で移動する。途中さまざまな事件が起こるが無事辿り着けるから心配なし。あ、イカとタコの違いは足の数以前に見た目から違うのだから間違えないように。そして件のタコは──

そこまで喋ったアリスは何かに気付いたようで、自分も見えるようにナルトに向けていたカードを改めて一度しっかり見直して納得したように小さく笑った。

「な、なんだってばよ!タコは!?オレに協力してくれるタコってなんなんだ!?」
「まぁまぁ、焦らないで。楽園に着いたらビーという男と会うといいわ。きっとタコを探すより早いから」

それを聞いて意味が分からないといった表情になるナルトにアリスは成り行きでタコとやらにも会う事になるから大丈夫だと告げる。
タコで牛でバケモノで男が一緒で雲隠れにある楽園にいると出たのだから、そのタコ=八尾だ。そりゃ本体探すよりビーを探した方が早いに決まっている。ナルトがそこまで読めるわけがないが。

「一悶着あるようだけれどちゃんと協力してくれるから安心して。あぁそれと、赤い髪の女性と会うわ。重要人物の用だけれど・・・あら、まぁ、その方──いえ、何でもないわ。
 その後九尾と一応決着が着くみたい。そしたら──、」

そこまで告げたアリスの表情がカードの束を見つめたまま顰められた。ナルトに向けていたカードを再び自分が良く見えるように向けて、険しい表情で他のカードの束も手に取って目を通す。
鮫と男がいて、蛇と男と爆弾魔がいて、誰かが囚われている。さらには狐とタコが外に脱出──なんだこれ。
何となくこの先の展開が読めてしまって、アリスはナルトがいることも忘れて頭を抱えた。
一方のナルトはいきなり奇行に走ったアリスに何事だと焦り出す。

「いえ、大丈夫・・・大丈夫ではないけれど、大丈夫だから・・・」
「いやどっちってばよ!?
 えっと、何があったか聞いて良いか・・・?」
「ダメ」
「えっ」

一言で一蹴されてナルトがどうしたら良いんだといった表情で固まる。が、アリスはそれをスルーしてカードの束を崩さないように別空間に放り込んで立ち上がった。
どうしたんだと訝しがるナルトの腕を引くと取り敢えず忍具の調達をすると告げて一緒に歩き出す。
着いたのはアリス御用達のお店だった。

「おや、アリス様、いらっしゃいませ。ナルトが一緒とは珍しいですね」
「そうね。──今日はナルトの忍具の調達に来たの。彼は忍具よりも自分の拳で戦うタイプだけれど手に馴染む良いものをそろえておこうと思って・・・こちらに回せる分は残ってる?」

戦争が起こるとあってこの類の店は大忙しのはずだ。回せる分も何もないだろうが、雲に隠されたあとはそのまま戦場に出るナルトなのだからここで持たせられるものは持たせておかなければ。
余程険しい顔だか難しい顔だかをしていたのか店主は少し考えた後に「どうぞお好きなものを」と頭を下げる。
アリスは礼を言うと店の中のものを吟味し始めた。そして取り敢えず片っ端からナルトに持たせたり試させたりしていく。
意味が分からないまま付き合わされていたナルトだが意見を言ったところでほしい答えは返ってこなくて、結局数十分後にはいつも使っている物より数段良い忍具が詰まっている袋が二つ、両手にぶら下がっていた。

「なぁ、こんなに買ってどうすんだってばよ」
「いいから素直に受け取っておきなさいな。収納用の巻物も入っているから今度の任務には全部持っていくのよ。それからわたくし、急用が出来たからもう行くわね」
「えっ、占いの結果の続きは!?」
「あれでお仕舞。それでは良い旅を」

にっこり笑って言ったアリスはヒラリと手を振ると煙を巻いて消える。取り残されたナルトはしばらくそこで呆然と突っ立っていたらしい。


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